#8 私と女の子と白いシャツ

このお話は私たち近畿大学山縣ゼミ生がアパレルブランド「オールユアーズ」をテーマに書き上げた「オールユアーズの物語」である。オールユアーズと様々な価値観を持つ一人ひとりの物語を紡ぎ出す。

今回は、「ミテミテシャツ」を着て生活する大学生と小さな女の子を描いた物語である。

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「今日も忙しくなりますが、一緒に頑張っていきましょう!」
「よろしくお願いします!!」
スタッフ全員が一日の始まりを気持ちよく迎えた。

今日も忙しない、いつもの休日がやってきた。
休日は私たちにとって”戦い”である。


私は百均でアルバイトをしているごく普通の大学生、佐々木 凛(ささき りん)。
学校はほとんどがオンライン授業でテストはない。
代わりにレポート課題だけだから、今はもうバイト三昧。

ちなみに制服は、上はシンプルなシャツに、下は黒のパンツだったら何でもいい。
特に休日は気合いを入れるために安定の白シャツ。
色々いいところはあるけど、とにかく動きやすい。

業務は品出しとレジ打ちの行ったり来たりの繰り返し。
この単純な業務を淡々としているだけで、勝手に時間が過ぎ去っていく。


百均は生活用品が何でも安く揃っている便利な店。
その分お客さんもたくさん買い物に来る。

特に休日は休む暇なんてない。
開店して30分足らずでスタッフ全員がバタバタするぐらい、
割とハードでスピード感も求められる仕事である。

ただ、私は今もずっとバレーボールをしているからか、忙しい環境は苦に感じない。
むしろ運動しているみたいで、何とも言えない心地よさを覚える。

この忙しさにしんどさと楽しさを感じながら、
休日の午前中は、基本担当のお菓子売場で品出しをしている。


すると小さな一人の女の子がやってきた。
「このお菓子ないの?」と澄んだ瞳で見つめてきた。

あまりの可愛さと助けてあげたい気持ちで、一瞬で胸がいっぱいになった。
「ちょっと探してくるから待っててね!」
そう言ってバックルームに向かった。

ただあのお菓子は今は店頭には置いていない。
だから店に残っているかもわからない。
だけど、あの子の悲しい顔は見たくないし、させたくない。その一心で段ボールを漁った。


ほぼ全体を探し諦めかけたその時、

棚の上段の片隅にひっそり隠れていた。
脚立に上り、一生懸命手を伸ばした。

いつもなら、荷物を取るときに煩わしさを感じる一面も垣間見えるけど、今日はあのお菓子を取ることだけに夢中になれた気がした。


「お待たせしましたー!どうぞ!」
バックルームから出てきた瞬間、女の子のワクワクした表情が眩しかった。
手渡すと、すぐにお母さんのところに戻っていった。

「お姉ちゃんありがとう!」
この感謝の言葉と、私に背を向けて帰っていった嬉しそうな姿は私の小さな幸せ。
誰かの喜びを共有できる空気感ってとても素敵だと感じた。

一人でも多くの人に笑顔を届ける想いで、今日一日乗り切ろう。

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〈この物語に登場したプロダクト〉

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