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【アレルギー性鼻炎】ひどい花粉症に使用するゾレア皮下注とは?

いつき博士です。
アレルギー患者教育向けサイトを運営しております。

既存の治療で鼻炎がよくならない
花粉の時期が嫌だ
そんな経験はありませんか?

飲み薬だけでなく
注射で治療する方法があることをご存じでしょうか?

今回は季節性アレルギー性鼻炎に使用できる
ゾレアについて勉強していこうと思います。

どれくらい使用するのか
どのくらい鼻の症状に影響を与えるのか
についても記載していきます。

1.ゾレアってなに?

ゾレア(オマリズマブ)とは
2009年にノバルティスファーマから
気管支喘息治療薬として発売された
抗IgEモノクローナル抗体製剤です。

その後、2017年に特発性蕁麻疹
2019年12月に季節性アレルギー性鼻炎
承認を得ています。

今回はスギ花粉が飛散する時期であるため
季節性アレルギー性鼻炎に関する
試験を見ていきます。

成人及び12歳以上の小児には1回75~600mgを
2又は4週間毎に皮下に注射します。
冷所にて保管し、使用20分前に室温に戻します。

1 回あたりの投与量並びに投与間隔は
初回投与前血清中総IgE 濃度及び体重に基づき
投与量換算表により設定するそうです。

基本的には対症療法となるため
花粉飛散シーズンのみで使用するそうです。

気管支喘息、特発性蕁麻疹では
自己注射も行えます。

作用機序においては
IgEと高親和性受容体(FcεRⅠ)の結合を阻害することで
好塩基球、マスト細胞などの炎症細胞の活性化を抑制します。

ノバルティスファーマ DR’s NET

2.どのような試験を経て承認されたか

季節性アレルギー性鼻炎では下記の試験が公表されています。

①国内第Ⅲ相比較試験 (既存治療効果不十分337例×75~600mg投与)
②国内第Ⅲ相比較試験 (中等又は重症100例×150㎎~375㎎投与)
③国内第Ⅲ相比較試験 (②と同条件308例×スプラタスト又はプラセボ1回    
                      100mg1日3回経口投与)
④国内第Ⅱ相比較試験 

患者重症度の違い、投与量の違いが
各試験で異なっていますね。

今回は添付文書に沿った使用例の
①第Ⅲ相比較試験についてみていこうと思います。

2-1.試験デザイン

本試験では
12歳から75歳未満の
既存治療でコントロール不十分な重症又は最重症
スギ花粉症患者337例
(オマリズマブ群162例,プラセボ群175例)
を対象としています

<試験デザイン>
多施設共同、ランダム化、二重盲検
プラセボ対照、並行群間比較

ノバルティスファーマ DR’s NET

併用薬として
全期間でフェキソフェナジン
3-4月でフルチカゾン点鼻薬を使用しています。

花粉症の飲み薬や点鼻薬を
併用しながら効果を見るのはなぜでしょうかね。

何もしていないプラセボ群と比較した方が
良い結果が出そうなのに。。。


2-2.有効性

<主要評価項目>
症状ピーク期のNasal Symptom Scoreの平均値
 くしゃみ、鼻汁、鼻閉の3項目の重症度に
 合わせた得点(0~4)を毎日付けて評価します。
 1日の合計は0~12点となります

点数が高いと重症度が
高いといった評価となっています。

症状ピーク期のNasal Symptom Scoreの平均値

プラセボと比較してー1.03程度と
有意差は出たと報告されています。

1点下がるとどのくらい症状に
影響が出ているかイメージしにくいですよね。

くしゃみであれば1日10回~5回程度の減少
鼻汁は10~5回程度噛む回数が減少
鼻閉時間の短縮
認められています。

スギ花粉飛散期のNasal Symptom Score*1の1日平均値の推移

飛散時期においても
継続してスコアの減少を
示す結果となっていますね。

目のかゆみのスコアにおいても
下記に示した通り
プラセボと比較して有意差が
出ている結果となっています。

症状ピーク期のOcular Symptom Score(眼症状重症度評価項目)の平均値

2-3.安全性

本試験で認められた副作用について以下に示します。

オマリズマブ群で1.2%
AST(GOT)増加2例、ALT(GPT)増加1例

プラセボ群で1.7%
注射部位疼痛、注射部位そう痒感、注射部位腫脹、口内炎が各1例

本試験では副作用はあまりなさそうですが
生物学的製剤ということもあり
注射部位の副作用は気になりそうですね。

気管支喘息や特発性蕁麻疹の
臨床試験では高い副作用発現率を示しています

ここに関しては
メーカーに問い合わせたところ
明確な理由はないとのことでした。

注射部位反応に対しての
対策例として下記に示します。

注射部位をあらかじめ冷やす
注射部位を指で圧迫し、感覚を鈍らせる
外用局所麻酔剤を使用する

3.いつき博士の考察

ゾレアは
投与してからピークまで
2~14日と時間がかかる
ため
体内には継続して残り、しっかり効果を
発揮する薬というイメージがありそうですね。

基本的には花粉飛散時期のみ使用
月に1,2回の通院と楽そうですね。

ゾレアの薬価は以下の通りになります。
75㎎:14,812円
150㎎:29,147円

やはり生物学的製剤ともなると
高額療養費制度を頼らないと
治療費を賄うのは大変そうですね。

議題とは逸れてしまいますが
ヒスタミンが放出されにくくなると聞くと
アトピー性皮膚炎のかゆみにも効くのでは?
といった疑問が生まれます。

保険適用外ではありますが
臨床で数例使用例があったそうです。

皮膚症状の改善が認められる例もあれば
TARC値、皮膚症状共に変化のない例もあり
症例、患者によるようでした。

冒頭でも述べたように
ゾレアは花粉症に使用する際は
対症療法となるため、使用時や止め時は
医師と患者さん毎に異なってきますね。

《参考文献》
ノバルティスファーマ DR’s NET
https://www.drs-net.novartis.co.jp/dr/products/product/xolair/pollinosis/clinical/
ゾレア IF
https://www.drs-net.novartis.co.jp/siteassets/common/pdf/xol/if/if_xol_202204.pdf