🌺セミナー参加レポ「すべてのニュービジネスに効くリーガルの心得」

オンラインでNewsPicksさんのセミナーに参加しました！

イベント名：すべてのニュービジネスに効くリーガルの心得
日程 ：2021年9月16日（木）
時間 ：18:30~21:20
主催：NewsPicks Brand Design
協賛：株式会社 LegalForce
URL：https://newspicks.com/news/6111762/body?sentlog

Session1　イノベーションには「法」の智慧がいる　リーガルマインドを学ぶためのABC／経営共創基盤　塩野誠さん

◇ビジネスパーソンの仕事は、全て法律問題！
…でも、どこまで一般的なビジネスパーソンは知っていればいいの？
→法的リスクに敏感であることはあなたを守ってくれる。組織はあなたを守ってくれない。
→知識を身に着けるより、センスを身に着けるかんじ。
たとえば、「それ良いアイデアだけど、法的リスクはないの？」という質問に答えられる？

◇これを覚えておくだけで結構センスがよくなれる！

法的リスク＝①法令違反そのものの影響の大きさ×②法令違反の発生確率×③ダメージコントロールの成功度

◇法令違反の種類
■民事法令
・第三者との契約に違反すること
・民事法令により保護された利益を侵害すること
・損害賠償→金銭的な影響
・差止請求や契約解除→事業の停止
■刑事法令
・いわゆる「捕まりますよ」
・逮捕だけでもレピュテーションリスク（風評被害など）
■行政法令
・独占禁止法や金融商品取引法への違反など
・違反した場合は課徴金納付命令などが下る
・一般的に刑事手続きを連想させるため、マスコミ報道でレピュテーションリスクがある

◇法令違反の発生確率
「～ならば」要件
「～である」効果
を覚えておくと良い（～ならば、～を負う、など）

◇法的リスクの考え方
やろうとしていることの要件を特定しよう。
まず、法令と先例を確認すること。
1．関係法令の確認と条文解釈
2．これまでの行政処分
3．判決内容や判決理由
4．行政機関への事前照会

◇最近の潮流
今は新事業を政府も推進しているので、後押しする制度がある！

◇ビジネスにおける「標準」と「規制」という考え方
「みんなやってるよね」という状況になると、一般的になって規制することができず、ルールとして成り立つようになる（ウーバーイーツのように）。新事業が早く生まれてくるので、法律が追いつかない（＝リーガルラグ）
→欧米ではやっているのであればそういった先例をもとに規制当局とコミュニケーションする（＝ロビイング）

◇デュープロセスについて
ビジネスにおいてはデュープロセス（適正手続き）を経ていたかが焦点となる
例）社内規定をもとにしているか？社会規定は法的な何かに基づいているか？

◇契約とは何か？
・契約は、当事者の意思表示の合致により成立する
・契約の効果・効力：契約が成立すると、債権と債務が発生する。また法的拘束力が生じる
・契約はリスク分担を記したもの
・契約を破った・不履行になった際にどうなるかが一番契約の重要性がわかる。履行した場合に比べてリスクが大きければリスク分担が合っていないということになる

◇弁護士について
・弁護士に相談したい時は「誰が何をどうするか？どんな成果を得たいか」を述べるのが大事。
・弁護士の専門と質はいろいろ。お医者さんみたいなイメージ。弁護士に任せたからOK！とはいかないんだなあ、、

◇訴訟について
■メリット
・明確な結論が得られる
・強制的に話し合いができる（意外と大事）
・原告が勝訴すれば強制的に請求内容を実現できる
■デメリット
・相手から反訴や別訴を提起される可能性がある
・時間と費用がかかる
・訴訟対応が業務を圧迫する
・世間の注目を集め、レピュテーションリスクとなる
→それが嫌だから話し合いで解決、和解していくこともある

◇まとめ
自分でなんとなくでもリスクや契約書の読み方がわかるようになると、「法律専門家に相談できるか」といった大事な分岐点で立ち止まれるようになる！

Session2　「法」を知ることは、武器になる　アントレプレナーの実装視点を知ろう／シティライツ法律事務所水野祐×株式会社Luup代表取締役岡井大輝

水野：「契約書が読める」「ルールメイキング思考」ビジネスパーソンは活躍している。良い事業家は契約を使うのがうまい。契約は「有利な契約書を押し付ける」「契約書は変更できない」といったものとは違う。契約ひとつとっても、「こう考えられないか？」「こうしていきたい」と一歩俯瞰してとらえ、契約を活用できる人が活躍している。

◇法律は、「制約」か？「自由」か？
水野：制約的な側面もあるが、うまく使えばビジネスを促進する材料になる。これまでいわゆる「ディスラプト」は十分行われてきて、色々なルールが整備されてきたから、2020年代は今までと違う方法論が必要。

◇Luupって？どうやって実装してきたのか？
岡井：スマホを使って乗り捨てできる電動小型モビリティ。3年前はプロダクトがなく、私有地の中に電動キックボードを置き、日銭を稼いでいた。公道では走れないものだったので、外ではローンチできなかった。去年自転車が、今年キックボードがようやく公道を走れるようになった。

都市の形で適切なモビリティは変わる。ただ、モビリティによって都市の形が変わることも。日本は鉄道が発達していて、立地が重要な都市になっている。そう考えたとき、日本において正しいライドシェアの形はライドシェアではないのではないか？という仮説にたどり着いたが、その仮説は合っていたと思う。ヨーロッパよりLuupの方が数字が良い。日本人はアメリカに比べて、偉い人でも結構歩く、なぜなら歩いたほうが早かったりするから。なので、Luupは短距離のモビリティから入った。

◇規制について
水野：参入する前から規制はわかっていた上で、どう事業展開していこうと思っていたのか？

岡井：ソフトを扱う道路交通法と、ハードを扱う道路運送車両法が二大ルール。ヘルメットをつけて電動バイクとして扱ってもらえれば、そのまま参入することもできた。ただ、他国（たとえばイギリス）では新型コロナウイルスの影響で当初より早く法律が可決された事例があった。また、導入されている国でヒアリングを行った。経済産業省の特例制度を活用して、今年の4月から乗るときにテストを受けて全問正解した人だけが乗れるなどの特例制度の中で実証実験が行えるようになった。

◇新事業の立ち上げについて
水野：今までのインターネットやアプリケーションを通じたサービスを考えると、経産省と国交省が所管している事業にあえて参入したのはなぜなのか？

岡井：Luupになる前に6回くらい事業立ち上げを試してきた。大きいインフラを作り、最終的にグローバルで活躍する事業にしたかった。ほかの人が作ったほうが良いものをスタートアップが作る必要はないと思っていた。今ある大企業と競い合うフィールドにあえて入りたくなかった。定義を拡張したプロダクト（アプリだけでなく、ループ本体も全部含めてプロダクト）がこれから必要になってくると思っている。

水野：規制とうまく付き合い、新しいルールを作ることでウーバーなどは市場を開拓してきた。そういった動機はあったか？

岡井：そういった理由もあった。これから大きい市場を作ろうと思うと、戦う先はGAFAのような巨大企業。今作って、町全体に貢献できるプロダクトになれれば、大きな外資がお金で叩いてきてもやられない。参入障壁になると思う。色々な人に「大変だよ」と言われたが…。

水野：その時点でルールに対する目線があったことも重要。マニアックだが、新事業特例制度の話が出たが、「グレーゾーン解消制度」「国家戦略特区」など色々あったと思うが、どういうプロセスで考えていたのか？

岡井：まず窓口に相談する。色々な特例制度がある。「グレーゾーン解消制度」は今やっていることがグレーか確認してもらう制度。ループは「完全に原付」といわれていたので該当しなかった。一度「サンドバック」をやり、私有地で30回実証実験も行っている。その後「新事業特例制度」を一度行い、今二度目を行っている。一個ずつクリアして広げていくイメージ。サンドボックスは実証実験のための制度なので、法令を変えるものではない。結局は、自分で勉強するより内閣官房に聞いちゃったほうが早い。サンドボックスで実証実験をすると、たくさんの人が見に来てくれる。国家戦略特区などは時間軸として厳しい。国会での審議がいるから、最速でもできるのが2年後。

◇事業の実現プロセスについて
水野：ディスラプト（Google）、根回し（日本の老舗企業）、双方ともちょっと違う。

岡井：省庁から嫌われるのはメリットがなかった。違法な車体が出てきた時に取り締まってくれて、自社が守られるなどがあった。まずは「これが将来電動キックボードになります」と説明。一緒に実証実験をやりながら、「こんな感じで良いね」と目で見てもらうのが一番良かった。実際に乗ると伝わる。そういう自分たちならではのプレゼンを地道に行い、一緒に実現していく道を作ってきた。

水野：「ルールを共創する」を形にしてきたということ。「ルールを緩和する」ことを目的にするスタートアップもいるが、ルールを緩和した先は荒地。こういう形が一つの理想。行政も今は新しいルールを求めているので、適切なタイミングで適切な人にもっていけば、うまく実現していくと思う。ただ、規制緩和の窓口にもっていくのは注意！管理する省庁ではなく、「新事業特例」などを扱う窓口にもっていこう。最初の持っていき先には注意しよう。また、「話がくる法務」もあっていいんじゃないか。

岡井：今後法務は重要になってくる。IT側から行政ポジションになる人、経産省からITにいく人も増えてきた。それは、そういう需要があったから、混ざりあってきたということ。「法律を良いほうに変えていく」需要は今後増えていく！

Luup、会社の近くにあるみたいなので乗ってみたいです。

Session3　新しいビジネスを始めるために知りたいリーガルリスク「Q&A」

◇事業を始める際に、なぜ法律的な観点でのリスクマネジメントが必要なのか？
塩野：法的にOKでも、ダメージコントロールができていないとうまくいかなくなってしまう。法的なチェックと、周囲のコンセンサスを築きながら両立することが大事。また、現在は法改正など新事業に行政側も積極的になってきている。ただし、なぜこれまでこの事業がなかったのかを知っておいたほうが良い。

◇規制や契約、法律とビジネスをどう捉えるか？
守屋：昔ケアプロという会社をやっていて、違法でもないが適法もなく、まさにグレーだった。6年間頑張って、自分たちが欲しかった法律を作ることができた。法律は商売に関係するとつくづく実感した。指先から血液一滴もらうと血糖値などが測れるような事業を行っていた。古い先生は「客とるな」、新しい先生は「どんどん客を送ってくれ」と人によって白黒が違う。

角田：グレーなときにどうするかは永遠のテーマ？

岡井：基本的には今の法律を変えずに、適法下でできるのが一番良い。いかに意味があることかを多くの人たちに知ってもらうことが大事。広報とロビイングは本質的には同じ。究極「一億人が良いねというものは白になる」が、一億人とは話せないので、みんなの代表である省庁の人などと話すことが大事になってくる。

角田：総合格闘技のよう。法律を知り、消費者とコミュニケーションをとり、、、面白さはある？

守屋：とても面白い。2年以内の法改正の実現めどが立ってきた。「この法律は日本に必要だ」という思いに突き動かされてやっているので面白い。

◇契約をチェックしていてよかった経験は？逆に法律の落とし穴は？
塩野：「DD（デューデリジェンス）での発見からの契約」。デューデリジェンス＝買収前の身体検査。投資前、M&A前にはリーガルデューデリジェンスを必ず行い、そこから見つかった課題を契約に入れ込んでいくのだが、それをわかっているビジネスパーソンは少ない。DDと契約は密接につながっているものなので、一気通貫して統括したほうが良い。

角田：自分たちがDDしたものは結構契約書に入れ込む。しかしビジネスリスクをしっかり入れ込めているかというと、、、

塩野：自分が見つけたリスクを最後までリスクヘッジするんだ！という意識を持つことが大事。

守屋：「日常、粗方」。日常使うすべてのものに法律がかかわっている。素人の人間が全部を意識することはできないが、「日常法律に囲まれている」ということを意識しておくのがリーガルマインドの第一歩なのでは。

岡井：「法律は変えないといけない」。創業期は穴を抜いていけるんじゃないかと思った。たとえば電動アシストキックボードと呼べばいいのでは？という意見もあったが、自転車とみなされなければいけないなど…。

◇法律の落とし穴にはまったことは？
塩野：割り切って考えることも必要。法で回避できないならば、事業でリスクヘッジするなど。「過失」を「重過失」にしとけば良かったな～ということはあった。そういう意味では交渉＝コミュニケーションは大事。

◇これまでの経験から得られた「教訓」は？
塩野：コミュニケーションが大事。コミュニケーションを避けてはいけない。トレンドにアンテナを張って、規制当局とコミュニケーションをとり続けることをさぼってしまうと実現できるものもできなくなってしまう。

守屋：リーガルマインドが大事。色々な商売をすると、触れる法も増えていく。法律に抵触する可能性があるのは社長だけでなく、一般社員も同じ。何かあったときにちゃんと気づける、確認できることが結構大事。そういったリーガルマインドが実はリスクヘッジなのでは。

岡井：世論・行政・ユーザーのバランが大事。ユーザーが求めるものを作るのが我々の仕事。だが、これからもっと大きいものを作るためには、行政とちゃんと向き合うためには、目の前の行政の担当者ではなく、その先。彼らを動かすルールは何か？と考えると、憲法と世論。世論との対話が広報、行政との対話がロビイング。各社員が理解できていると◎ちゃんと話していくと、行政の人もファンになってくれたり、応援してくれる人が増えたりする。中長期的に展開していく上で相談相手になってくれたりする。熱意をもって話して、ステークホルダーを巻き込んでいく。あとは担当者の上司の上司まで持っていけるか？といった視点も大事。

守屋：経産省が応援してくれるのは当たり前としても、厚労省など規制を作る側でも「どうにかしなきゃいけない」と思っている人はいる。ブレイクスルーするためには、思いを共有できる人と、まず最初の例を作る。自治体は横並び意識が強いので、どこかの自治体が認めたものは他でも認められやすくなる。

◇ビジネスパーソンがリーガルDDをやらなければならない場合、どうすればいい？
塩野：契約書はプログラミングっぽい。参照してずれていたらダメとか、ロジックがずれていたらダメとか。DDで見つかったリスクを契約書でヘッジする場合、「これをやられたらいくら損するか」を常識的に見ること。主要人物が辞めないようにするとか、知的財産の真性に言及してもらうとか。食わず嫌いせず、「プログラミングみたいにリスクヘッジできる」という意識でやってみると良い。

感想

①人生はあらゆる法律に囲まれてできている。全部を知ることはできなくても、「そこに法律がある」という意識（それがリーガルマインドになっていく）を持つことから。

②新事業を立ち上げる際、法律や契約はうまく使えば自分を守る武器になる。色々な人とコミュニケーションをとって、周りを巻き込みながら進めていこう。

この二つのことが全体を通して印象に残りました。正直「法」をあまりしっかり意識したことがなかったので、こういう視点や注意しておくべきベーシックな点を知っておくだけでも、リスクの兆候に気づけるなどだいぶ役立ちそうな気がしました。
今日はせっかく社長と3時間セミナーに参加したので、これからはこういったことにも気を配りながらゴリゴリ(?)事業を推進していきたいと思います！！

Nozomi