見出し画像

キャプテン 長谷川智也のストーリー

今のアルファーズを体現しているのが長谷川智也の存在というハナシ。素人のアルファーズブースター目線ということを先に断っておきたい。

あくまで主観にはなるが、違う環境や立場の選手やコーチが互いをリスペクトしながら、どこよりも騒がしく仲間たちと楽しみ、どんな相手とも全力で戦うチーム、それが私の好きになったアルファーズだ。

アルファーズが脈々と受け継いで来たカルチャー。それは「Bリーマンがいるチーム」という表面的なものではない。


プロのバスケットボール選手

日本でバスケのプロ選手がほとんどいなかった時代に、バスケが好きで社会人になっても続けようと思ったら実業団に入るのは現実的な選択だったと思う。(もちろんそれでも誰でもなれるものではないが)
大塚商会アルファーズはそういう人たちのチームだったのだろうと想像している。

サラリーマン×バスケ選手(Bリーマン時代)

長谷川智也(トモヤ)は大学時代はプロになりたいと思っていたが、あまり声はかからなかったと本人は語っている。卒業後は働きながら社会人としてバスケを続ける道を選んだ。
NBDL(NBLの下部リーグ、今でいうB2か)所属の大塚商会に入社し営業部に配属、コピー機を売る仕事を2年経験した。当時は会社員として生きていくつもりだったという。
3年目に三河から声がかかり1年目は人事、営業職とかけもちでバスケットボールを続けた。当時の三河には比江島、金丸、ジェイアール、そして盟友となるバッツがいた。

営業マンからB1へ 長谷川智也(SR渋谷)の履歴書
https://www.twellv.co.jp/program/sports/bleague/article2-bleague/basket_info-022/

※サラリーマンからプロになる過程はダブドリVol4でも語られている。

三河に加入後は苦労したことも語っていたが着実に成長し三河、渋谷、大阪でプレイタイムを獲得をしていった。

アルファーズのカルチャー

Bリーグに加入し大塚商会アルファーズから越谷アルファーズになっても、アルファーズはサラリーマンとプロの混成チームだった。
仕事もバスケも一生懸命に、プロに負けないように練習をして同じ目標に向かって戦う。「文武両道」をBリーマンは大事にしているということを聞いたことがある。
限られた時間や立場の違う選手たちが所属するチームにとって仲間へのリスペクトだったり限られた時間を楽しむことは重要であり、必然的にカルチャーが形成されていったのだろう。
Bリーマンがいることは目立つ個性ではあるが、それはあくまでも表面的な見え方であってアルファーズの本質ではない。

BURGUNDY SOUL

その先頭にいたのはキャプテンである西片翼(ツバサ)という選手だ。

https://jbaske.com/db/archives/11888

彼はほとんど試合に出なかった。にも関わらず明らかにアルファーズの顔でありチームの空気を作っていたのはツバサだった。
その空気感は脈々と先輩たちから受け継がれたものだろう。

仕事をしているからこそ互いを思いやれる。『一体感』がうちの武器です。 | バスケットボールスピリッツ

「誰かのことを自分のことみたいに喜べる」

彼はタイムアウトになれば先頭でチームを迎えに行き、どんな逆境でもチームを盛り上げた。熱く明るく、ポジティブなマインドは選手だけでなく観ているブースターにも伝染させた。彼は「BURGUNDY SOUL=アルファーズの魂」と呼ばれた。

https://www.koshigaya-alphas.com/files/user/images/homegame/13nishikata_retirement_sns.jpg

トモヤの加入とツバサの引退

アルファーズがB2に上がって2年目、トモヤがアルファーズに帰って来た。
ツバサが副キャプテンになり時代が変わることを予感させた。

https://www.koshigaya-alphas.com/news/detail/id=45089

この2人は新潟商業高校の同級生でチームメイトである。
トモヤとツバサは同期で大塚商会に入社してアルファーズに加入、後にトモヤは安定したBリーマンの道を辞めプロになりB1での経験を積んだ。
20-21シーズンの最後にはツバサがそのシーズン限りで引退することが発表された。

20-21 ゲームプログラム

夢を実現すること

子どもころの夢を叶えられる人は一握り。大人になるにつれ現実を目の前にして妥協したり、その夢を諦めたり、夢を忘れるように日常を過ごしていく人が多くいるだろう。

トモヤは諦めかけていたプロのバスケ選手という夢にもう一度挑戦した。
トモヤがプロで頑張る姿は、夢は諦めなくていい、また挑戦していいんだとBリーマンだけでなく沢山の人に勇気を与えている。

トモヤに期待されたこと

再加入の経緯が詳しく書かれた記事などは見当たらないが、アルファーズをB1に昇格させるために戻って来たことは本人の口からも語られている。

前述したアルファーズが持っていたカルチャーにB1チームでの経験とカルチャーを知るトモヤをはじめ、相棒とも言えるアイク(バッツ)、シュンキ(畠山)が加入した。

アイクに「一緒に群馬にいこう」と約束していたが直前で「やっぱりアルファーズ」とLINEをした話は面白いのでアイクのYouTube見てほしい。(それでアルファーズ加入を決めてしまう二人の絶対的な信頼関係も垣間見える。)

プロとアマ(Bリーマン)どちらの立場も理解しているトモヤには立場の違う選手たちを1つにすること、それに加えてB1レベルの、昇格できるだけの強いチームになるための化学変化が期待されていた。
青野GMが理想とするアルファーズにトモヤほど適した選手はいなかっただろう。

背負ったもの

年々レベルのあがるBリーグでは、BリーマンがいるチームがBリーグでプレイするとこは以前よりさらに難しくなってきている。

本人にその意識があるかとは関係なくアルファーズに携わって来た人たち、応援している人たちの夢を継承、というより背負ってしまった。さらに昇格のために一緒にアルファーズに加入したアイクやシュンキもいたことから、昇格を成し遂げる前に自分だけ他に行く選択肢はなかっただろう。

トモヤにとってアルファーズをB1に連れて行くことはなんとしても掴みたい夢だけでは済まされない、必ず成し遂げなくてはいけない使命になった。

B1昇格への厳しい道のり

その道は厳しく、順調にはいかなかった。
1年目(20-21)のシーズンは3位の成績を収めたもののアルファーズがB1ライセンスが取得できずに残留。アイクと共に加入を検討していた群馬が昇格。

FE名古屋との激戦を制し初のQF突破
(個人的ベストゲームTop3候補)

2年目もPOに出場したもののQFでFE名古屋に敗退。20-21シーズンのプPO初戦てアルファーズと死闘を演じたFE名古屋の恐ろしいシューターであった松山駿がアルファーズに加入し、その相手に敗退。FEはそのシーズンに昇格を決めた。

3年目はキャプテンを落合知也に譲った。
おそらくだが選手として集中したいという本人の意向があったのではないかと思う。武器であるスリーポイントの確率は40.9%と驚異的な数字を記録し、チームとしてもレギュラーシーズンの勝率は過去最高で期待感も高まった。
それだけにホームで開催されたプレイオフ初戦敗退は我々ブースターにとっても重くメンタルに響いた。
3度目の正直であった。このシーズンをトモヤは最後と考えていたような気がする。

4年目の挑戦

そして4年目になった挑戦。
トモヤがキャプテンとして復帰。
昨シーズンの傷は癒えていなかったことをトモヤは漏らしている。
それを乗り越えるためにもう一度挑戦をしてくれたことをイチブースターとして感謝している。これが本当に最後という気持ちだっただろう。

アルファーズはレギュラーシーズンを地区2位で通過したものの、昨シーズン以下の成績でプレイオフに臨んだ。

ブースターとしては本当にこのままで昇格ができるのかという思いだったが、選手たちはさらにその危機感はずっと持っていたように見える。

結果としてその危機感はプレイオフでの躍進につながった。
PO初戦は昨シーズンと同じくホームで開催、熊本に快勝し昨シーズンのトラウマを乗り越えた。

トモヤは出場すればしっかりと結果を残していた。3ポイントの確率38.8%はリーグ3位に相当した。

それにも関わらず、ディフェンスを重視するチームのコンセプト、編成上の理由でトモヤはプレイタイムを減らし、ついにロスター外にまでなった。
それでもアルファーズのキャプテンはチームを鼓舞し続けた。その姿はトモヤにアルファーズのバトンを繋いだツバサと重なって見えた。

昇格をかけたセミファイナル

相手は圧倒的な勝率でレギュラーシーズンを独走していたアルティーリ千葉だった。
Game1、チームは勝利したもののトモヤの出場は0秒。
Gam2、ついに出場の機会を得た。

トモヤのスリーポイントは高いアーチを描くシュートではない。
アルファーズのキャプテンとして
ここまで這い上がってきた選手個人として
Bリーマン、ブースター、
応援している全ての人の想いを背負って
気迫と執念をリングに突き刺すような2本のスリーを全て成功させ自らの手でアルファーズの昇格を手繰り寄せた。

これからのアルファーズ

決勝では滋賀に惜しくも敗れた。
だがアルファーズをB1に昇格させる、そのトモヤの目的は達成された。

それができたら引退してもいいとまで言っていたトモヤ
※ダブドリVol12より

アルファーズがB2から昇格をするまでの、トモヤの4年間に及ぶ物語はいったん完結した。

これで終わりだろうか?

ここからは完全に個人の願望になる

B1で戦っていくために選手の編成もB1レベルにしていかなくてはならない現実は理解している。そのうえでアルファーズにはまだトモヤが必要だと主張したい。

アルファーズの物語はこれからも続いていく。
B1でアルファーズはさらに厳しい戦いになることは明白であり、いずれ優勝を目指すには大きなスポンサーを付け、代表クラスの選手が普通にいるチームになっていかないといけないのかもしれない。その頃には今の選手達はほとんどいないのかもしれない。トモヤの選手個人としてもチーム内でさらに厳しい競争になるだろう。もし他のチームにいけばプレイタイムが増えることは今シーズンのパフォーマンスが証明している。(そうなったとしても応援することは揺るがない。)

そうなった場合、アルファーズがアルファーズたる所以は何だろうか?
トモヤが受け取ったアルファーズのバトンは誰かに渡されているのだろうか?

アルファーズが大事にしてきたカルチャー、楽しむこと、相手を思いやること、それだけでは勝てる組織ではなかったと安齋HCは語った。

これまでアルファーズを応援して来た人たちも置いていかず、勝つためのカルチャーを4年かけて作りそれを昇格という形で体現したのがトモヤだ。

トモヤと1年過ごした井上宗一郎はMVPはトモヤだと評したが、それはプレイだけでなく全てにおいてのキャプテンへのリスペクトを感じさせた。
トモヤがいる限りアルファーズは大事なものを失うことはないだろう。

今まで大事にしてきたものを守りながらB1の舞台で発展させることは、さらに難しいチャレンジになるだろう。それがB1に上がったシーズンのアルファーズのキャプテンとしての使命だ。

もちろんトモヤの背中を見てきた若手には、次世代のキャプテンとして成長をしていってもらいたい。
ただ今はまだ全てを背負って来たトモヤに代わるキャプテンはアルファーズに見当たらない。ここまで這い上がってきたトモヤが自分のチームを率いて、再びB1のコートに立つことを心から願っている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?