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韓国の2018年間K-POPベストアルバム50

2018年度に発売された韓国のアルバム(EP含む)をジャンル全般的に紹介したいと思います。

自分自身、大した音楽愛好家でもないですし、色々な記事から集めたおすすめリストを聴いて、自分の好みに合わせて並べただけです(そのせいか、やたらとヒップホップが多いような…)。
各ジャンルに対する知識が全然ないので、まあ、「こういうのもあるよ!」的な紹介文ということでよろしくお願いします…。

※選定期間:2017.12.31~2018.11.30
※貼り付ける映像はそのアルバムでの個人的な一押し曲です。
※名称はなるべくApple Musicに登録されているか検索できる名前に変えております。


50. OH MY GIRL『Secret Garden』(Pop)

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2000年代半ばのアイドル感性のリバイバルと思われるメロディーに現代的なベースラインを付与することで、単純なる復古からもう一歩進んだタイトル曲「Secret Garden」が話題になりました。その他の収録曲も歌詞中心アイドルソングの魅力を生かして、OH MY GIRLのアイデンティティーを確立させました。日本進出おめでとう!


49. ADOY『LOVE』(Pop)

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2017年、韓国シンスポップ界の新星として登場したバンド、ADOYが今度はもっとキャッチ―な音楽でカムバック!シンセサイザーの夢幻的なムードが、まるで愛に溺れて夢の中を泳ぐ感じじゃないですか?(あれ、僕は恋愛経験がな…い…)レトロ・ローファイの雰囲気を出すポストプロダクションにも注目!


48. (G)I-DLE『I am』(Pop)

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素晴らしい完成度の代表曲「LATATA」を筆頭に、またすごいラップのイントロを誇る「$$$」では”I'm not your girlfriend"という、疑似恋愛対象としてのアイドル観の脱皮宣言など。”I am”という宣言に符合する魅力的な曲が並んだ、またしてもすごいアイドルのデビュー作です!


47. HYUKOH『24:How to find true love and happiness』(Rock)

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国民ヒップスター(?)バンドのHYUKOHの最新EP。多様な感性を見せてくれた前作とはまた違う方向で、シューゲーズを中心とした夢幻的な感性を前面に出してきました。関係性についてもっと希望的に変わったのが注目点だと思います。


46. Galaxy Express『ELECTRIC JUNGLE』(Punk)

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短い!強い!楽しい!血が沸く!叫ぶ!緻密!暴走!全曲1分以内!とにかく、聴けえええええ!!!!!


45. Samuel Seo『UNITY』(R&B)

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常に筆者はボーカリスト及びプロデューサーのソ・サムエルから「巨匠の気品」を感じます。特に今作のバンドサウンドは、彼の今までの作品になかったにもかかわらず、その完成度の高い調和が執念深く感じられます。


44. Hwaji『WASD』(Hip-Hop)

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韓国ヒップホップのトップ・リリシストの一人であるHwajiの語り方は、まるで現実をゲームのように観照するヒッピーのようです。前作より軽くファンキーになったプロダクションにラップのグルーブが強調され、批判から滑稽へと、よけるが逃避しない、現実的でシニカルな姿勢を素晴らしく愉快に保ちます。


43. Aseul『ASOBI』(Electronic)

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一曲一曲の感じがみんな違いますが、彼女なりの幻想的でインパクトの強いシンスとベースのサウンド、そして言葉一つ一つを浮かばせるボーカルがアルバムに統一性を付与します。愛、人に関する考察が集約した歌詞は、明るい曲も寂しく見せます。


42. Kid Milli『AI, THE PLAYLIST』(Hip-Hop)

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曖昧な順位ではありますが、2018年、筆者が一番多く聴いたアルバムです。ハウスを筆頭とした、以前の韓国ヒップホップであまり見れなかった新鮮なプロダクションと、それに合わせてリズムを勝手に料理する驚きのラップ・パフォーマンス、どこかひねくれたヒップスターのキャラまで、彼を韓国ヒップホップのトレンドセッターに変えたアルバムです。


41. jeebanoff『Panorama』(R&B)

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アルバムタイトルのように過去を回想する話を中心に、サウンドプロダクションもそれに合わせてレトロ・ソウルで飾りました。音楽に個性を与えるのはjeebanoff自身の歌詞と声です。「細い」とも断言できない彼の美声は時に正直に、時にユニークにソウルを再解釈します。オルタナティブR&Bから音楽の幅を広げたEPです。


40. JUSTHIS & Paloalto『4 the Youth』(Hip-Hop)

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韓国ヒップホップの現役ベテランPaloaltoと、2016年『2 MANY HOMES 4 1 KID』という名盤を出した新鋭JUSTHISの合作アルバムで、彼らの2017-18年現在を音楽で撮った短いエッセイ集のような感じです。怒っていて、寂しいけど、その孤独な道を進むことが誇らしい彼らの複合的な話が感情に沿って語られます。いろんなムードのビートと、彼らの素晴らしいラップの調和がすごいです。


39. Moon Junghoo『大航海時代』(Pop)

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ミュージカルのOSTを聴くようでした。このような音楽をアルバムで聞くのは初めてです。大叙事詩のハイライトを占めそうなナンバーでは僕も人生の分かれ道に建ったような固い決心をしているようで、ロマンチックなバラードナンバーを聴くとドラマが自動的に想像される…なんというか、いいです。


38. JJANGYOU『KOKI7』(Hip-Hop)

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余韻のあるJflowのプロデュースしたビートに合わせて、エネルギーの高いJJANGYOUの視線は幼年期にできた内面の傷に向かいます。プロデューサーとパフォーマーの両極端な雰囲気が以外のシナジーを起こした、個性的なヒップホップアルバムとして記憶されるでしょう。


37. Dongyang Gozupa『Gap』(Crossover)

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ロックバンドのドラマーとベーシスト、そして韓国伝統楽器の洋琴演奏者が結成したバンドのデビューEPです。こういったクロスオーバーはもうそんなに斬新ではないですが、その調和が作り出す美しいメロディーと、速度のある演奏は、特殊だと感じられやすいこのような音楽へのやさしい入門書ではないでしょうか。


36. イ・ムンセ『BETWEEN US』(Pop)

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イ・ムンセはほぼ30年以上前から活動してきた韓国の代表的なバラード歌手であり、今作での現代ポップ要素―レトロポップとはいえ―に自然に混じれるのは本当に彼の力量を実感させます。重みのあるバラードナンバーも心に熱く残り、この濃い感覚の出展をまだ言葉にするには難しいです。


35. Plugged Classic『Sabai』(Metal)

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実を言うと、僕、メタル全然知らないんですよ…。誇張された打撃感と、ディストーションをいっぱい掛けたギターとベースとボーカル、そして中毒的なリープなど…。その「メタル」として思い浮かぶイメージが反映されていて、なんというか、基本に充実だから高評されているのでしょう。


34. Jvcki Wai『Enchanted Propaganda』(Hip-Hop)

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アルバム全体にかけて彼女はこの時代の理念・現象と全面戦争を仕掛けます。過激なトラップサウンドとラップシンイングを通じて、「プロパガンダ」と名付けて宣伝する理由は何でしょうか。トレンドにひそめた反逆の音楽を持ち出してきた、韓国音楽界の恐るべし新星です。


33. Kiha & The Faces『mono』(Rock)

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バンド「ジャン・キハと顔たち」(Kiha & The Faces)はいつも淡白な音の中で時にはキャッチ―で時にはキッチなセンスで飾ります。今作ではアルバムの題名からモノミックスを強調します。サウンドを集中させて、前作から続くテーマの「孤独」について、もっと安定的に、繊細に、しかし割と楽しく描き上げます。ユニークな道を歩いてきながらも、常に大衆を慰めてきた彼らがもっと徹底的にマイウェイを語る9曲。そのマイウェイすらも僕らには共感を与える、寂しいバンド解体アルバムです。行かないでえええええ!


32. Moldy『Internet KID』(Hip-Hop)

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ポスト・インターネット時代をすでに受肉化した時点でのヒップホップを表現している…といえばいいでしょうか。とにかく、すごく乱雑なオルタナティブ・ヒップホップです。最小限のソースを使って華麗で速度のある混沌を作り出すプロダクションと、本能的なラップパフォーマンスが常に投げかける単相は、オンラインとオフラインの境界線がなくなっていく現代社会で、個人のアイデンティティーはどこで生きているのか疑問を投げている…らしいです。とにかく、すごい。


31. EGO FUNCTION ERROR『EGO FUN SHOW』(Rock)

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誰かが「俺の嗜好に合いすぎて販売量が心配」といったそうです。楽しくて、ユーモラスで、可愛く、日常感のあふれ出す歌詞まで、時にはキャッチ―で時には暴走するロックサウンドと展開に身を任せているといつの間にか吸い込まれちゃうぞ!このアルバムで朝を迎えながらストレスをぶっ放そう!特に、映像を貼っといた「A Crackdown Society」はとくに日常で描かれる体制転覆(?)的な歌詞と連なって高潮に向かう展開が調和し、カタルシスの果てを突っ走る、すごく愛のこもったおすすめ曲です!


30. 柴雨林『Jaurim, 10』(Rock)

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バンド『柴雨林』(ザウリム)の陰気なエネルギーは我らのプレイリストを長い間満たしてくれて、もう10作目のアルバム、セルフタイトルで帰ってきました。鋭く、凄絶に叫んでも、希望をなくさない柴雨林の様々な色を取り込んだアルバムで、完璧に近い演奏と染みるボーカルが一曲一曲を輝かせます。「狂犬時代」「知ってる子」のような社会批判ナンバーから「永遠に、永遠に」などのロックバラード、ファンのための「XOXO」まで、今まで取り扱ってきたテーマが並ばれます。


29. Near East Quartet『Near East Quartet』(Jazz)

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筆者はジャズについて全くの無知です…。それにこの音盤はジャズと韓国伝統音楽がクロスオーバーされて、尚の難しさです…。重みが感じられるというか、繊細で、ほのかな感じ。それに韓国伝統音楽の中心の叙情である「恨」まで。ジャズと伝統音楽ってこんなに合うんだっけ、と思えるほど、混然一体になって演奏される光景を、心の余裕をもってぜひ聴いてみてください。
ちなみに、ECM Records 最初の韓国バンドの音盤だそうです。


28. Kim Sawol『Romance』(Folk)

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淡々と語り、静かに歌うからこそ強いインパクトを与えます。別れの傷がどんどん開き、動揺する感情を何とか抑えようとしても、徐々に奈落へ落ち込んでいくのがアルバム全体で感じられます。誰かを見送り、再び一人になっていく過程が叙事に沿って静かに、緻密に描いていった作品だと照会したいです。


27. Sultan of the Disco『Aliens』(Funk)

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タイトルのように韓国音楽界の異邦人、異端児であったスルタン・オブ・ザ・ディスコのカムバックです。ギミックは薄れて、もっと成熟したサウンドが流れます。メインボーカル及びエンジニアのNazam Sueのプロデュースは、最高級のサウンドクオリティーで、色んな時代とジャンルの音楽がぶつからず一か所に調和させます。本当、天才的なサウンドです。


26. YESEO『Damn Rules』(Electronic)

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エレトリックなサウンドとR&Bのボーカルを同時に駆使するYESEOの初フルアルバムです。タイトルとカバーからフェミニズム的なメッセージを暗示します。抑圧された女性の官能性を表出する歌詞と主体的な主題意識、その官能性を倍加させるダンサーブルなエレトリック・プロダクションまで、すべてが魅力的に構成されたアルバムです。


25. Say Sue Me『Where We Were Together』(Rock)

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サーフロック、ポストパンクなどのいろいろなリズムと音が、ギターとボーカルを湿るシューゲーズの下で一貫性を持たされるサウンドが特徴です。その音に染み出る感情は、バンドの悲しい裏事情を知らずに聴いた時も心をおぼろげにさせました。その完成度の高いロックサウンドは彼らの歌う郷愁と共に再現され、初めて聴いた時の暖かさは、そのシナジーから出るのかもしれません。


24. SHINee『’The Story Of Light' Epilogue』(Pop)

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どうしても先に世を去ってしまったゾンヒョンの記憶を重ねてしまいます。歌詞の言葉一つ一つがその記憶に沿って二重に解釈されて、重みがある理由は、その悲しい事件を覚えているからです。恋人に向けて書く手紙は、生きる意志の再確認としても考えられます。悲哀をもって生きねばならないみんなに送る歌でもあるでしょう。SM Entertainmentが送る最高級のアイドルポップサウンドはぜひチェックを。


23. Hippy was Gypsy『Language』(R&B)

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プロデューサーJflowとボーカリストSepでできたR&Bデュオの「ヒッピーはジプシーだった」の音楽は、余韻を残し、韓国的な情を刺激する、個性的で重みのあるのが特徴です。日常で過ごしていくものたちに言語を付与し、代わりに歌ってくれるような美しい菓子と旋律を通じて、一度泊って歌われた存在について考えさせます。


22. AASSA『Tres BonBon』(Afro)

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僕としては「生々しい!土俗な!」としか言い表せられないアフロミュージックのですが、即興的なジャム合奏がアフロミュージックの楽器と共に調和する瞬間にただ驚くだけのことです。韓国語と西アフリカの言語でできた歌詞は理解に難しいかもしれませんが、リズムとメロディーからその悲哀のこもった楽しさは十分伝わってこないでしょうか。


21. Hunger Noma『Weird Tales』(Hip-Hop)

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クトゥルフ神話をモチーフにしたハードコア・ヒップホップです。実を言うと自分、その神話全く知らないのですが…人の闇を暴く音楽の色彩と、ラップ好きの僕の「ヒップホップ魂」を弾ませるビート、鋭くたたき込まれるラップだけでも十分いいアルバムですし、そのモチーフに合わせて物語を進ませる能力がすごいです。



20. BTS(防弾少年団)『LOVE YOURSELF 轉 ’Tear'』(Pop)

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「別れ」をテーマにしたアルバムで、それに沿った美しい歌詞と旋律のお別れソングで満ちています。プロダクションからボーカルとラップまで完成度が高く、代表曲「FAKE LOVE」はもちろん、バラードポップ「134340」、南米のリズムがトラップに混じった「Airplane pt.2」など、色々なジャンルを取り入れて、青春の痛みと希望を語る、素晴らしいK-POPアルバムです。


19. Park Jiha『Philos』(Traditional)

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色々な伝統楽器の音が徐々に重なって成していく、音だけで満ちた時空間を想像してみます。前面に出る音は神秘で、裏で支える音は緊張感を付与し、色濃く部屋を満たしていきます。様々な時間のかけらが集まって伝える感想をいつか把握できるでしょうか。


18. Kim Haewon『Sea and Myself』(Folk)

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最小限のソースであるからこそ集中させる力を持つのがフォークの魅力だとある方は言いました。微弱ですがキャッチ―な旋律と、静かにイヤーガズムを促すギターと声、そして心の傷を海と比喩する歌詞など、まだ僕がフォークと親しくなるには時間がかかりそうですが、これは今まで掴んだ魅力をそのまま保っていて、すごいと思わざるを得ませんでした。


17. Jang Pil-Soon 『soony eight :so gil hwa』(Folk)

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フォーク、アンビエント、エレトリックなどがジャン・ピルスン氏の神秘な声と静かに溶けていき、時間を徐々に埋めていきます。「ジョ・ドンジン師団」と言われる、彼ら固有のフォーク・ポップは以前から韓国のどこかを色付けていたに違いありません。地域共同体の中で、自然と人間をこんなに美しく歌えるでしょうか。まだその感動を完全に感じ取るのは大変ですが、聴くたびにその感動が深まっていきます。


16. SUMIN『Your Home』(R&B)

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ネオソウルのボーカリスト・プロデューサーのSUMINの初フルアルバムです。清涼感のあるサウンドで満ちていて、聴くと気分も一緒によくなります。純愛報と日常の話を集めて作られた、ユーモラスでユニークな表現と、幻想的で明るい歌詞一行ずつが与える感動が素晴らしく、それらを明るく包み込む彼女なりのサウンドメーキングが独歩的です。


15. Lee Jin Ah 『Jinah Restaurent Full Course』(Pop)

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ユニークな音色と独歩的な演奏実力、心安らかでウイットのある作詞・作曲まで、本当に魅力が多すぎる「フルコース」です。ジャズを基盤にヒップホップ、エレトリックなどのジャンルを取り入れているにもかかわらず、きっちりと整えられて聴きやすいサウンドで迎えてくれます。僕らが日常の中で出会う感情を描き出して、音楽を通じて共有するその場がすごく平和でより取り見取りです。


14. FANA『FANAbyss』(Hip-Hop)

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「ライミング・モンスター」と呼ばれるFANAの、精神病の闘病日記です。絶望の言語でできた彼の韻はいつの間にか深淵の世界に導きます。意図的に窮屈に作られたサウンドと、いつもより凄絶な声は、すぐ耳の下で深淵を文学的に昇華しながら絶えず語っていき、アルバム全体にかけて続く緊張は最後になって爆発します。にもかかわらず、まだ希望の光が自分の中にあると誓う曲である「Guiding Star」が、コンサート専用の未発表曲だったという事実が示唆する重みがあります。


13. Dongchan『Fog』(Electronic)

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空虚な空間に抒情的なピアノの旋律が鋭く響き、その波形の周囲を電子音が満たしたり捻ったりして、結局調和し転覆する過程を色々なパターンで反復しているようです。抒情を様々な形で歪曲する実験作というべきでしょうか。もしかして、ピアノという楽器をいろんな音と結合していく実験をしているのでは?と思いました。


12. Bassagong『TANG-A』(Hip-Hop)

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「船乗り」という意味の名を持つ、レトロ感充満なラッパー「ベッサゴン」のセカンドアルバム『TANG-A』(蕩児)は、70-80年代韓国のサイキデリックロックサウンドをヒップホップの文法に合わせて作ったプロダクション、その上で貧しい音楽人の浪漫をウイットよく、時には正直に語る名作です。今時代の青年を敗者に落とし込むシステムから逃避し、浪漫を叫ぶ香ばしいラップとメロディーが泣ける理由です。


11. Jclef『flaw, flaw』(R&B)

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素晴らしい作品《flaw, flaw》で突然現れた女性ラッパー・シンガーソングライターのJclefは、何よりもその安定的で余裕のあるパフォーマンス、深層的な歌詞でどんどん注目を浴びている新鋭です。世の中の設定した目標そのものの虚無を告発することで、内面の欠点をそのまま直視し受け入れる過程を淡々と描いています。



10. Hippy was Gypsy『Empty Hands』(R&B)

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再び「ヒッピーはジプシーだった」です。前作で通りすがるものらに言語を付与したのなら、今作では自我の深淵に入り込み、その虚像を発見します。プロダクションはよりアンビエンチックになり、ソースをもっと執拗に編集しながら、前作とは違う方向の音を見せます。もっと難解になった音楽の中、Sepの歌詞ライン一行がもっと凄絶に聞こえます。帰るべき場所は虚無でも、いた場所の傷だけはずっと残るからでしょうか。


9. Jungsu Choi Tiny Orkester『Tschuss Jazz Era』(Jazz)

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ジャズを全然知らない筆者ですが、KMA(韓国大衆音楽賞)ノミネートの短評に書かれた「完全な韓国のビッグバンド」という言葉一つを基に鑑賞しました。にもかかわらずこのアルバムに感動した理由は、ジャズ界の最高クラシック『Kind of Blue』が連想されたからでしょうか。僕がジャズを聴くときに求める、即興性と協奏のシナジー効果が伝わってきました。


8. Decadent『Decadent』(Rock)

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本当にデカダンスな雰囲気が強く漂うアルバムです。ブルースロック特有のべとつくボーカルとベースのリズムにとらわれると、予想もしなかった歌詞が出てきたり、偏執病的な反復に陥ったり、いつの間にか絶頂に至ったり、とにかくアルバムの描く退廃的な世界に飲み込まれます。話者の閉じ込められた内面から徐々に外に向かっていく過程を描くといいます。象徴的な言葉で記録したその過程がサウンドとして築きあげられる感情の起伏とどう調和していくかを知るとき、全然わかりきってないロックの感動を受け入れられるでしょうか?!という、個人的な結論ですみません。


7. Naul『Sound Doctrine』(R&B)

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韓国を代表するR&B/Soul歌手ナオル(Naul)の本作にはソウル(Soul)の精髄を取り入れた濃い味の曲でいっぱいです。強いソウルの香りがするプロダクションの上で、韓国最高のボーカリストと呼ばれるナオルの解釈は常に驚きの連続です。ファンク、バラード、ゴスペルなどを詰め込み、ナオル自身のクリスチャンとしての信仰を示した言語はアルバムとしての統一性まで付与し、完成度を高めました。


6. Byul.org『Nobody's Gold』(Experimental)

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奇妙な音がランダムに広がります。どこでどんな音が出るか予測できず、急に不規則なリズムの中に侵入する音を認識するとき、また持続する音たちが徐々に変化していくことを感知するとき、その次のステップが気になる、真新しい技術で音楽の本能的な好奇心に目覚めるみたいです。誰かがByul.orgのことを「韓国音楽界のサブカルチャー」だと言ったのが思い浮かびました。音一つ一つに興味を持たせる、面白い作品です。



5. Asian Chairshot『IGNITE』(Rock)

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ロックバンドなのに、まるで楽しい伝統農楽を聴いてるみたい!というのが初感想です。いわば「韓国らしい」ロックです。これをどう説明するべきかは知りえませんが、とにかくこのアルバムは「恨」の感情を「興」として昇華します。エネルギーに耐えきれず外部に怒りを吐き出しつつもサイキデリックで観照的な姿も見せますし、強烈に走りますがどこか空虚です。固有の正体性は混乱で、渡ってきた道も行くべき目的も失ったが、我らの青春はただ美しく燃え上がっているのを、強烈なエネルギーをつぎ込んで証明します。



4. KIRARA『Sarah』(Electronic)

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KIRARAの音楽は綺麗で強いです。僕らを躍らせるビートに潜んだ感情のベースは悲哀と怒りです。なのでビック・ビートを中心としたパーカッションは何かを壊しにかかる感じですが、その上を包むコードとメロディーは繊細で美しく、楽しさを与えてくれます。ロマンティック性から攻撃性まで、僕らの感情の本能を刺激するKIRARAの電子音遊びは、僕らを「心配」し、一緒に「のぞみ」、「雨の中でも踊って」、この場所に「居続ける」勇気を与えてくれます。



3. Dark Mirror Ov Tragedy『THE LORD OV SHADOWS』(Metal)

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まあ、自分自身メタルに全然詳しくないですが、それでも圧倒的なヘヴィネス・オーケストラの饗宴です。各セッションの素敵な演奏たちが、図り切れないほど緻密な構成のもとに集い、アルバム全体にかけて巨大な一曲を完成していく光景を聴くと、本当に感嘆の連続です。引くときは引き、クライマックスでは絶えずに突っ走る演奏とグロウルは我らを闇の世界につき込んで、自分の中の影(Shadow)と奮闘する過程を描き上げます。闇が積み上げる華麗さにみんなと一緒に感動されたいです。



2. XXX『LANGUAGE』(Hip-Hop)

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プロデューサーFRNKの予測不能なインダストリアルビートとKim Ximyaの実力のあるラップが、この音盤が持つすべてのアイロニーを支えてくれます。主流を拒否する音楽的「形式」の中で、主流に受け入れられない現実に対する怒りを示す「内容」を詰めて、さらにそれを「形式」の中で無慈悲に捻った当惑な音楽です。典型的な成功神話をぶち壊し、外部と内部の矛盾をずっと告発する話者の混乱、そしてその心理をもっと混乱に描く最上級のビートパフォーマンスは、韓国だけでなく世界でも真新しい音楽ではないかと思います。








1位発表!





...だと思ったでしょ⁈⁈⁈




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色んな理由で入りきらなかった惜しいアルバムリスト…

発売月ごと Honorable Mentions

12月:A-TRAIN『Hello, My Name Is Insecure』(R&B)
01月:OLNL『All-Available』(Pop)
02月:Kang Asol 『The Day Of Love』(Folk)
03月:NCT『NCT 2018 EMPATHY』(Pop)
04月:Sujin Seo『Strange Liberation』(Jazz)
05月:Peppertones『long way』(Rock)
06月:Hyunpil Shin, Heean Ko 『Dear Chopin』(Jazz)
07月:Noeazy『Triangle』(Metal)
08月:Omar and the Eastern Power『Walking Miles』(Rock)
09月:Echae en Route『Echae en Route』(Pop)
10月:NCT 127『Regular-Irregular』(Pop)
11月:Huckleberry Finn『Aurora People』(Rock)





すみません…

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マジで発表しますから…







2018 ALBUM OF THE YEAR





1. 空中泥棒『Crumbling』(Folk)

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得体の知れないアーティストが何のプロモーションもせずに突然アルバムを出しました。音質は悪く、歌詞は聞こえない。一応フォークとは書いたものの、ジャンルも全然わからなく、実に奇妙。かといってアヴァンギャルドな不気味性があるかと言うと、むしろそれに比べたらポップとも呼べるくらい聴きやすい。弱く響く音たちが巧妙に重なり合い、「圧倒的な瞬間」(ナ・ウォンヨン氏のレビューから引用)を築いて行きます。なのに、題名は逆説的に『Crumbling』。「崩れ」でも、「崩し」でもない、「崩れる様子を能動的に表した名詞形」の題名。
では、いったい何が「レッツ崩壊!」しているのでしょうか。時間に沿って繰り返されるべき音の展開の裏切りかも知れません。今作に来てようやく公開した歌詞で歌われる世界の崩壊をそのまま指すのかも知れないです。
崩壊といえば、時々出てきて展開を転覆させるノイズを思い出させます。この作品のノイズはシューゲーズやノイズポップのような、極端なディストーションから出てくるものとは違う。(もちろんディストーションがないと言うわけではないですが。)そのノイズの正体は、色々な楽器、声、騒音など、先から薄いけどずっと少しずつ時間を構成してきた音たちがついに一箇所に集まって何かを「築いた」その時に、ノイズとしてその時間を「崩壊」させるのです。
老婆心に言っておくと、これは全く過激な作品ではありません。気楽に聴けるサウンドでできたアルバムです。それに、今までこの作品についてずっと否定語で定義してきましたが、だからといってなにかのアンチテーゼで作られた実験目的の作品でもないです。そこにはただ音の遊戯があって、韓国語がわからなくても構わない。人間の声は音楽を構成する一部に過ぎないので。(韓国人のぼくでさえも歌詞を理解しながら聴くことは不可能です。)しかも、キャッチーで楽しい。
いかに緻密なのでしょう。騒音を不規則に交え、ジャンルを計り知れず、構成の規則を破壊しながらも、郷愁のようなものまで起こしうる、研究しがいのある不思議な美しさです。





こちら、紹介したアルバムから2曲ずつ集めたApple Musicのプレイリストです。関心のある方々、よかったらどうぞ!


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