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【連載小説】恋愛ファンタジー小説:最後の眠り姫(84)

前話

「お父様。お母様。キアラを……。キアラをよろしくお願いします」
 片時でも別れたくない娘のようなキアラを預ける。
「そんな目をしなくても無事に帰ってこれますよ」
 お母様が抱きしめる。
「はい。未来の王妃がめそめそしてはだめですね」
 にじんだ涙を拭いてにっこり笑う。
「そう。その笑顔よ。あなたの笑顔は誰もがうれしくなる笑顔。大事になさい」
「俺は独占したいけどね」
「クルト!」
「兄上!」
 周りの者で私の笑顔を取り合う。
「もう。私の笑顔はみんなのものよ。取り合わないで。クルトにはとびっきりの笑みを見せてるんだから独占しないの」
「ずるーい。兄上。僕も見たいー」
「だめー」
 兄弟のじゃれあいをカロリーネお姉様が穏やかに見つめる。こんなに穏やかな方だったかしら? まるで母親のような……。そこではっとして後ろのお母様を見る。
「ええ。カロリーネを頼みましたよ」
 それだけで女性の事情は呑み込めた。今回、危ないところに行くのにより一層注意しないとだめなのね。
 東、東と言ってるけれども正式国名は違う。「東神聖ボーデン帝国」という。私たちの国は「西大ボーデン王国」。大はつくけれど領地は小さい。もともと東も西も一緒の帝国だった。けれども結婚できない神職者が妻をとり、子に後を継がせ、統治者を帝王と教皇を兼ねるという統治方法をはじめ、それに反対した、クルトの祖先は教皇は妻も娶らない、子も作らないというあくまでも宗教上のトップとして教皇を据えた。そして統治の実権は国王がつかさどる。教皇も力を持っているけれども政権に口出しはできないのだ。ただし、国内の宗教行事では教皇が頂上を極める位置にいる。ご神託は教皇しかわからないのが私たちの国。このご神託だけは王権を飛び越えて権力を持つ。それがカロリーネお姉様の縁談を壊した力。使っている言語も字も少しずつ離れてきているけれど基本は一緒。でも、神職者が妻帯して子供も枢機卿として権力をふるってるなんて気持ち悪いわ。
「エミーリエ。その気持ちだけは祖国に置いておいて。危険極まりないよ」
 前の席で車を運転しているクルトが言う。
「クルト。運転して疲れないの?」
 運転専門にする人もいるのに。
「東に行くからね。自分でハンドル持ってないと心配なんだよ。あと、壊れたら直せるし」
「え? クルトそんなに自動車に詳しいの?」
 意外な事実に驚く。
「俺は内向きだけの王子じゃないよ。自動車整備士の資格をもってるんだ。機械は好きでね」
 頬を汚して車の修理をしているクルトの姿がぽん、と浮かぶ。かっこいい。
「姉上。頬が落ちてます」
「もうっ。新婚旅行じゃないじゃないの。小姑がいるなんて」
 そう。この車にはフリーデとヴィルヘルムも乗っている。
「新婚ではありません。婚前旅行です。ですから、妊娠だけはおさけください」
「フリーデ!!」
 恥ずかしくて声をあげてしまう。妊娠なんて、結婚からじゃないの。婚礼はまだよ。
「エミーリエ様。これぐらいで恥ずかしがっては未来の王妃にはなれませんよ。お世継ぎを望まれるのですから」
 いやに冷静なフリーデが怖い。自分の時になったら大慌てするのに。
「まぁ。フリーデと僕の婚礼は山ほど甥や姪がいるころだからね」
「ヴィー。魔力で成長できないの?」
「そんなことしたら魔力なくなっちゃうよ」
「いいじゃないの」
「それはそれで姉上と兄上をお支えするうえで不都合なの。フリーデも待ってくれてるし」
「むぅ」
「エミーリエ。そんなに感情的になってたら疲れるよ。フリーデによっかかって少し眠ったほうがいい。遠出は久しぶりだから気が高ぶってるんだろうし」
「そうね。フリーデ肩をかして」
「はい。どうぞ。少し肩が冷えますね。布をかけましょう」
 ふぁさ、と薄い毛布が掛けられ、私は姉と慕うフリーデの肩にちょこんと頭を乗せる。すぐに眠気はやってきた。

 キアラ、どうしてるかしら。

 眠りに落ちる手前で愛猫を思い出して、私は眠りに落ちていった。


あとがき
ようやく更新です。しかし、ここで設定ていたことをすっかり忘れていた。書き出していたけれど修正せねば。あちこちに保存されているのでどこが最新かわからず困ります。アプリを押すと出るけれど格納されているところを確認して二重にバックアップ。そして、買わなければいけないものを思い出し、またスーパーへ。寒いよー。でもリンスとボディソープがない。今日と言ってる場合ではなかった。しかし、夕食の手間はないので、行ってきます。はぁ~。とんでもないことになってます。天使が舞い降りた。早すぎる展開に本来の婚礼が~~~~。と。ネタはそのうちに明らかになります。天使だけでもわかりますよね。一線超えてるんだから。では買い物に~。

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