あらゆる者よ、彼の竜を討て
これは古典的な竜退治の物語だ。
人々が勇気と知恵を合わせ、竜を討つ。
この物語で倒されるべき敵はただ一つ、その竜一匹に過ぎない。
それ以外のあらゆる登場人物は、全てが味方だ。
その竜がいつからいて、どこから来たのか、誰も知らない。
ただ数年に一度その世界を散々に荒らし、再び火の山に籠もる。
あらゆる者よ、彼の竜を討て。彼の竜を討ち果たしたものを、我が王権を継ぐ正当な者とする。
若きハルテが西の王国の玉座についた時、最初に出した布告である。
そして、竜退治が始まった。
結論から言うと、人々が竜を打ち倒すまでに1200年を要した。
竜に挑み、破れ、時々は諦め、また思い出したように再び立ち上がる。
その間に三度の産業革命と二度の世界大戦を挟み、西の王国もその他の王国もそのどこかで勝手に滅んだ。
それでもなお、その布告だけは生き続けた。
これは果てしない敗北と、その果ての勝利の物語だ。
第一章 初めの100年
(続く)
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