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【Track Review】 XG, 「LEFT RIGHT」 (2023)


Artist : XG
Track : LEFT RIGHT
Label : XGLAX
Released : 2023.01.25
Genre : K-Pop / J-Pop / Alternative R&B

XGはメンバー全員が日本出身もしくは日本系で構成された7人組の(K-)Popグループである。XGALXプロジェクトの出資が日本の大手企業のAVEXから始まったところ、そしてグループを見る中で日本というアイデンティティーを消去しにくいところなどから、私は彼女らの音楽を「日本音楽」と認識している。しかし同時に、彼女らが韓国を拠点として活動していること、アーティスト育成プログラムや各種プロモーション方式などに照らしてみると、「K-Popかどうか」と執拗に問われる論議の答えは素直に「Yes」と答えられる。まあ、このようなカテゴリー区分について、企画側からはある程度に距離を置いて、国籍に左右されない「X-Pop」というキーワードを押している。しかしK-Popが単に地域性だけに基づくジャンルではないことを考えると、「K-」(あるいは「J-」)を消去しようとする戦略的意図には同調しにくいだろう。

もちろん、このプロジェクトが「K-」という範囲をどこまで許容するのか聞いて挑発する側面は否定できない。(そのために提唱された「X」であるはずだ。)ただ、だからこそ、むしろXGがK-Popのステレオタイプを体化する過程は重要な意義を持つ。つまり—K/DAがそうだったように—K-Popはその地域的特性から大きく解放されても十分それらしく模倣できるかについて質問するからだ。例えば私は「GALZ XYPHER」の映像で彼らを初めて接して大きく感心したことを覚えているが、これはもちろんラップメンバー全員が圧倒的な実力でビートをハイジャックしたからでもあるが、高級に飾ったビジュアル、歌詞に日本語・英語・韓国語を混ぜるいわゆるグローバルなアプローチ、何よりもこのサイファーというコンテンツと、それによって実力派であることを自ら立証しようとするプロモーション自体が全てK-Popの脈絡を転用しているからでもあった。いわゆるK-Pop第3世代台頭とほぼ同時期に、ラップ競演番組の『SHOW ME THE MONEY』シリーズが大々的に興行し、K-Popとヒップホップの間に腐れ縁を結ぶようになったことを思い出してみると、さらにその関連性が目立つ。

本稿で扱うマキシシングルのタイトル曲、「SHOOTING STAR」もやはり強いアクセントで撮って押すようなパワフルなヒップホップをベースにする。ただ、その曲がラップとボーカルセクションを直に区分することでやや平面的な展開に導くのに対し、オルタナティブR&Bに基づく「LEFT RIGHT」は流麗に流れるような魅力を誇って、ヒップホップあるいはアクセントの強いダンスポップを越えてK-Popステレオタイプをより広い範囲で遂行できることを示すが、その魅力が相当だ。メロウなシンセにトラップリズムを乗せたビートはリズミカルなラップシンギングを要求する上で、ミニマルなプロダクションの中でもそれぞれ違う方法でグルーヴに乗って終始楽しい弾みを逃さない。メロディーは「I want your body movin' left right left right」と直観的な動作を指示し、中毒性を作るhookを中心に流麗に波に乗る。「the only direction I know」とまっすぐ伸びる高音部と「sing it real low」とピッチを急激に下げるなどの演出はささやかな面白い要素だ。また、基本的にヒップホップのリズムを諦めたわけでもないから「XG we certified」というswagも自然に融和するなど、ボーカルとラップの魅力が互いに大きな衝突なく一波をなす。

「LEFT RIGHT」は良いR&B曲かつ、J-Pop曲かもしれない。しかし、本曲をもっと特別に扱うようになる理由があれば、それがK-Popを模写しようとする点にある。私たちは先にXGが日本の音楽として見られると同時にK-Popで呼名できる根拠に触れてみた。このような事例はXGだけではない。『PRODUCE 101 JAPAN』を通じてデビューしたJO1、JYPが制作に参加した『Nizi Project』のNiziU、等々…。今更だが、日本でのK-Popの影響力は想像以上に強力だ。日常の中に自然に浸透した光景から、業界内でも主要なレファレンス素材であり、競争やベンチマークの対象である点、そして実際に成功事例が登場したローカリゼーション企画まで。いつの間にか地域的・国家的文脈を超越してしまったK-Popの現在を私たちはXGから見ることができるだろうし、交差的・攪乱的文脈が持つ意義に秀悦な曲で説得力を与えようとするXGの挑戦はついに本格的に始まったと思われる。

Rating : Good


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