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初めてスクラムマスター業をしたときにだけ味わう苦悩

初めてスクラムマスター業をやったとき、何からしていいか本当に分からなかった。あれこれ試して失敗した時期があれば、チームメンバーを失敗で振り回すのが怖くて何も試せない時期もあった。

本や有識者の記事を読み漁って、今の状況にちゃんと照らし合わせながら取捨選択して施策を打ったりもした。だけれど手応えがいまひとつで「なんだ机上の空論か」と愚痴ることもあった。

例えばチームビルディング的なアクティビティをしてみたり、レトロスペクティブにてもやもやを言語化してみたりすると、その時は盛り上がってなんだかうまくいったような気持ちになる。だけど数週間経って見返すとチームの状況は変わってなくて、前進していない現実を思い知った。

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今になって思えば、あの頃の僕は目指す状態が思い描けていなかった。
チームに対して「どういうステップを踏みながらどんな状態に向かってほしいか」という具体的なビジョンが見えていなかった。

もちろんビジョンは絶対ではない。その通りに前進しないからダメなチームなんてことはないし、途中で思いも寄らない変化や寄り道があっていい。ビジョンはその都度軌道修正したらいい。その程度のもんだ。

それでも、その程度のものでも、スクラムマスターは現時点でのビジョンを頭の中に色濃く描いておかないと、施策もアドバイスもファシリテーションも巻き込みも上手くいかない。1つ1つは充実感があったり綺麗に進行できたりするかもしれないけれど、それらが噛み合わない。
「レトロスペクティブで会話が生まれないからアイスブレイクでこんなエクササイズをしてみよう」と施策を打ってみても、その瞬間少し盛り上がるだけで次のレトロスペクティブでは元の状態に戻ってしまっていたのは、チームが今どんなステップを踏んでいてこの先どうなっていくのかを思い描けていなかったからだ。

このビジョンというものは、おそらくスクラムマスター業の経験が多いほど解像度が高く、選択肢が多いのだと思う。だから人生で1度目のスクラムマスター業では経験不足ゆえにビジョンを描けず支離滅裂になりやすいし、2度目では参考にできる経験が1つしかないためにこれと決めた一本道から外れることを恐れて柔軟性を失いがちなのかもしれない。僕はそうだった。

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経験を重ねるうちに同じ歩み方をするチームはないと分かってきた。いくつものチームでスクラムマスターをするうちに、多少なりともそのチーム独自のビジョンを描けるようになってきた。
まだまだ引き出しは少ないけれど、臨機応変な対応がちょっとずつできるくらいにはビジョンは明確で、視界はクリアだ。

ちなみに、そうなるまでの間一番の助けになったのは、本でも記事でもなく、ベテランスクラムマスターの存在だった。
もちろん本で学べる教科書的な『型』や記事に載ってる『ケーススタディ』など参考になるものは多いのだけれど、目の前で起きている実例について「自分ならこうする」と議論しあえる先輩スクラムマスターがそばにいるということは、ビジョンを濃くするという点では何より役立った。

僕が今関わるプロダクトでは、次の世代のスクラムマスターを生み出すフェーズを迎えている。
もし身の回りのスクラムマスターの卵が、僕と同じように先輩スクラムマスターを必要としているのであれば、少しでも役に立てるように自分の頭の中を整理しておきたい。そんなことを思いながらこれを書いた。

ここまで読んでくれてどうもありがとう。 記事を読んでくれて、応援してくれるあなたのおかげで、これからも書き続けることができます😌