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【千字掌編】土曜夜の初参りは初デートで……。(土曜の夜には……。#27)

「おばさん。何もこんな年末に、しかも神社の茶屋でお見合いって……。強引すぎるわよ」
「なかなか行かないあなたが悪いのよ。神社だから縁結びになるわよ」
 そこで、晶紀は下品な声を出す。
「ちょっと。白無垢で神道の結婚式にしないでしょうね。ウェディングドレス着たかったんだから」
「それもいいわね! そうね。そうしましょ!」
「おばさん!」
 晶紀が抗議の声を上げると伯母がしっと口を閉じさせる。
「いらっしゃったわ。ほら、ご挨拶を」
 せかされて立ち上がってお辞儀する。
「初めまして。高島晶紀と申します。年末にすみません」
「あらー。素敵なお嬢さんね。雅樹さん、一緒にお参りしていらっしゃい」

 え? もう?

「すみません。母がせっかちで」
「いえ。では参りましょうか」
 私は着慣れない着物を着て下駄でカランコロンと本殿に向かう。隣にお見合い相手が並んで歩いている。歩調を合わせてくれているみたい。優しいのね。いやいや、餌のいらない猫を飼ってるかもよ?
 そのままに見たい気持ちと疑う気持ちが相反する。
 ほどなくして本殿につく。
 鐘を鳴らして、柏手やらお辞儀やらして祈る。だけど、私はこのきつい着物を脱ぎたい、早く帰らせて! という祈りしかできなかった。着付けができないのに着物でお見合いって矛盾だわ。ひとり上の空でいると遠いところから声が入ってくる。
「あ。雅樹さん。何か?」
「熱心に祈られてるからどんなお願いかな? と思って」
 苦笑いしかでない。
「もう、年末のお参りすんじゃいましたね」
 苦し紛れに言う。
「初参り、一緒に行きませんか?」
「え?!」
「初デートということで」
「は、初デート!」
「おいやですか?」
「い、いえ。私の方こそ、あきれられたかと」
「それまたどうして」
「上の空でして。着付けがきついんです」
 恥ずかし気に言うと彼は笑い出した。
「現代っ子ですね。じゃ、初参りは着物はやめましょう。ただ、暖かい格好をしてくださいね」
「はい!」
 現金なもので、失恋して何年もたったお見合いで妙にトキメク。恋は嫌だったんじゃないjの? ううん。結婚なんてもう遺物だと思ってた。もう独身で生きていくと。
「よかった」
 彼は笑顔になると転びそうになった私の手を取る。
「やはり。着物は封印ですね」
「すみません」
「いいんですよ。将棋でも指すのかとでもいうところですから。じゃ、元日の夜にお迎えにあがります」
「夜?」
「その方がイベントをしていてデートにピッタリなんです」
「どんなイベントですか?」
「それは見てのお楽しみ」
「ええー。内緒にしないでくださいよー」
 会話が弾む。このお見合いめっけもん? あんなに恋愛に必死だったのに。

 久しぶりのデート。うきうきしてくる。ほんと。現金ね。ひとりで百面相をしてたとあとで彼は笑っていた。

 神社のお見合いは見事花開いた。年神様の年玉かもね。そう後で言うと俳句好きの彼は一笑破顔したのだった。


あとがき
白無垢がGPTに通用しなかった。CANVAにもない。花嫁とか白い花嫁姿でやっとこの画像を掘り当てました。あとはデザイン。最初はなぜかGPTが幅広い画像が出来ず、添付して同じサイズでと書いたのになぜかできなかった。これからそうだと嫌だな。とりあえず、今夜はこの更新で許してください。特典記事が書けなかった。明日だー。今日は疲れました。はい。エジプトだけ見て寝ます。コメント見てこようっと。

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