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【オリジナル短編よみきり】恋が運命の歯車を回し始める。

 ぽとり、と手のひらに滴が落ちる。

 どうしたの? 何が悲しいの?

 どこかで見たような顔に隼は考え込む。

 君の名前は……?

「美夕」
 ぽっと口から名前が出て隼は飛び起きた。
「今世でも出会えるの?」
 この間、あゆととうまが出会ったとは聞いている。フルメンバーか?
 ただ、自分はこの吉野神社の禰宜であるが、血はひいていない。子に恵まれなかった両親が里親になっただけだ。その後に順二が生まれた。今、中学生だ。無邪気に遊んでいる。両親は自分と弟を置いて早くに他界してしまった。昔居た祖父のような人物もいない。隼は神道の学べる大学を出てきたばかりだ。順二はその間、親戚の中をたらい回しにされていたらしい。かわいそうに。だが、どちらかがこの神社を引き継がねばならない。致し方なかったのだろうか。
「兄貴。どうしたの? お箸が全然進んでないよ」
 やっと実家に帰った弟は明るかった。自分の身の処遇に不満も持っていなかった。まるで、それが当たり前というように。
「ああ。じゅん。悪い悪い。兄ちゃん、寝ぼけてて」
「どうせ、エッチな夢でもみてたんじゃないのぉ~」
 どきり、とした。あの女性は過去世で妻だった。ある意味エッチだ。子供産んでるんだから。
「子供はそんなこと考えるんじゃない。修行してこい!」
「はあい」
 なんの文句も言わず食器を持って行く。この実家に帰って自分と暮らせるだけでいいのだ。弟は。
「順二……。悪い」
 一言謝ると聞こえていないが、自分も食器を持って行った。

 本家からの通達で宝物庫の目録を一心に作っていた隼は、弟のどでかい声で慌ててひっくり返った。
「兄ちゃんに会いたいって人がきてるよ。女の人!」
 冷やかし口調で言って順二は外へ飛び出る。

 まさかのまさか……?

 胸の高まりを抑えて外へ出れば、まさにその人だった。
「美夕……!」
「純! やっぱりここだったのね。以前来たときは知らない人しか居なくて……」
「大学で寮生活だったんだよ。よかった。今度も会えた。もう離さないからね」
 隼は美夕をぎゅっと抱きしめる。花のシャンプーの香りが鼻をくすぐる。
「純。今はどんな字を書いてどう読むの?」
 腕の中から抜け出た美夕が聞く。
「私は美優でみゆともみゆうとも発音できるわ。純は?」
「これが字が変わっただけなんだよ。なんだろうな、この変な符号は。ハヤブサって書いて「じゅん」。弟は「順二」なんだ。じゅんが続いてややこしいよね」
 青年らしい晴れやかな顔をして言う隼に美優はにっこり笑う。
「私、また天涯孤独なの。おしかけ女房していいかしら?」
「もちろん。これで男料理から解放されるー」
「まぁ。私は飯炊き女じゃないわよ」
「わかってる。ただ、家事が尋常に多くて。神社自体が手入れするところが多くてね。その前に本家から通達も来てるし」
「本家? また、あゆととうま?」
「どうもうまくいってないらしい。なんでも流れてきた話では当麻がというか当主様が別れ話を切り出したらしい。それで驚いたあゆが飛び出て交通事故に。一時は意識不明だったそうだよ。ここは末家だから容易に見に行けないけれど。フルメンバーかはまだわからないけれど、これから大変な事になりそうだよ」
「そう。じゃ、順二君。台所の使い方おしえてくれる?」
「おい! なんで僕じゃないの!」
「まずは家族から」
 にっこり笑って美優は神社の中に入ってくる。運命というものがあるなら
、どうしてこんなにうまくいくのだろう。神というものがあるのならそれが取り計らっているのだろうか。この、段取りを仕組んだ形ないものに感謝しながら、隼も後をついて行った。
 運命の歯車はここでも回り始めたのだった。


あとがき
やたら、恋愛ものが書きたくなって書いたら、純側の話に。美優ってあまりつめて考えたことはないのよね。今回を機に詰め込んでみようかな。もともとこれは二次のオリジナル人間側の話です。純以外。隼と変えているのでその背景は相当のオタクでないとわからないと思いますが。論文の方は本が続々と届いててんやわんやです。現在生物学の方の話を読んでいます。その前は物理。登販の試験勉強も漢検も放り出して読んでました。だから、記事埋もれてるのよね。ゼルマ書きたいー。今日はゆっくりして、明日からまた野球を見るかラジオかけながらかして書いてみようかな。夢の木というものがアイテムとして出てきました。どこまで広がるゼルマちゃん。しかし、グーグルのゼルマのアドレスのところに届くメール、日本語でしてほしい。よくある海外の名前のせいか英語です。つたない翻訳能力をつかって読むところです。英語嫌いー。エッセイの勉強中はまた後で。洗い物が待ってます。

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