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【クローン羊ドリー論文資料】フォーラムの大阪会場での資料

ひさしぶりに、学術に走ります。

二十年前に行われたフォーラムの大阪会場に行って直に話を聞きました。その内容の詳しいことは当時の読売新聞にでています。

パネルディスカッションの内容が面白いので覚え書きとして残しておきます。これも三本目の論文の資料になります。


内容概略
クローン羊フォーラム
「ドリー誕生~生命科学の行方」
大阪会場プログラム
第1部 基調講演と解説。
解説 入谷明氏
基調講演 イアン・ウィルムット博士
第二部 パネルディスカッション
パネリスト イアン・ウィルムット博士
入谷明氏
中村桂子氏
米本昌平氏
コーディネーター松本弘・読売新聞大阪本社科学部長


パネルディスカッション

パネルディスカッションには入る前にパネリストの方々がそれぞれの見解を述べられました。

入谷(以下、入):クローン技術は大発見だ。応用としては、動物生産など食糧政策で使っていきたい技術だ。ただ、繁殖ばかりでは遺伝子の多様性がなくなっていくので、一部を繁殖に使用し、多くはすぐに食べてしまうべきだ。安全かどうかは遺伝子をいじっているわけではないので心配はない。一般にも受け入れられやすいのではないか。

中村(以下、中):三つことについて。一つ目は技術。21世紀は生き物を基本にする社会。生き物、自分のことを知ってある種の操作をする時代である。生きていく基本。二つ目はクローン技術について。この技術の特徴は出来上がるのが個体ということ。細胞などを見ていた時代では生き物は同じという先入観があった。また細胞などは目に見えないものだったが、今度は目に見えるものとして認識するようになった事は大きい。三つ目はかなりの部分は自然にお任せするということ。すべてを制御しているわけではない。

米本(以下、米):この技術に対しては不思議に思う。どう難しかったかを聞きたい。先進国では生物をどういうものとしてどのように解釈してきたかが、技術を受け入れるか否かに現れてきているのでは。欧、米、日では一応規制されているがその背景や社会的気分が違う。生命を論理化しない社会(日本)とキリスト教社会の違いがある。日本は生命を言葉にしなくてはいけない時代にきている。

パネリストからウィルムット博士への質問
入:イギリスでは技術をどう応用展開するか?

ウィルムット(以下、ウ):クローン技術はコストが高く、「牛が供給過剰な欧州では増産という目的では使えない。」この技術でどんな悪影響がでるのかという問題があり、倫理的に使用していいのかどうかという問題がある。まず、バイオテクノロジーで応用、次に畜産で応用されると思う。イギリス社会では動物が死んでもそれ以外に薬品が入手できないのならこの技術を応用してもよいという意見が占めている。

中:いつできるかわからない中でどういう気持ちで取り組んできたか。(米本氏も同様の質問)

ウ:突然ドリーが生まれたのではない。日本をはじめとするこの分野の研究がベースになっている。水面下での研究知識が蓄積があった。
「ロスリンはラッキーだった。正しい場所で正しい時にクローン羊が生まれたということだと思う。(笑)」

実際のパネルディスカッションの前に今井裕教授が日本のクローン研究の現状についてコメントされました。冗談(?)かどうかわからないウィルムット博士の突っ込みもありました。

今井(以下、今):体細胞からクローンができるのはほぼ間違いない。「現在体細胞クローン牛を妊娠している牛が全国で約30頭いる」。「遺伝子組み換え動物への応用はまだまだという段階で、」家畜改良のキィワードとして注目。これから研究していかなくてはならない。

ウ:妊娠状態や代理母のモニターや触診? 胎仔の死んだケースは?

今:胎仔の中には60日で死ぬものがある。90日、100日で死ぬものがある。

ウ:生まれてから数えて下さい。

実際のパネルディスカッション
司会者(以下、司):ハワイ大学でマウスのクローンに成功した。マウスでできるようになると研究に大変役に立つのではないか。

中:実験動物を扱っている人にとっては大きい。遺伝子を全部持っているけど元に戻らないという安定性が「卵に入れただけで簡単に戻ることを今回の技術が教えてくれた」。過程に大きな意味があることを教えてくれた。マウスでおさえるのは研究として面白い。

司:入谷先生が解説の中で絶滅しかかった動物の保存やすでに絶滅した動物の復元に役に立つのではと話された点をもう少し詳しく。

入:先日、上野動物園のゴリラが死んだとき、組織を凍結保存しておいてほしいと頼んだ。精子を採取するのが第一だが、高齢で状態が悪かった。こういう場合に今の技術では無理だが、将来動物の発生源になるのではないか。一方で、マンモス計画がはじまっている。私も死にそうになりながらシベリアに行った。もう行きたくないが(笑)。体細胞の核は安定が悪いが、生殖細胞は強いので使えるかも知れない。

司:最後に人への応用について考えたい。

米:世代の違う双子ができるだけで、人間を作る必要はない。目的がない。子供のアイデンティティが揺らぐ。

入:文部省の通達もあるし(一同笑)、ディスカッションする必要はない。考えるに値しない。

中:すぐクリントン大統領がが対応したが、考えたのは人クローンについてだった。何故すぐ人と思うのか。遺伝子決定論的な考え方を脱却しなくてはならない。この技術は「人と動物で明確な区別をしなければならない」が、人間中心だ。人間にはやってはいけないが、動物ならよいという勝手な区切りが日本人の心の中に入ってくる。「手放しで喜んでいられない」。生き物としての生き方を考えなくてはならない。

米:欧はどこから人間が始まるかを延々と考え続けてきた。90年代初頭に規制を作った直後にクローン技術ができた。法律の運営の在り方として議論がなされている。米は宗教の自由の国で、いろんな価値観がある。人の始まりを行政が決められないので連邦助成を禁止しているだけだ。禁止の理由を安全性を最大の理由として価値に踏み込まなかった。欧米には神を冒涜する。性交渉を介さない生殖はアダムとイブの時と受胎告知だけと言う直感的雰囲気がある。日は生命の論理化の必要がなかった。反対の感情を掘り起こす論理を探さなくては外に向けて発信できない。(日本の)世界観を言語化するのは新しい挑戦だ。

中:クローンに対するだけでなく日本人の共通として「不自然」という価値観があるのではないか。

以上、ディスカッションはこの中村氏の発言に米本氏がテキストを持つ国とそうでない国についての指摘をなされたところで終わりとなりました。最後に質疑応答があってこのフォーラムは終わりました。


院に入ってから行ったのは覚えているのですが、何年に行ったかは書いてなくて覚えていません。スクラップブックが残っていれば日付がわかるでしょう。七月二十四日に行ったこと。八月二日に読売新聞に正しい記事がでたことだけは記載されていました。当時の文献表もサイトにしていたおかげで残っていました。ほぼ、絶版です。売り飛ばしたので私ももっていません。今集めた資料も文献表をそのうち作りたいと思います。今日は登販の勉強でもしておとなしくしてます。(またも一睡もできず、欠勤)創作物はお休みです。


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