「いい匂いがした」西村賢太
対談では、天涯孤独と思われた西村賢太の遺族が無事見つかり、藤澤清造の隣に自身が建てた生前墓に納骨もされたという報告から始まります。「文学界」の2022年4月号には、無事遺稿(『雨滴は続く』の最終回)も掲載されました。
朝吹さんは一緒に芥川賞を受賞し、何度か対談をしたこともあります。朝吹さんの印象では、西村さんは「どんな人に対しても距離がある。死なないと近くなれないのかな」と、「生きている人間への信頼することの怖さ」を感じています。朝吹さんはそんな西村さんを「機嫌のよい羆」と形容します。
豊崎さんは西村賢太から、墨書入りの献本をいつももらっていました。ところが、あるとき、西村さんのエッセイで、「自分はいつも献本しているのに相手は一冊も送ってこない」といわれてしまいます。席順にもうるさかった西村さん。作品の北町寛多とは異なる「ちゃんとした人」である横顔が見えてきます。
朝吹さんは「人の匂いに言及してはあまりいけないけど」と前置きしたうえで、シャツも清潔で「いい匂いがした」といいます。ちゃんとした人、育ちの良さも感じさせる人でした。
私小説2.0
対談では西村賢太の「秋恵(小説の中の同棲相手)」感を語っていきます。秋恵に対して酷いDVがありながらも読みすすめることができるのは秋恵が「装置」となっているのではないかと豊崎さん。朝吹さんは「歌舞伎」を例にあげ、悪行の場面は「(気持ちが)あがる」ということと一緒ではと指摘します。
豊崎さんは西村賢太はとても自覚的な「私小説2.0」と評します。
対談の詳細はアーカイブ視聴でお楽しみください。
【記事を書いた人:くるくる】