第十一回「なにもない日々のどうしようもない記録」

深夜3時。
先ほど遅番の仕事から帰宅しネギトロ巻とカップ麺をすすりながら
YouTubeを見て 本日発売されたドレスコーズの新譜を真っ暗な部屋で
静かに聞き、台所の換気扇をつけ煙草を吸い終え

さて音楽にまつわる仕事をと思いPCを立ち上げるも
少しご機嫌斜めのPCさんは起動が遅く
「おや？マジ？これないと俺何もできないよ？」と不安になりながらも
なんとか執筆している

知名度がないバンドマンのコラムなんて一体誰が見るんだとも思うが
自分に課した隔週更新なのでやるしかないのである
これがもしも知名度爆裂有名バンドマンなら息を吐くように言葉が生まれ
面白いコラムでフアンの皆さんをさぞ楽しませたことだろうが
カップラーメンをすすりながらYouTubeを見てゲラゲラ笑う31歳の
”ただ”の男にはそんなことはできないのである

今、こうしている間にもPCさんのディスプレイには一瞬ノイズが走る
怖い

俺はこの機械によって生かされている気がしてならない怖い

とまぁ遅番の仕事にチャリで向かい、
仕事を終えチャリで帰る生活をしている俺には何もないのである

これと言って題材にするテーマもなく、
なんならTwitterで「募集 コラムのテーマ」とツイートしても
いいねが２の男である

期待値２の男である

期待値２の男の最近はといえば
狂ったようにアニメを見ている

最近見ている（た）アニメをとりあえずリストアップしてみる
・東京リベンジャーズ
・スーパーカブ
・彼女お借りします
・髭を剃る。そして女子高生を拾う
・やはり俺の青春ラブコメは間違っている
・やはり俺の青春ラブコメは間違っている 続
・やはり俺の青春ラブコメは間違っている 完
・僕のヒーローアカデミア シーズン５

とまぁこんな感じである。
中でも「なぜ俺はこれを今まで見なかったんだ！？」と自分のアンテナの無さを心から呪った作品は「彼女お借りします」だ

来たる6月19日にこの作品の一番くじが出ると職場の人から聞いて
血眼で俺はそのアニメを5時間くらいかけて一気見し、
猛烈にハマってしまったのだ

ただこの6月19日
俺がやっているバンドの遠征出発の日なのだ
俺は一番くじを引けないのだ

ただここは勿論バンドを優先する
ここで水原千鶴（彼女お借りしますのヒロイン）を優先してしまったら
なんの為に俺は歌っているのかいよいよわからなくなるからだ

そこは期待値２でも腐ってもバンドマンなのである
ソウルである スーパーソウルである

ごめん水原・・・俺・・・君をお迎えできない・・・
ごめん・・・本当にごめん・・・

この怒りと悲しみを胸に抱き俺はレーベルが所有する車に乗り
名古屋へと向かう
そして、その猛烈な水原千鶴に対しての想いを
マイクロフォンを通して拡散するのだ

なんならそのライブは配信も行われるらしいので
その拡散された俺の涙の叫びは全国各地に広まり見た人間は
「なんだこれ」と鼻で笑い、そしてそっと配信アプリを落とすのだ

俺の叫びは届かないのだ
いくら豪速球で投げても届きはしないのだ
悲しい期待値２の男 ここに涙。である。

というマジでクソみたいな冗談はさておいて
名古屋は本当に楽しみで仕方がない

ドラムとギター2人だけのセット
あまりに無謀なそのセットをアルマが死んだでやろうと。
先日、池袋のスタジオに行きリハーサルをした。

ベースがいないこのセットに俺もドラムの大塚も
手探り状態になっていた。が。
なんとかコツを掴んでアイデアを出し合い
リハが終わることには汗だくになっていた。

帰りにアルマの楽曲を聴きながら自画自賛したりして
２人は笑いながら帰った。

俺が使うギターはリッケンバッカーで
中学生の頃 GOING STEADYの峯田さんが使っているのを見て
その見た目に酷く惚れた。

「こんな高いギター俺には買えない」と思っていたが
20歳。
渋谷の楽器屋でリッケンバッカーの展示会的なのをやっていて
気付いたら人生初ローンをし、そのギターを抱え電車に乗っていた。

このギターとはもう今年で12年の付き合いになる。

このギターをアンプに繋ぎ、アンプの限界までボリュームを上げ
声もドラムを聞こえなくなるまで、血が出ても
弾いて弾いて弾いて弾いて弾いて弾いて弾いて弾いて

そして、あなたに「何か」が芽生えますように
と本気でそう思い俺は友達と名古屋に向かうとします

今週。あなたの目の前で。
誰も知らないバンドのノイズを。

その日からアルマが死んだはあなたのもの。