『手裏剣戦隊ニンニンジャー』忍びその2「ラストニンジャになる!」評価:★
評価は、基本的に以下の10段階です。
・★★★★★…最高。大傑作。愛する。面白い超えて芸術の域(5点)。
・★★★★…大満足。傑作。大好き。凄く面白い(4点)
・★★★+…満足。名作。好き。かなり面白い(3.5点)
・★★★…平均より上。秀作。好感。中々面白い(3点)
・★★+…及第点。佳作。どちらかと云えば好き。まぁ面白い(2.5点)
・★★…普通。凡作。特に可もなく不可もなく(2点)
・★+微妙。凡作未満。カス。どちらかと云えば嫌い。つまらない(1.5点)
・★…難あり。駄作。カス以下。嫌悪感。かなりつまらない(1点)
・+…最低。大駄作。クズ。嫌い。マジでつまらない(0点)
・×…最悪。超駄作。ゴミ。大嫌い。つまらない以前の問題(-1点)
クロサキさんの第1・2話感想と合わせてお読みください。
<放送データ及び評価>
忍びその2「ラストニンジャになる!」2015年3月1日放送
脚本:下山健人
監督:中澤祥次郎
評価:★(1点)
視聴者が求めているのはあくまで「戦い」である
前回のラストで登場した伊賀崎好天(笹野高史)は、新道場にニンニンジャー達を連れて来ると、以下のような宣言をする。
伊賀崎好天「と言うわけで、最も忍術を学び、忍タリティーを高めた者にこそ、わしの持つ、『ラストニンジャ』の称号を与える!」
まず、脚本術以前に、この台詞は日本語の文法がおかしい。
「忍タリティー」って表現へのダメ出しは後にするが、この文章を読んだら誰でも判る通り、普通に考えて「こそ」は要らない。
「こそ」を入れる際は、普通に「〇〇こそ、××に相応しい」と云ったような言い方をしないと表現として不自然である。
訂正案を挙げるとすれば、普通に、
伊賀崎好天「と言うわけで、最も忍術を学び、忍タリティーを高めた者に、わしの持つ、『ラストニンジャ』の称号を与える!」
で、良いし、「こそ」を入れるならば、
伊賀崎好天「と言うわけで、最も忍術を学び、忍タリティーを高めた者にこそ、わしの持つ、『ラストニンジャ』の称号に相応しい!」
などと表現すべきところである。
日常生活で文法がおかしい言い方をしてしまうのは仕方ないと思うけど、事前に台詞を書いて準備する脚本において、このような文章を俳優さん達に読ませるというのは、明らかに脚本家のミスだと思っている。
また、ニンニンジャー達が『ラストニンジャ』の称号を得られるかどうかなんて、視聴者からすれば凄くどうでもいい要素でしかない。
下山さんや武部プロデューサーは、どうしてヒーローが怪人や怪獣と戦うテレビ番組が製作されているのか、そもそも分かっているのだろうか?
答えは簡単で、「視聴者は戦いを視たいから」だ。
ウルトラマンも仮面ライダーもスーパー戦隊も、メインはあくまでも戦いである。だから物語のクライマックスはヒーローとヴィランが戦うのだし、極端な言い方をすれば「戦いなき特撮番組」はヒーロー番組ではないのだ。
結果的に「怪獣や怪人と戦わないで決着が着く回」があること自体は別に構わないが、基本的に特撮番組は「戦いを見せる番組」である。
「戦いなき特撮番組」がもしあるとすれば、それは別のジャンルだろう。
専門的な言い方をすれば、「戦い以外は全てサブプロット」に過ぎない。
下山さんや武部さんは、ニンニンジャーが1年を通して「ラストニンジャ」に成れるのか否かを視聴者側に気にして欲しいのだろうが、残念ながらそんなことを気にするほど視聴者は暇ではない。
敵を倒すだとか、戦いに集中している方が視聴者としては話が分かり易いことを理解して欲しいものだ。
下山健人はアニメ脚本しか書けない
さて、ニンニンジャーの演技力の酷さは見ていて酷いものがあるのだが、それがどうして発生するのか2話目を見ていて分かった。
棒読みの原因は脚本である。
それは、下山さんの脚本がアニメキャラクターの台詞回しだからだ。
同じような症状はアニメを中心に活動している脚本家に多い。
例えば「Gガンダム」や「メダロット」などを担当した山口亮太さんは、アニメの方ではその実力を遺憾なく発揮して名作傑作を連発していたが、『未来戦隊タイムレンジャー』では正直実力を発揮出来ていなかった。
また、筆者が最も忌み嫌っている『獣拳戦隊ゲキレンジャー』で、メインライターを務めた横手美智子さんも、アニメの方では高く評価されている。
どうして、このようなことが発生してしまうのか?
それは実写とアニメとでは、演技の質が異なっているためだ。
岡田斗司夫さんが実際に解説しているが、日本アニメの場合、声優さんが声を大きく張り上げて極端に演じなければキャラクターが喋っているように視聴者は感じることが出来ない。そのため普段実写畑で活動している俳優やタレントが声を当てると、物凄く棒読みに感じてしまうのだ。
一方、実写畑でアニメ声優のような台詞回しをされたらオーバーアクトに感じられてしまうし、そもそも不自然だ。
分かり易いのが金田朋子さんで、あのアニメ声でキャラクターの声を当てている時はそれほど気にならないが、バラエティ番組などに出演して本人が喋っているのを見ると変人かふざけているようにしか見えない。
アンパンマン役を演じている戸田恵子さんは、アンパンマンの声質を実写ドラマや映画で発することは無い。『ガンダム』でマチルダを演じている時は普段の実写での演技とあまり声質が変わらないが、それは『ガンダム』がシリアスなストーリーであって、一般アニメのような極端な喋り方を求められていないからだ。
このように、実写とアニメとではテレビ文化が発達して演技の質が互いに大きく異なるものになってしまったので、脚本や台詞回しにしても実写ならOKだがアニメではダメ、逆にアニメではOKだが実写ではNGと云った状況が生まれるようになってしまった。
この違いに対応出来なかったため、山口亮太さんや横手美智子さん、下山健人さんなどのアニメ脚本家は実写畑で実力を発揮出来なかったのだ。
ニンニンジャーの5人が棒読みになってしまったのは本人達の経験不足もあるが、それ以上に実写の人間が演じることをまるで想定していないような台詞回ししか用意していない下山脚本の配慮の無さが、このような失態を招いているのである。
正直、この台本を渡されたら、俺が演んじても酷評されるだろう。
例えば、
レッド「おっしゃ、熱いぜ! 燃えてキターーーーーーーー!!!」
なんて台詞、恥ずかし過ぎてちゃんと言える方がどうかしている。
アニメだったら声優は顔を隠しているから大袈裟に叫べるだろうが、この台詞を自分の顔を晒しながら演じなければならない実写の役者さんはマジで可哀想にしか見えない。
つまらない脚本ほど変な表現を台詞に採用する
これはTwitterのスペースでも語ったことだが、つまらない作品の脚本は、普通の言葉を使えば良いのに何故か変な表現を使うことが多い。
例えば、ロックマンXシリーズでもかなりの駄作として評価されている『ロックマンX6』では、「お前をデリートしてやる!」って台詞が何故か出て来る。
「『デリート』って何だよ? 『お前を倒す』とか『処理してやる』とかで全然良いだろ」と言って、多くのフォロワーから賛同してもらった。
つまらないアニメや漫画、ゲームなどに多いのは、作品独自の変な表現を使いたがることである。それが作品を面白くする手段になっていない。
『特命戦隊ゴーバスターズ』でも、「お前をシャットダウンする!」などと言っていた。いや、普通に「倒す」で良いだろ。
そして、この作品にも『忍タリティー』と云う謎の言葉が出て来る。
『獣電戦隊キョウリュウジャー』の「ブレイブ」とでも言うのだろうか?
普通に「勇気」と言えって話だ。
当たり前だが、何故お芝居に作品独自の言葉が出て来るのかというと、それらが独自の要素になっているからに他ならない。
『チェンジマン』で「アースフォース」って言葉が出て来たり、『ジェットマン』には「バードニックウェーブ」って言葉が出て来る。『カーレンジャー』の「クルマジックパワー」、『ギンガマン』の「アース」、『タイムレンジャー』の「クロノ粒子」などは、現実にそういった物が無いから独自の名前を与えられるわけだ。
これはお芝居と云うよりも、一般常識の話である。
しかし『忍タリティー』なんて言葉を出すくらいなら、普通に「精神力」とか「メンタリティー」と言えば済む話だし、独自の表現を用いる必然性が全く無い。
必然性が無いだけならまだしも『忍タリティー』って表現が作品を面白くする要素にもなっていない。
ホワイト「って言うか、忍タリティーって何?」
これは番組の敗北宣言と云って差し支えない台詞だろう。
常識だが、特撮番組は基本的に子供が視聴する。
その子供向け番組の中で、社会で生きていくための一般教養にもならない台詞を平気で採用する時点で、視聴者の子供達のことを本当に考えているのだろうか? と凄く製作陣に不信感を抱いてしまう。
下山健人脚本の「悪口が基本の台詞回し」
筆者は下山さんの脚本の台詞回しが嫌いである。
それは、下山さんの脚本が他人への悪口や非難で構成されているからだ。
『獣拳戦隊ゲキレンジャー』での横手美智子さんの台詞回しと似ている。
とにかく、下山さんの台詞はキャラクターへの愛情が無くて、聞いていて不快になる台詞が多い。
〇ニンニンジャー忍びその2:嫌いな台詞その①
「ラストニンジャのわしが、お前達ひよっこに構っていられるか!」
「視聴者の私が、こんな下らない番組に構っていられるか!」と言われたら下山さんはどう思うだろうか聞いてみたい。
「構っていられないよ」なんて言われてしまうキャラクター達を好きになる視聴者は居ないと断言しておく。
こんな台詞言われて、演じる身にもなれって話である。
この凄く性格の悪い師匠キャラは、なんとなく『獣拳戦隊ゲキレンジャー』のマスターシャーフーを連想させる。
また、主人公達がやたら未熟であると強調される点は『天装戦隊ゴセイジャー』を連想する。
勿論、全く褒めていない。
〇ニンニンジャー忍びその2:嫌いな台詞その②
手裏剣忍法を基礎の授業を始める段階に入って、
レッド「親父、何やってんだよ?」
ボケの父親に対する息子のツッコミのつもりなんだろうが、親戚連中も皆集まっている中で授業する側の父親の身にもなれよと思った。
すると、「忍術出来ないじゃん」ってレッドは言っていたが、何故じいさんと孫は忍術が使えて、父親は忍術が出来ない設定なのかも視聴者には全く理解出来ない。
なんでこんな設定にしたのか?
何故父親は忍術が使えないのか?
〇ニンニンジャー忍びその2:嫌いな台詞その③
ブルー「手裏剣忍法なんてイーズィーだな」
この台詞を聴いて、レッドが怒り出す展開になるのは分かるが、「週刊少年ジャンプ」で10週で打ち切りを喰らった『TOKYO WONDER BOYS』での失敗『いったん下げると上げるのは難しい』をまた繰り返している。
あのなぁ、キャラクターを好きになってもらわないとビジネスにはならないよ!
〇ニンニンジャー忍びその2:嫌いな台詞その④
ブルー「忍者の末裔だからやるしかないことは分かっている。まぁ、魅力は感じないけどな」
はい、私もこの番組に魅力は感じません!(笑)
あのさぁ、普通に考えて、番組の設定に「魅力を感じない」なんて台詞、キャラクターに言わせちゃダメだろ……
〇ニンニンジャー忍びその2:嫌いな台詞その⑤
ブルー「相変わらず毒舌だな、カスミ姐は」
カスミ姐が何故レッドを買っているのか全く理解出来ない。
しかし自分の方が毒舌なのに、それほど毒舌でない親戚に毒舌呼ばわり。
すみません、こんなに落とし過ぎてはブルーの子を好きになれません。
ヒカルさんのYoutubeでも見て、勉強し直してください。
〇ニンニンジャー忍びその2:嫌いな台詞その⑥
レッド「お前が興味無いのは勝手だ。でも、偉そうなことを言うなら、じいちゃんを超えてから言いやがれ! って言うか、その前に俺に勝ってみろ」
下山さん、これはいじめの加害者の台詞でしょうか?
この台詞の前の「俺、本番に強いタイプだから」もかなり意味不明だが、この台詞への批判はクロサキさんが書いているので譲る。
何故、筆者がこの台詞を嫌うのかと云うと、「脚本家になっている自分=下山健人」の思い上がりが露骨に出ている台詞だからだ。
恐らく下山さんもネット上に書かれている自分の脚本への批判を読んで、「偉そうなことを言うなら、プロの脚本家になってみろ(笑)」などと、酒の席などで能書き垂れて愚痴っているんだろうなぁ……ってのが目に浮かんだからだ。
これは下山さんと云うより、吉本のお笑い芸人にこういう考えの持ち主が多く、「批判するならお前がやってみろ!」などと言い返す人が多かった。例えば自分達が撮った映画を批難された松本人志さんや品川庄司の品川さんなどは、「撮ってない奴に言われたくない」とか「一秒だって映画を撮ったことがないくせに!」などと、インタビューや自分の映画作品の台詞などで宣わっていて、実に無様であった。
「お前がやってみろ!」と言うのは、プロ失格の禁句である。
何故なら、人間は映画を取る義務もなければ、脚本を書く義務も無いし、他人を笑わせる義務も無いからだ。職業選択の自由で自分の意志で今の仕事を選んでおいて、他人に自分の仕事は大変だからやってみろなどと言い返す連中は、その時点で自らの責任を放棄しているとしか言いようがない。
これは全世界の映画監督や脚本家、小説家、お笑い芸人やタレントなど、全員に断言しておく。
他人や素人から批判されたくなければ、最初からプロになるな。
何故なら、お前達の顧客は全員その道の素人だからだ。
そして客はプロの苦労を理解しなければならない義務など無い。
「批判するな」と言い返すってことは、逆に言えば「他人から批判されるのが怖い」と弱点を打ち明けてしまっているようなものである。
そういう意味で、このようなブルーからの批判を黙らせることで封じようとしたレッドの印象も、筆者の中では最悪となってしまった。
レッドと云うより、こういう台詞を書く下山健人さんが好きになれない。
そういう意味で筆者が尊敬するのは、プロレスラーの鈴木みのる選手だ。
鈴木みのる選手は著書『鈴木みのるの独り言』で、観戦マナーについて、プロレスラーとして次のような持論を語っている。
「悪質なヤジが飛ぶのは、黙らせられないレスラーのせい」
これこそ、本当のプロフェッショナルの言葉ではないだろうか?
「悪質な批判が書かれるのは、黙らせられない脚本家のせい」と下山さんは言えるようになって欲しい。
評価は、★。
良い所は巨大戦で、換装型のロボットがドラゴンになったのはカッコ良くて好きだった。
はっきり言って、戦闘シーン以外で見るべきところはなかった。
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