寒空の帰り道

寒空の帰り道

OKKyu
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この曲にはとてもプライベートなエピソードがある。

一度仕事で千葉県に出向したことがある。それも齢30になって初めて沖縄から県外へ出たのである。出向したのは11月。例年より早く初雪が降った年でもあり、生まれて初めて雪を見た年にもなった。

田舎者の思い込みで、千葉にでも行けばどこも沖縄よりも都会でにぎわっているのだろうと思っていた。しかしそうでもなかった。会社が手配してくれたマンスリーは小さな1軒屋か畑が立ち並ぶ住宅街の中にあり、徒歩10分でようやくコンビニが1件しかないという場所だった。スーパーも飲み屋も遊び場もない場所だったためか、仕事帰りの社会人達も外で長居することはない。少し残業で定時帰りの時間帯から遅れると、ただ一人、閑散とした道を帰ることになった。

慣れない寒さに肩をひそめて、ただ淡々と、いつもの道を歩く。
その雰囲気にひと押しされたか、脳裏にピアノの旋律が浮かんだ。

仕事から帰ると急いで作りたくなったものの、手元にはイメージにあったピアノの音を出してくれる音源がない。沖縄へ帰るまでしぶしぶと制作は諦め寝かせておいた。

完成したのは3ヶ月後のこと。慌ただしい日々の中で旋律が記憶から消し飛ばされないかと心配したが、無事残っていてくれた。忘れようにも忘れられなかったのだろう。あの頃の記憶と肌に感じたその寒さは。

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