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柳生十兵衛がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!

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【完結しました。文庫一冊サイズで綺麗に大団円!実況タグも絶賛の嵐!】柳生一族が支配する柳生バースの暗黒現代日本を舞台に、 死都・町田を舞台に柳生十兵衛と町田に住む変人軍団が壮絶な… もっと読む
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柳生十兵衛がやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!オーディオコメンタリー【DVD特典】

はじめに先日、無事大好評(ほんとに大好評)の元に『柳生十兵衛がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!』が完結しました。 手慰みみたいな短編はともかく、そこそこの分量の小説をマトモに書くのは人生初めてでしたが、結果的にめちゃくちゃ面白くなってしまいました!ガハハ!おれはすごい! https://kakuyomu.jp/works/1177354054902464145 マジメな話、品質や完成度はともかく自分に誇れる作品にはなりました。 先読みしたかかとなでなでさんという方が本作

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第一話 柳生十兵衛、町田に来襲【柳生十兵衛がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!】

柳生暦37564年、死都町田は大いに色めき立った。 押しも押されぬ柳生界のスーパースター、柳生十兵衛がこの街に表敬訪問に訪れるという。 十兵衛の首を獲れば金も狂気も思いのままぞ。十兵衛、ブッ殺るべし。柳生、ブッチ斬るべし。 かくして東洋一の大魔窟、町田に蠢く海千山千魑魅魍魎有象無象の怪人物どもは、一目散に打倒十兵衛に突き進むこととなった。 口裂け女markⅡがいた。 内臓館の女主人 マダム・ストラテジーヴァリウスが蘇る。 柳生一族に復讐を誓う生き生首、千利休改

ウォーモンガーたみ子VSドクトル・デスマッド 【柳生十兵衛がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!】

柳生十兵衛襲来の半年前 北町田 デスマッド要塞タワー 要塞タワーの各所から突き出たパラボラレーザー砲から、大量のレーザーが地面に向けて放たれる。 目標はタワーに向かう崩壊アスファルト道路をローラーダッシュで駆ける、一人の少女だ。 「んニャロ…!」 少女は自身の脚部にシナプス直結された踵ローラーで急激な加減速ドリフトを繰り返し、数十の屈折レーザーの隙間を縫い、それらを避けきる。 「ンン~~~!さすがはウォーモンガーたみ子さん、凄いですねェ、怖いですねェ!それでこそ私

内臓館とマダム・ストラテジーヴァリウスに関する報告書 【柳生十兵衛がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!】

(訳注:この文書は、柳生一族の諜報を司る裏柳生のエージェント、柳生”レッツドー一匹”烈堂により柳生宗矩宛に届けられた報告書の抜粋である。原文は日本語、漢文、英語、蘭語、ポルトガル語、アラビア語、未知の言語が混在しているため、平易な日本語に統一して記載している) ◆ 分類番号:あやかし 三五二 等級:甲類二種 収容分類:未収容 説明: あやかし 三五二は町田に存在する”喫茶 内臓館”と呼ばれる建造物群と、その中に存在するマダム・ストラテジーヴァリウスと呼ばれる人型実

第二話 百手のマサとウォーモンガーたみ子、内臓館を訪れる 【柳生十兵衛がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!】

追い剥ぎホストの残骸から剥ぎ取ったスーツを身に付ける。 色はホストらしくド派手な紫。銃弾により穴だらけで、裾はところどころ焼け焦げている。 「としても、さっきのジャージよかずっといいぜ」 ウォーモンガーたみ子も下半身のキャタピラを変形させて歩行モードに装いを変える。 どちらともなく、雑談が始まる。 「実は僕、内臓館出禁扱いなんスよ」 「出禁!?何やらかしたのよアータ!」 「行ってみてホントに入店拒否食らうかは微妙なとこスけどね」 無精ヒゲを剃りながらマサが答え

SIDE:柳生十兵衛 【柳生十兵衛がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!】

「オイラ、柳生十兵衛!バトルが大好きな小学五年生!町田の皆、オイラとバトルしようぜ!!」 町田に立ち入るなりそう絶叫した柳生十兵衛は、その剣の二振りで町田の全住民の八割強を即死させた。 二発目の斬撃を何者かに受け止められると、十兵衛は途端にその場への興味を失い、おもむろにその場に座り込んで弁当を食べ始めた。 「オッホ、オイラの大好きなオムライスじゃねーか、母ちゃん、わかってる~~!」 彼の剣を辛うじて止めた男は剣が折れたのか一目散に走り去っていったが、十兵衛は食べる事に夢

第三話 百手のマサ対悪夢堂轟轟丸【柳生十兵衛がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!】

(これまでのあらすじ:内臓館を追い出された百手のマサとウォーモンガーたみ子は区画整理蟲の活動に巻き込まれて町田の最果てに飛ばされる。そこは凶悪な無差別攻撃暴走族、霊義怨のシマだった) 轟音が辺りに響く。 それが百台、千台のものであれば、バイクのエンジン音との判別もつくだろう。だが、そうした単位の数ではない。それはもはや単なる荒ぶる大気の振動であり、音の津波となり周囲を埋め尽くした。 二人、百手のマサとウォーモンガーたみ子は互いの耳に口を近づけ、必死に叫びながらコミュニケ

何が利休に起こったか 【柳生十兵衛がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!】

「グワアアアアアアアアアアアア!!!!」 利休は目を覚ました。  体が動かない。息ができない。混乱と苦痛の中で数分、あるいは数時間、あるいは数日が過ぎ、利休はようやく己を取り戻した。 体が動かないのは当然だった。己の体は無かったからだ。 息が苦しいのは当然だった。己の首は、水槽に浮かんでいたからだ。 首は大小様々な管に繋がれていた。 状況はわかったが、事情は思い出せなかった。 まず浮かんだ疑問は、『誰が』、次に『なぜ』だった。 己を、殺しもせずにわざわざこのような目に

第四話 中盤で主人公が挫折して仲間から見捨てられるやつ 【柳生十兵衛がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!】

(これまでのあらすじ:無差別攻撃暴走族、霊義怨の攻撃!百手のマサとウォーモンガーたみ子は圧倒的な数を前に苦戦を強いられるが、たみ子の援護により、マサは霊義怨の頭、悪夢堂轟轟丸に肉薄する。剣戟の末、マサの刀が轟轟丸に迫る) 「…ッ!」 轟轟丸の顔の直前で、マサの刀は止まっていた。 「こっちの勝ちッス…!大人しく兵を引いてください!」 マサは轟轟丸に告げた。 轟轟丸は何の反応も見せない。その顔に恐れはない。 その眼が、さっきまでとは打って変わって感情のないその眼が、マサをじ

柳生・ファクト・ファイル 【柳生十兵衛がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!】

・『「やっぱワシ、超強いから陰謀など無用」宗矩はそう悟るや否や、即座に家康の首を刎ねた』(柳生王朝正史 建国の章”ザ・ライズ・オブ・柳生”より抜粋) ・我々の知る世界と柳生バースの分岐点は柳生宗矩が徳川家康を殺害した瞬間である。それ以外のあらゆる異常性は柳生バタフライエフェクトによって自然発生したに過ぎない。柳生の持つ因果力とはそれほど強力なのである。 ・家康を殺害するように宗矩を唆した人物が何者かは未だ定かではない。あるいは… ・十兵衛はキングコブラに噛まれたことがあ

第五話 黒冥党の男たち【柳生十兵衛がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!】

(これまでのあらすじ:己の惰弱さによりウォーモンガーたみ子に愛想を尽かされた百手のマサは、二兆億利休の茶室に流れつく。その戦闘問答の果て、マサは己の本心と向き合う決意を固め、物語は過去へと遡る) 20年前。町田ではないどこか。 瓦礫、死体、瓦礫、死体、死体、死体、死体、瓦礫、死体。 「おう、おう、おう、おう。これはまあ、想像より遥かに酷いザマよのう、全滅かよ」 瓦礫と死体を避けながら男たちが闊歩する。 「柳生の連中ときたら、相も変わらず清々しいまでの殺しぶりだのう」

柳生ベイダーに言葉はいらない【柳生十兵衛がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!】

多摩市。隠れ里。夕方。 子供たちが駆け回って遊んでいる。それは一見穏やかな光景だが、良く見るとある子供には腕が無く、ある子供には足が無く、ある子供には片目が無い。五体満足の方が稀だ。 「みんな、ご飯の時間よ」 穏やかな声が子供たちの笑い声を遮る。 「カナ姉ー今日のご飯何ー」 「わたしニンジンいらないー」 「太郎丸がねーカナ姉の作ってくれたご飯が一番おいしいってー」 「い、言ってねえし!」 カナと呼ばれた女は年の頃二十三、四。野暮ったさの残る顔立ちであるが、額の

第六話 デンデンデンデン ドンドン【柳生十兵衛がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!】

(これまでのあらすじ:記憶の中で己を包んだ情愛と向き合ったマサは、自身の本当の目的が"十兵衛の首を獲ること"ではなく、"町田を守ること"だと気づく。そして、黒冥党の男たちの物語は終わる) 内臓館。 応接室、円卓を囲んで四人の男女が並んでいた。 一人は、怒れるサイキック・ゴルゴン  二兆億利休「早く話を付けようか、儂の大頭を無理やり縮めておるでな、頭痛がたまらぬ」 一人は、柳生一族最悪の忌子、黒仮面の魔剣士  柳生ベイダー「コーホー」 一人は、美貌の武器商人にして

疾風の轟轟丸【柳生十兵衛がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!】

今日も母の甲高い怒号が飛んだ。 父は何も言い返さなかったが、20分ほど言われるままにすると、突然母を張り倒して一人で布団に入った。 母は泣きながら自分に縋り付いてきた。 「ゆうちゃんはあんな風になっちゃだめよ…ゆうちゃんは由緒正しい武家の子なんだから…こんな町にいつまでもいちゃ駄目なんだから…」 それが人生最初の記憶。 ◆ 父親の印象は曖昧だ。優しかった思い出は、ある。 しかし次第に、父が自分を見る目が変わってきたことに気づいた。 母を見る時の冷たい目と同じ目