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【コラム】グアテマラの学校給食事情

ヒアリング内容の共有です

エビデンスや裏をとったわけではないのですが、教育省の管轄スタッフ数名と意見交換・談話をする機会があり、忘れない内にコラムに残しておきたく備忘録の意味で書かせていただきます。

給食の先生の配置

日本では学校給食の現場には、人数(給食の食数)にもよるけれど、栄養士・調理師・調理員がいて、栄養士が作ったバランスの良い献立を、調理スタッフみんなで衛生管理に気をつけながら調理をし、学校給食法に沿って提供している。

では、ここグアテマラではどうかというと、皆無とのこと。
首都にある教育省本省勤務の栄養士が、毎年献立のみ作成(月~金の5種類くらい)、現場には栄養士・調理師・調理員の配置はなし。
では、どうやって作っているのかというと、栄養士から学校へ届く献立を見ながら、ご父兄の方々でシフトを組みボランティア(無給)で調理に当たっているのが一般的だそうです。

衛生管理の現状

集団給食を作るということで、調理に関わるご父兄ボランティアのみなさんは、少なくとも1年に一度(理想的には3ヵ月に一度とされているけれど)は最寄りの保健所で検便など細菌検査をして、その検査結果で問題がないことを確認しながら調理ボランティアを行うらしい。

が、その細菌検査にもお金がかかり、ご父兄の自費で払わなければいけないらいい。検査1回につき100ケツアール、食堂での定食3回分程度の費用だ。
これを払いたくなくて細菌検査の実施は全然浸透していないらしい。

献立はどんなもの

タコス+果物、スパゲッティ+果物、サラダパン+果物、の繰り返しのようなものとのこと。果物の指定はなく、地元でとれるものをとされていて、アレンジできるらしい。

予算はどれくらい

給食にかかるスタッフの人件費(報酬)もなければ、給食の設備・備品・消耗品なんかを買う予算もない。唯一あるのはメインとなる献立の食材費、果物の費用は「みんなで持ち寄って食べたら?」的な意味合いで、出ないとのこと。

予算管理については、どうやら学校によって、メインとなる献立の食材費の管理を学校側が担っているところと、ご父兄(PTA)で担っているところと、色々あるようです。

給食運営監査員

教育省が協会に委託し、協会のスタッフが年に何度か学校側へ訪れ、学校給食の領収証の回収をしながら給食費が正しく運営できているかどうか、また、栄養士作成の献立通りに給食が実施できているかなどを監査しつつ、時折学校の先生へ向けて衛生指導や食育・調理指導のワークショップを行うという役割を持つ人がいる。

運営における課題

①、物がなくて作れない
・備品(鍋など)が無くて作れない
・電気がなく食材を冷蔵保存できないので作れない
・水がないので作れない
・そもそも調理場も冷蔵庫もないので作れない

②、お金が無くて給食が作れない
・学校の先生が給食費を個人的なことに横領していて予算がない
・学校の給食費ではないものに使われてしまって予算がない
・食材費の前に食器を買わなきゃいけなくて予算がない

③、献立が不適切で作れない
・集団調理経験のない栄養士が家庭向け献立を提案するのでとてもじゃない
 ※確かに、スパゲティ100人分を茹でるのに大きな鍋と水の確保難しい
 ※タコスの皮作るのに、朝の4時から作業しなきゃ給食に間に合わない

④、残食が多くて作りたくない
・コロナを機に衛生の知識が向上し、細菌検査を受けていない人の作る給食を食べたがらない生徒や拒否をするよう生徒に指導する父兄がいる
・献立が生徒たちが好きじゃない野菜ばかりで残食が多い
・食育指導などが足りず作る側も食べる側も野菜に不満だらけである

⑤、人に左右され安定供給しづらい
・調理するご父兄ボランティアのモチベーションや力量不足
・学校の先生の給食への理解と汚職の無い営み不足
・給食運営監査員のコネ就職にて労働放棄による人力不足
※コネで入って一度も顔を見たことがない幽霊スタッフだけれど、給料は毎月しっかりもらっているという監査員が珍しくない、そしてそのしわ寄せを他スタッフで担うため丁寧な監査指導が難しい状況にある

考えてみましょう

とても根深いし、突っ込みどころが満載だとは思うのですが、10年前は「給食なんて出せません」というスタンスの方が一般的だったのに、なんとか現状を変えようとされている取り組みですし、素晴らしいインフラだと思うので、望まれるならば是非に改良したいところ。

この状況で、どんな目標を立て、どんな専門家をアサインし、どんな活動計画を立て、どれくらいの予算で、どんな評価軸をたて、改善できうるか。ぜひ考えたいと思いました。

post by 太田 旭




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