#7 グラッツェ!ナポリタン!

このお話は私たち近畿大学山縣ゼミ生がアパレルブランド「オールユアーズ」をテーマに書き上げた「オールユアーズの物語」である。オールユアーズと様々な価値観を持つ一人ひとりの物語を紡ぎ出す。

今回はワンスウィングパーカーを着て生活する大学生、山下 広臣(やました ひろおみ)の日常を描いた物語である。

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『閉まるドアにご注意ください』
プシュ〜〜〜
『こちら〇〇方面△△行きです』


今週は所属するゼミの研究が立て込んでいて、いつも以上に忙しかった。
今日は金曜日でようやくゆっくりできると思ったが、帰りの満員電車がさらに僕の疲れに拍車をかける。

大阪は常に忙しないということをつくづく感じる。
地元の愛知が恋しい。


最寄り駅に到着した。
満身創痍の僕に夕食を作るという余裕はない。
自分で作るぐらいなら、何も食べずに明日を迎える方がマシだ。

だけど、流石に夜ご飯を食べないという選択肢は僕にはなかった。


時刻は20時。

とりあえず帰宅。
すぐにスウェットのパンツと長袖に着替えた。
季節は10月半ばで最近は涼しくなってきたため、長袖一枚ではちょっと肌寒い。
フルジップのパーカーを羽織り、外食へ行く準備を整えた。

スマホで調べた情報によると「中目(なかめ)」と呼ばれる美味しいナポリタンのお店が数ヶ月前近所にオープンしたらしい。

愛知出身の僕にとって、ナポリタンは結構気になる。
愛知県民にとって喫茶店でのナポリタンは必須事項だ。

ちなみにあんかけパスタはとても苦手だ、、、


距離は歩いて15分ほど。
疲れた体に15分歩かせるというのは、体に鞭を打つようなものだが、大好物のナポリタンが待っていると思ったら頑張れる。

好きな音楽を聴きながら、夜風に吹かれて歩くのは、なんとも形容し難い良い気分だ。

そうこうしているうちに店に到着した。

店の中は少々レトロな感じでカウンター席が8席、二人掛けのテーブル席が2席。
ソーシャルディスタンスを取るため、カウンター席は4席しか利用されていない。

カウンターは空いていなかったためテーブル席に着いた。すぐにメニューとおしぼりが出てきた。

名物だからなのだろうか。メニューの表紙に大きく「ナポリタン 850円」の文字。
すぐに店員を呼び注文した。

メニューの横にはどういうわけか『世界のありがとう』の文字がたくさんプリントされた紙がおいてある。
日々のゼミでの研究の忙しさにイライラしている自分にはとても暖かいものに感じた。


スマホでニュースを見て時間を潰していると、15分ほどでナポリタンが着弾!!

シンプルだがとても香ばしい香り。これは確実に美味いだろう。

「いただきます。」
今週頑張った自分への労いもこめて口にした。

美味い。めちゃくちゃ美味い。。疲れた体に染み渡る。

スマホを片手にニュースの続きを見ながらナポリタンを頬張っていた。

と、その時、
よそ見した自分がダメだった。

ナポリタンというパスタでミートソースパスタに次ぐ程のシミの原因を溢してしまったのだ。
しっかりパーカーに落ちた。パスタにはもちろん油分もあるから最悪だ。

最初に出されたおしぼりを使い、応急処置を兼ねて拭き取るとほとんどシミにならなかった。
これでシミになってしまったらせっかくのナポリタンも美味しく感じられず、仕事疲れに拍車をかけるようなものだ。
優秀なパーカーだ。

大好物のナポリタンを完食し帰路へ。

時刻は21時15分。

明日はオフ。明後日もオフ。
今週はもうお風呂に入って寝るだけだ。
夜風はさらに涼しくなった。
食後で暖かくなった体には丁度良い気温だ。

『もしかしたら大阪は良い街かもしれない。』
どういうわけか、ふとそう思い帰宅した。

お湯を張りシャワーを浴びた。
ゆっくりと湯船に浸かり疲れを癒した。

「Grazie(グラッツェ)」

中目で覚えたイタリア語での『ありがとう』を口にしてお風呂から出た。
感謝を口にすると身も心も穏やかになるとはこのことか。

今の忙しい状況も感謝の気持ちで乗り切ろう。

時刻は22時半。
ベットに横になりいつの間にか深い眠りについた。

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〈この物語に登場したプロダクト〉

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