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【連載小説】ファンタジー恋愛小説:風響の守護者と見習い賢者の妹 第三十四話 大海原へ~大人の恋と若者の恋

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前話

 一行はつかの間の休息を得るとセイロン船長の船「セイレン・ウィスパー」に乗ってエンシャントウッドに向かっていた。リリアーナは甲板に上がって、波を見ている。さっきから騒々しい。
「あ。おにーちゃん! 何かが泳いでる! 何?」
 知るか、と言いたいが可愛い妹だ。そうだな、と肯く。
「もう。お兄ちゃんは世間知らずなんだから。セイレーン」
「はい。あれはナヴィラードという生き物です。海にいますが、元は同じ種族だったと伝えられています」
「同じ? あのナヴィラードさんが?」
 もう。ナヴィラードさんだ。乙女の心はセイレンに一直線だ。まず兄に聞いても兄はろくに答えられない。もう少し地理を勉強すべきだった、と後悔してももう遅い。
「リリアーナ。セイレンに首ったけね」
「それだけを言いに来たのか?」
「もう!」
 ユレーネがレオポルトの足を踏んづける。
「少しは察しなさいよ」
「なにが?」
「知らない!」

 せっかくロマンティックな展開を期待していたのに。
 
 妻としてはこの船の旅は新婚旅行のような物だ。行く間もなくこの旅となってしまった。ユレーネもまだ新婚夫婦の新妻である。それぐらいは期待している。ところが夫の方は憑き物が落ちたかのように普通だ。ドキドキもしないのだろうか、とつくづく思いながらリリアーナとセイレンの元へ行く。
「どの子がナヴィラードなの? あら。たくさんいるのね」
「おねーちゃん。ナヴィラード知っているの?」
「ええ。私はお勉強をサボらなかったから、ね」
 半分は新夫への当てつけに言う。
「あら。あの子白いナヴィラードじゃないの? 特にあの逆さ三日月の力が強くてある魔法の力が強くなるそうよ」
「あ! 水の結晶が!」
 リリアーナの驚きの声に慌てて近寄るレオポルトである。
「どうした!?」
「おにーちゃん。水の結晶のエーテルミズキが反応して周りの水が踊ったりしてるの。ほら」
 リリアーナの掌にある水の結晶の中にあるエーテルミズキという花が白く発光し、周りを固めていた水が渦を巻いたり波打ったりする。レオポルトはしばらく考え込むとそれをリリアーナの両手を重ねさせる。
「これはリリアーナの大事な宝物だ。セイレンと一緒に守っていけ。いつか役に立つことがあるかもしれない。俺にはまだその現象が何かわからないが。ユレーネ。察しの悪い夫すまん。考え事をすると戻ってこれなくなる。俺の悪い癖だ」
「いいわよ。こんな大切な旅の中に新婚旅行に憧れた私が悪いのよ」
「そーいえば、おにーちゃんとおねーちゃん。新婚旅行行ってなかったね。カールは行ってるのに」
「あいつは有給休暇で行ったんだ。俺とユレーネに有給休暇はないからな」
「おにいちゃん。王様するのは良いけれど、おねえちゃんも大事にして。奥さんでしょ?」
「ああ。わかってる。こちらへ。ユレーネ」
「レオ?」
「リリアーナの言うとおりだ。ユレーネの方が大事だ」
「レオ……」
 大人の恋がどうなるかは知ってる者は知っている。知らない者は知らなくていい。ということで、大人と若者の恋が、エンシャントウッドにたどり着く前に繰り広げられたのだった。

 


あとがき
ちょっと匂わせストーリーで終わらせてます。あとはご想像におまかせして。こちらもイルカと入れていたのですが、どうもここまでファンタジーしているのにイルカはないか、と代替動物をChatGPTさんに考えてもらって一つに決めました。で、設定を生かし切れてはいないのですが、というかあとで打ち込んで決定したもので。と。ミスタッチが行ってきました。時間切れです。
星彩の運命と情熱で力尽きました。

というわけで寝ます。予約配信にてお届けします。
ここまで読んで下さってありがとうございました。

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