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勝利と育成の両立を求めて

選抜高校野球では、滋賀県勢初の決勝進出。連日『近江ブルー』がメディアに引っ張りだこなのが嬉しい。僕の現役時代は最大のライバルだった近江高校も、卒業後の今では素直に応援できている。勝っても3回戦止まりだった滋賀県のレベルや知名度。これらを底上げしてくれている近江には感謝しないといけない。

今回考えたいのが、3月30日(水)の浦和学院戦。


近江のエース山田(※敬称略)は5回にデッドボールを受ける。打席内で立ち上がれないほどの痛み。臨時代走が送られ、山田はベンチで治療を受ける。大丈夫かなと心配している間に近江の攻撃が終了。6回に入るまでにグランド整備が行われ、6回のマウンドには足を引きずりながら山田が出てきた。

足の痛みを我慢しながらも、結果的には11回・170球を投げた。山田の奮闘に応えるように、延長11回にキャッチャーの大橋がサヨナラ3ランHR。近江は決勝進出を決めた。


近江が勝ったことには賞賛が上がっている一方で、近江の監督である多賀監督の采配は物議をかもしている。

・山田は4試合連続完投
・山田は夏に投げすぎて肘を痛め、秋は未登板
・部員が数多くいるのに、山田以降の投手がいない
・足を痛めた時点で代えるべきだったのでは
・春は勝っても夏が心配

要は、山田の怪我をみんな心配しているのだ。ただでさえ、『4番・エース・キャプテン』という重責を背負わせていることで負担が大きい。そこに加えて甲子園では連投。多賀監督に非難が殺到するのも、分からなくはない。

ただし、僕からすると外野がとやかく言う問題ではないのかなと思う。多賀監督も代えようと思っていたが、山田が続投を志願。どちらが勝つか分からない接戦だったことも踏まえると、なかなか代えられない状況だった。



勝利と育成。


高校野球で最も難しいテーマ。勝利にこだわるのであれば、レギュラーメンバーだけに経験を積ませ、とにかく勝つ野球をすればいい。しかしながら、高校卒業後も野球を続ける選手のことを考えると、未来を見据えた育成もしていかなければいけない。

山田は今大会でも注目選手で、間違いなくプロに行けるポテンシャルがある選手。高校野球だけでなく、プロでも活躍してほしい。ファンがそう願うのは当然のことである。

僕たち野球ファンは、高校野球で大活躍してもプロで全く通用しない選手を見てきた。プロで活躍できない選手の大きな要因の1つに、学生時代の投げすぎが考えられる。だからこそ、山田の身体を酷使する多賀監督の采配に文句を言いたくなってしまう。


そうは言っても、山田のように全員が全員プロを目指しているわけではない。高校生活に人生の全てをかけている選手もいるだろう。目の前の勝利を追求することと、選手の将来も見据えた采配をすること。高校野球の監督に求められるレベルはかなり高い。


今日(31日)の決勝の相手は大阪桐蔭。大会前から優勝候補筆頭で、戦力が他校に比べてずば抜けている。近江と大阪桐蔭が普通の戦いをすれば、大阪桐蔭が優勝するだろう。

これが夏の大会なら選手全員が力を出し切って戦えばいい。しかし、今は春の大会。夏の予選を勝ち上がって、また甲子園に戻ってこないといけない。そうなった時、夏につなげるために“選抜決勝の舞台”をどのように使うのか。

山田の起用も含めて、多賀監督の采配に注目したい。



滋賀県民からすると、決勝まできてくれただけで十分。あとは山田を含めて近江ナインが、怪我なく笑顔で終わってくれたらそれでいい。滋賀県内でも強いのはわかっているから、夏にまた戻ってきてほしい。

勝利と育成の両立を追い求める高校野球。プロ野球とはまた違った楽しみがあって、野球ファンとしては胸熱な毎日を過ごせている。感謝。



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