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第十三回「名古屋と友達の誕生日とバンド」後編

さて、後半。
名古屋のライブを終えて数日後の話になる。

2021年6月25日
この日はあるきっかけで仲良くなったヴィジュアル系のバンド
Scarlet ValseのベースShianのバースデーライブにオープニングアクトとして参加させてもらえる。

ただ今回はアルマが死んだでの出演ではなく
配信者の踊る便所太郎さんから誘われて結成されたバンド
”こしあん”でのライブとなる。
メンバーは太郎さん、ShianそしてD-SHADEのドラマーYUJIさん。
錚々たるメンバーの中に借りた猫状態の俺。

当日早速寝坊をかまし、猫は急ぐ。
電車に乗りこの日演奏する曲を復習する真面目な猫。俺。

巣鴨に到着したのは集合時間の1時間前だった。
近場の喫茶店で太郎さんがいらっしゃるとの事だったので
合流。
珈琲を飲みながら暫し雑談をして会場に行くと丁度Scarlet Valseのメンバーの皆さんも到着したてだった。
デカい車から機材を何個も運んで・・・なんて言うか・・・

めっちゃかっこいい・・・。

そんなことを吐かしているとお前もバンドマンだろと太郎さんの奥様からツッコミを頂く。
いや、でもマジでかっこ良かったのだ。
なんかこうバンドマンの貫禄みたいなのがビシビシ伝わって来て
名古屋の時の自分はシャチホコを触って大はしゃぎだったから・・・。

今回の会場は巣鴨 獅子王さん。
スタッフの人全員が、本当に全員がめちゃくちゃ丁寧かつ優しい方ばかりで
俺は度肝を抜いた。
今、このおかしくなってしまった時代にこうして箱を守るという大変さ。
その中での苦労や悲しみなんかを感じさせない対応の良さに俺は本当に感動したのだ。

だから、今回このライブはもちろん大前提としてShianを祝うなのだけれど
その中に勝手に俺はこの時代に生きるライブハウスにも下手くそな俺の歌を捧げたかったのだ。勝手に。

バンドマンはライブハウスで息をしたい。
そして、お客さんにもそれを見て欲しい。
もちろん配信なんかもあるけれどできれば生で感じて欲しい。

ライブハウスに意味を持たせたいのだ。この時代に。

これはもしかしたら俺のエゴなのかもしれないけれど、
俺たちはライブハウスがないと生きていけない。
だから。オープニングアクトだろうがなんだろうが
俺は本気で初めて入ったその箱に恩返しをしたかったのだ。

ライブハウスをしてくれてありがとうございます。と。
本気で。

そんなことを思っているとScarlet Valseのみなさんはリハーサルを始めた。
一つ一つ丁寧に音を出して念密にリハをしていた。
彼らの凄いところはあんなにツアーやライブをこなしているのにも関わらずそれでも慣れを一切見せず徹底してやっているとこだ。
当たり前のことかもしれないけど、そこを忘れることなんて本当に簡単なことなのだ。

それを慣れとせずしっかりとリハーサルをする彼らを見て
自分のバンドに落とし込もうと思った。
対バンというのは自分の勉強教材を得るということにもつながる。

だから俺はなるべく見たい。
そして、感じたい。熱を。

バルスのリハの途中でYUJIさんも合流しいよいよリハ時間となった。
今回はShianの誕生日イベントということもありこしあんにバルスのギタリストYou.さんも加入していただけることとなった。

You.さんは俺に向かって
「ブルーハーツ好きなんですか?僕もすごく好きなんですよ。」と笑って言ってくださってなんて優しい方なんだと思った。

というかScarlet Valseのメンバーみんな優しいのなんなん!?
借りて来た猫の俺にも優しい皆さん。飼われてぇよこんなに優しくされたなら・・・。

ジャンルレスな時代が来てくれて本当によかった。
ヴィジュアル系と俺がやっている音楽がこうして手をとって一緒のライブができる日が来て本当によかった。

メンバーの皆さんと談笑をしているといよいよこしあんの出番となった。
幕がゆっくりと上がる中。
俺のアカペラから始まった。

アルマが死んだのブルーハーツが似合うこの夜
この曲は北海道の田舎で作った歌だ。
有難いことにたくさんの方にこの曲が知れ渡って、あの頃はまさかこんなことになるなんて本当に思わなかった。
俺は俺でよかったし、皆さんがこの曲を聞いてくれる機会があることに
本当に感謝しているのだ。

そして、今回は何よりShianの誕生日イベントだ。
隣でギターを弾いてくれる彼に最大の尊敬と友としての愛をこれでもかと込めて歌った。

思い返せば
便所太郎さん企画のライブ”音乞食”で知り合った。
突然、彼からTwitter DMがきて自分のバンドを宣伝してくれた。
「ヴィジュアル系の偏見を無くしたい」

彼はそう言っていた。
彼の人当たりの良さと善悪はっきりしている性格を見て
そして、音楽に対してストイックに挑戦し続ける彼と気づけば友達になっていた。
アルマが死んだで初めて出したアルバムのタイトルは
「ユースフルデイズ」という。

そのアルバムの意味合いとしては
この歳でも青春は戻せるということだ。

その恥ずかしくも誇らしい単語の中にきっと彼と友になったことも含まれているんだろうなと思った。
お互いの誕生日を祝い合うなんて学生の頃でもやってこなかったことを
今こうして経験できるってことは本当に有難いことなんだな。

そんなことを思いながら俺はいつも通り叫び転がった。
俺は俺の色で、彼は彼の色で。

ライブ中後ろを振り向くとYUJIさんが微笑んだ。
今、俺は武道館に立ったあのアーティストと一緒に音楽をしているのだ。

先輩と軽々しく言ってはいけないこともわかっているが
俺はYUJIさんを先輩として本当に尊敬しているし、こんな俺にも同等に接してくれる先輩を見て胸が熱くなった。
俺もいつかYUJIさんみたいな先輩になりたいなって思ったのだ。
YUJIさんのドラムはなぜかいつも泣きそうになる。
音一つ一つが生きていて音というより声みたいに聞こえる。
プロとはそういった技術と個性でできているのかもしれないと
売れない俺は思った。

だから俺はその先輩の声に応えながら俺のできる最高の音楽を届けたかったのだ。
伝わってくれたかな。どうかな。

そして、YUJIさんの隣を見ると太郎さんがベースを弾いている。
振り返ると太郎さんがいなかったら俺はこのステージに立ってなかったし、
ShianやYUJIさんにも出会ってなかった。
普通、企画を終えるとそのバンドに対して気にかけるようなことってあまりしないと思うのだけれど太郎さんは違った。

ずっとアルマを気にかけてくれている。
それが本当に伝わる。

このバンドが始動してから太郎さんの力を何度借りただろう。
感謝がたくさんある。
だから、いつか太郎さんに恩返ししないといけないのだ。俺は。

生半可な感情でアルマが死んだの活動をするなんて許されないのだ。
そんなこと絶対にしたくない。

惰性でバンドをずるずるやるくらいなら今ここでやめた方がマシだ。

そのくらいの覚悟で俺は今もこうして音楽に縋る。
恩を返したい人がいる。それは今これを見てくれているあなたにも言えるのだ。

あなたが居なかったらこの文章もただのインターネットに放り出された誰にも読まれない文字の羅列だ。
それをあなたが読んでくれるから意味を持つ。
だから、あなたにも俺は恩を返したい。

あなたはきっと勝手に読んでるだけと思うかもしれない
けれど、俺にとっては本当に大きいことなのだ。

その勝手に読んでくれるということが俺にはとても有難いことなのだ。

俺には

これからを共にするヴィジュアル系のベーシストの友がいる。
着いていきたいドラマーの先輩がいる。
恩を返していきたい始まりの先輩がいる。

そして、あなたがいる。こんな俺を応援してくれるあなたがいる。

そんな人生。めっちゃ面白いじゃん。
死んでる暇なんかこっちには無いんだ。

いつか何もかも嫌になって自暴自棄になって
死ぬことを選んだあの日の俺が生きてくれたおかげで
こうして友人の誕生日に歌を届けることができた。

もう二度と死ぬな。俺。

もう一度いう。
俺たちは死んでる暇なんてない。
生きることで忙しいんだ。そして、めっちゃハッピーなんだぜ。

Shianと出会えてよかった。
YUJIさんと出会えてよかった。
太郎さんに出会えてよかった。

あなたに出会えて俺は本当によかった。

改めてShian

誕生日おめでとう。
Shianがやってきた数々の努力は短い付き合いながら俺も勉強させられてるよ。
本当に尊敬できる友人だと思います。
東京に来てShianに会えたことは俺の人生の財産です。

お互いにもっともっとその財産を増やしていこうね。
バンドなんてするもんじゃないけど、バンドなんてするもんだね。本当に。

最大のリスペクトと愛を込めてこの文章を終わりにしようと思います。
本当におめでとう。生き続けようね。お互いに。

ロックンロールに騙されて今も俺たちは歌ってます。
どうかあなたも見に来てほしい。

きっと騙されると思うから。いい意味で。

ライブが終わって獅子王を出た。
雨も降らず快晴の中、心地いい気持ちで電車に乗り
友の誕生とまた静かに祝った。

そんなScarlet Valseが似合う夜だった。

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