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言語学の世界へ

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大学で英語学を専攻していた私が色んな「言葉」について考えたnote達です。
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森鴎外の『当流比較言語学』が大好きな件について。コロナ禍の日本を見て書いたかのよう。

 『当流比較言語学』は、ドイツ語にはあるけど日本語にはない言葉を紹介しながら、日本人にない感情を指摘するという本です。  紹介されるドイツ語は3つで、構成はとてもシンプル。文字数も極めて少ないので、数分で読むことができます。  ただし、明治時代に書かれた文章である上に、紹介される言葉以外にもドイツ語が頻繁に出てくるので、ところどころ意味をとれないところがあります。しかし、分からない言葉を飛ばして読んでも、一番重要な部分は理解することができます。  私は『当流比較言語学』を、

"やっぱ栃木はいちごだよね"を訳せますか

先日、『AI vs. 教科書が読めない子どもたち(新井紀子2018年)』をようやく購入しました。まだ読み進めている途中なので、本書の真意に触れることは出来ませんが、今日は「自然言語処理」というAI技術の発展により同時通訳が可能になるのか?という話について言及したいと思います。 現在、Google翻訳等のあらゆる翻訳ソフトは基本的に英語を主言語としています。そのため、文法構造が似ているスペイン語やフランス語に対する翻訳精度は高いです。しかし、日本語と英語は言語体系が異なるため

社会は言葉でできている

昨年の9月、アメリカの英語辞典『Merriam-Webster Dictionary』が「they」の単数使用を認めました。この用法として、 —used to refer to a single person whose gender identity is nonbinary —used to refer to a single person whose gender is intentionally not revealed (Merriam-Webster "they

「外出自粛」と"Stay home"の違い

日本で「外出自粛」という言葉が3月半ばあたりから叫ばれ、世界でも#Stay homeの動きが強まっています。この言葉を見たとき私は、小さい頃トイレの個室である貼り紙を見たときの違和感を思い出しました。 「トイレットペーパーを一度に大量に流しますと、詰まる恐れがあります。 必要な分だけご使用いただきますよう、ご協力お願いします。」 "Do not flush too much toilet paper at a time. Thank you for your coopera