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【連載小説】恋愛ファンタジー小説:最後の眠り姫(91)

「きれいな色だね」

「クルト!」

 ドアのあたりで普段着に着替えたクルトが待っていた。フリーデは軽く会釈してヴィルヘルムの元へ帰る。

「奇麗でしょ? あまり着ない色だけど、気分が上がるわ」

「いいね。そういうの。さぁ。行こう。奥さん」

 クルトが手を差し伸べる。優しいまなざしにうれしくなって手を握った。

「朝食を終えたら、デートしよう。見せたいものがあるんだ」

「見せたいもの?」

「それは見てのお楽しみ。さぁ、着いたよ」

「あら。あっという間に着いちゃったのね」

 デート代わりの散歩が終わって私は残念に思う。

「大丈夫。ちゃんとデートするから」

「ありがとう。旦那様」

「いいね。それ」

 二人の世界に入りかけるとヴィルヘルムのお腹が空いたコールが割り込んでくる。

「もう。お邪魔虫ね」

「虫でもなんでもなるよ。姉上。もうお腹と背中がくっつくよ」

「はいはい。みんなでいただきましょう。あら。いつもの食事ね」

 つつましやかな朝食に祖国となる国を思い出す。

「私がお願いしたの。贅沢な食事は高いからやめて、って。事務方の給料じゃ、豪華な食事は無駄よ」

 もう、役人の奥方様になったカロリーネお姉様が言う。すっかりなりきちゃってるわ。

「姉上。旅先ぐらいいいのに。期待してたのに~。ここの料理はおいしんだよ。エミーリエは昨日の夕食を食べていないんだ。せめて朝食ぐらい……」

「クルト。いいから。恥ずかしいこと言わないで」

「恥ずかしいの?」

「これじゃ、お腹を空かせてご飯~と叫んでるヴィーといっしょだわ。豪華でも質素でも食事は食事よ。はい。いただきまーす」

 全員の視線が集まっているのでさっさと朝食を食べだす。いつもの朝のルーティンだ。出ているものも大差はない。

「ごめんね。エミーリエ。姉上がすっかり役人の奥さんになったばっかりに、いつもと同じ食事だなんて……」

 クルトがパンを手に取りながら謝る。

「旅行じゃないんですもの。仕方ないわ。出費は少ない方がいいのよ」

 そう言ってにっこり笑うとクルトの動きが止まる。

「クルト?」

「あ。いや、その……。エミーリエの笑顔が眩しくて」

「クルト……。笑顔だけでそんな事言ってくれるの?」

 二人だけの世界になりつつあるところにお姉様の声が割り込む。

「そこ。二人だけになるんじゃないのよ。わ・た・しの新婚旅行よ」

「あ」

 二人で顔を見合わせる。

「お姉様ごめんなさいー」

「姉上すまない」

「さっさと食べてクルトはエミーリエとデートでもしてきなさい。私たちも観光に行くから」

「観光……」

 私は、不特定多数の人込みを想像して顔を曇らせる。

「大丈夫。そんなに人のいるところへはいかないから」

「クルト?」

 真意がわからなくて聞き返す。

「とりあえず。朝ごはんだよ。はい。あーんして」

「そこ! 婚前旅行よ!!」

「ちぇっ」

 カロリーネお姉様たち以上の熱々ぶりの私たちにみんなが笑ってクルトが拗ねる。どんなデートかしら。私の心は浮き立っていた。


あとがき
なんと。バッテリーが。切れかけ。昨日入れたのに。また電源切られてた。これ更新して一度切ります。すみませんー。企画も昨日画像作ってそのままでした。

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