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パラノイア・ファミリー

「誰も信用できない。父さんは人殺しだ。父さんの書斎に隠された誰かの死体を見つけてしまった。母さんはずっと前からおかしくなっていて、自分が誰かに監視されていると思いこんでいる。姉さんは存在しない。僕の妄想だ」

「誰も信用できない。息子は我々の実の息子じゃない。やつは息子になりすまして、この家と財産を乗っ取ろうとしている、冗談じゃない。妻は異常者だ。彼女が関心を持つのは共産主義と陰謀論だけだ。娘は存在しない。俺の妄想だ」

「誰も信用できない。息子は奴らの手先だ。家族を裏切り、CIAと繋がって私をずっと監視している。カメラが今も私を見ている。夫は悪魔に取り憑かれている。書斎にある死体が何よりの証拠だ。私が助けないと。娘は存在しない。私の妄想だ」

「私は存在している。私は存在している。私は存在している」

「「「「この家でまともなのは、自分だけだ」」」」

(つづく)

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