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スクラムマスターの壁 - 回復志向からの脱却

スクラムを始めたばかりのチームでのスクラムマスター業は"うまくいかない現状"との戦いだ。
それもそのはず。チーム内外問わず関わる人達のスクラムに対する理解度もモチベーションもまちまちだし、スクラムであろうがなかろうが従来のやり方からの変化には戸惑うのが当たり前なのだ。そういった精神状態のチームメンバーやステークホルダーと共に、プロダクト開発を進行しつつ(成果を継続的に出しつつ)、スクラムを確立させていくためのあらゆる支援をするのがスクラムマスターなのだ。うまくいかない状態をどうにかするのが仕事と言っても過言じゃない。

でも案外、それをやってのける人はけっこういるんだと思う。炎上案件やHotfixなどトラブル時に気持ちに火がついて全速力を出せるような、課題解決が得意な人は特にそうなのではないだろうか。
かくいう僕もクリフトンストレングス(ストレングスファインダー)では「回復志向」が上位にあり、問題山積みの時こそ燃えがちだ。

さて、ここからが本題なのだが、スクラムマスターはチームの成熟フェーズに合わせて「回復志向」から脱却する必要があると考えるようになった。今日はその経緯を書こうと思う。

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チームが成長し自律性が備わってくると、ちょっとした問題は自分たちで解決できるようになってくる。計画通りに仕事が進まなかったとしてもリプランニングして軌道修正できたりする。検査と適応の練度が高まってくるわけだ。

そんなチームを見ていると「もうこのチームは十分に優秀だ」「自分たちでは解決できないレベルの課題にぶち当たるまでは見守っておこう」とスクラムマスター業の手を休めたくなるときがある。課題解決ドリブンだった僕は、課題が見つからないうちは様子見モードになりがちだった。ここで言う『様子見モード』とは、現状維持の工夫すらしていない状態だ。

何の工夫もせずにいると現状を維持することすら難しく、状況は悪化していく。
具体的に言うと、まずチームがマンネリ化する。チームがどう前進していくかの道標を失い行き止まりにぶつかる。レトロスペクティブでの議論のネタがなくなったり、惰性的にイベントをこなすようになったり、本来の目的を忘れられたミーティングが形骸化したり。
そして次第に小さな歪みが溜まり大きな問題として顕在化する。『言ってもどうにもならないから飲み込んだ不満』や『言うほどではないけどちょっとモヤモヤしたこと』などが水面下で溜まったまま消化されず、顕在化した頃には手遅れだったりする。

検査と適応をうまくできるチームならそんなことにはならないのでは? と思っていた時期が僕にもあったが、上述のようなトラブルを未然に防ぐにはチームのことをものすごく深く考え続ける必要がある。プロダクト開発に勤しむチームメンバーにはその時間も余力もない。では誰がその役割を担うか。スクラムマスターだ。

スクラムマスターは、チームの次のステップを考え続ける必要があった。差し当たる大きな課題が見つからなくてもチームをブラッシュアップしていけるよう、常に一歩先の姿を見据えておかなければならなかった。
もちろん課題山積みの時期に比べれば成長速度は緩やかになるし、変化の内容も大胆なものから些細なものになっていく。物事はうまくなればなるほど、細かい差の積み重ねでしか上達しなくなる。
それを胸に留めた上で、チームの理想像をアップデートし続けて現状と比較し続ける必要があった。これが僕にとって回復志向からの脱却だった。もしくは『最上志向』とのいいとこ取り、なのかもしれない。

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今回は『資質』になぞらえて自分の考え方の変化を書き出してみたけれど、捉え方は何でもいい。今回の件から俺が得るべき教訓は、スクラムマスターはチームの成熟フェーズに応じた1歩先の未来を考え続ける必要がある、ということだ。
以上、貝木さんの言葉を借りたところで、今日はここまで。

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