見出し画像

"競技人生の節目の表明"は、本人の口から語る重みを尊重したい

羽生結弦選手が、明日(今日7月19日)夕方、何やら「決意表明」すると昨夕の一報。
「決意」表明としているところが、羽生選手らしい。

引退なのか、現役続行なのか…?どちらの「決意」なのかわからない。
たいていの選手は「引退会見」などと、どんな内容か頭出しすることが多いのに、「決意」「表明」という言葉をわざわざ遣っているところに、羽生選手らしさというか、強い意図、意思も感じる。

私は、長らくフィギュアスケートの現場で取材し、羽生選手を間近で見てきた。
まだ彼が16歳の頃、国際大会にシニアデビュー当時は知名度も高くなかったけれど、怖いもの知らずのような、鬼気迫る勢いで頭角を現してきた存在感が鮮烈だった。
既に、タダものではない…そんな印象を持った。

目が離せないアスリートの一人だっただけに、「決意表明」にはいやが応でも注目してしまう。
だからこそ、思うことを少し。

フライイング報道は、何が目的?

今回、羽生選手自身の「表明」前に、先んじて一部のメディアが"引退"を報じた。引退後に考えている具体的な計画まで。
もっともらしく報道しているけれど、今の時点で、真偽はわからない。

本人の口から直接語られるまでの数時間が、なぜ待てない?
なぜこんな風に出てしまうのだろう…? 
早く知りたいのも人の心だし、多くの人の関心事を、いち早くすっぱ抜きたい、という報道系の意気込みもあるのかもしれないけれど…。

実は、私が書籍制作していた高橋大輔選手も、2014年に一度現役引退するとき、一部のメディアが会見の数時間前に、先に報じたことがあった。
そのことで、高橋選手自身の会見の心づもりが全く崩れてしまった。
もちろん私は立場上、事前に「引退」を知っていたけれど、守秘義務は当たり前。

メディアにも様々な種類がある。
速報性が命の報道系と、深掘りや差別化が命の書籍や雑誌。同じ「取材」と言っても、瞬発力か持久力か、使う神経や能力が異なる。(私は後者だった)
速報性で競争する報道系では、誰よりも先に報じることが大事なのかもしれないけれど、このトピックにそれが優先されるのかは疑問。

初めに本人の口から直接語る重み

もちろん中には、心の準備をしてから本人の言葉を聞きたい、と思うファンもいるだろうから、フライングも意味がある、と反論もあるかもしれない。

ただ、「第一声」というのはインパクトがある。
本人ではない媒体からの伝聞的な言葉は、本人から出る「肉声」とは違う。
関心のある人やファンであれば、尚のこと、本人の肉声に勝るものはない。
たとえ同じ事実であっても、「ニュアンス」や「思い」の乗り方や伝わり方が違う。

それをよく知っている羽生選手だからこそ、今回、
ありていの「○○会見」ではなく、あえて「決意表明」としているような気がする。この言葉だけで、本人の「熱」が込められている。

そんな選手本人の、気持ちや姿勢を想像して、メディアはもう少し尊重できないものだろうか。

それに「決意」には、何もみんなが想像するような「引退/現役続行」の二択とは限らない。
目指す目標なのか、起こす行動なのか、様々な可能性が秘められているのに、あたかも二択の内の、こっち、という報道は、
本人のニュアンスも気持ちも無視して、「第一声」を奪うことになって、とても私は残念。

羽生選手に限らず、こんな風に、先に煽られ先入観だらけの場を作られては気の毒だと私はいつも思う。
特に、アスリートにとって、大事な人生の節目においては、じっくり落ち着いて、その思いや背景を語ってもらう場をつくってほしい。

きっと羽生選手もよほど考え抜いて、「何か」を「決意」したに違いない。
内容は何であれ、その思いをきちんと汲んだ伝え方をメディアに期待したい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?