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【連載小説】恋愛ファンタジー小説:緑の魔法と恋の奇跡 第二十話 エレナ・シルヴィアへの翡翠のネックレス

前話

「ええい。この細いヒモはどうやっても結ばれたくないようだな。大人しくしろっ」
 村はずれでライヴァンはリボンと闘っていた。そこへ、エレナ・シルヴィアに妖精の姫の自明の理を思い出させた老婆がきた。
「お前さん。何と闘っておるのじゃ?」
「ばぁさん。見ればわかるだろ。リボンと闘ってるんだ。リボンと」
「のようだねぇ。一途なお前さんにはこれをやろう。これはたった一つの願いを叶える小瓶じゃ。だが、自分の血を入れて相手にのませないと行けない。それができるのなら渡そう」
「飲ませる? そう言ったか?」
 ああ、と何でもないかのように老婆は答える。
「そんな気持ちの悪いクスリどうするんだ」
「いざとなるとわかるさ。ほれ」
 ライヴァンは小瓶を投げられて慌てて受け取る。
「乱暴な……! え? ばぁさん?」
 そこにはもうライヴァン一人しかいなかった。だが、その証拠はこの小瓶とリボンのかかった袋が説明していた。だが、脳天気なライヴァンはすぐにこのプレゼントをエレナ・シルヴィアに渡すことで頭がいっぱいになった。
「シルヴィー!」
 まだ目の前にもいないのにもかかわらずライヴァンは名を呼びながら宿屋へと駆けだしたのだった。

 宿屋に駆け込んでライヴァンははっと我に返った。そういえば、もう夕食時だった。酒場に顔を出すとエレナ・シルヴィアとヴァレリアンが軽い会話をしていた。突然、ヴァレリアンの前で渡すのもどうかと思ったライヴァンは包みを懐に隠した。声を整えながら近づいていく。
「やぁ。もう夕食時かい?」
「どこに行ってたの? クリスタリウム・ペイクの話もしないと行けないのに」
 それが口実というのはライヴァンによくわかった。エレナ・シルヴィアが自己中心的に不機嫌になると口がとがるのだ。その可愛らしい唇にキスしたいが、あえてこらえる。そんな暴挙にでればエレナ・シルヴィアに殺される、か振られるだろう。ライヴァンは未だエレナ・シルヴィアが自分に恋をしているとはまったく感じ取ってもいなかった。ライヴァンはエレナ・シルヴィアの顔がよく見える向かい側に座る。この顔がプレゼントでどう変わるか考える。いつのまにかまた思考の泉に落ちていた。
「ライ。食べないの?」
 またも不機嫌なエレナ・シルヴィアの声にはっと我に返ると食事が目の前で湯気を立てていた。
「今日も美味しそうだな」
 そう言って食べ始める。エレナ・シルヴィアはどうしてライヴァンがこんなに陽気なのか想像もつかなかった。この相思相愛なのに隠し通さないと行けない二人の恋は多難を極めていた。食べ終わったエレナ・シルヴィアは食器を片付け始める。置きっぱなしにするわけにはいかないと毎回、カウンターに返していた。そのエレナ・シルヴィアにライヴァンが声を掛ける。見ると、もう食べ終わって同じく食器を持っていた。
「珍しい。いつもは放置してるのに」
「気まぐれさ。この後時間はあるか?」
「ええ。そうだけど?」
 エレナ・シルヴィアの愛らしい目がまたくるりと丸くなる。
「ついてきてくれないか?」
「いいけれども。……?」
 エレナ・シルヴィアは不機嫌になる事も忘れて驚いてライヴァンを見る。

 二人は町外れにいた。エレナ・シルヴィアはますますもってわからない。そんな彼女を目の前にしてライヴァンは包みを出した。そしてエレナ・シルヴィアの方に差し出す。
「私に?」
 ライヴァンは少し照れながらも肯く。包みを開けてエレナ・シルヴィアはびっくりした。まるでアミュレットのような輝きを持った翡翠のネックレスがそこにはあった。しばらく、エレナ・シルヴィアはこの事態を理解していなかった。だが、重みのあるネックレスに次第に実感が伴う。
「ライ! ありがとう。私が翡翠を好きなのを知って買ってくれたのね」
 てっきりレイナルドのモノだと思っている。その言葉にライヴァンはいや、という。
「俺がレイナルドに指導してもらいながら作った。手作りで不格好だが、受け取ってくれないか? いつもの礼をしたかった」
 作ったと聞いてエレナ・シルヴィアに驚きの表情が浮かぶ。それは次第に喜びの表情に変わる。ライヴァンに衝撃が走ったかと思うとエレナ・シルヴィアが抱きついていた。そしてライヴァンの頬にキスをする。
「ありがとう! こんなに素敵なプレゼントはないわ。って、ライどうしたの?」
「って」
 キスされた頬に手を当ててライヴァンはエレナ・シルヴィアを見る。自分の行動オを把握してないらしい。
「ま。いっか。記念だと思えば」
「何の記念?」
「こっちのこと」
「内緒にしないで! ライ!」
 エレナ・シルヴィアが逃げるライヴァンを追いかけ始める。二人は子供のように競争して宿屋まで帰ったのだった。気持ちが伝わったかは不明だが、愛する女性に記念となる品物を渡せてライヴァンは満足だった。いずれ別れる二人の道。それまでは……。ライヴァンは小さな祈りを空に捧げていた。


あとがき
早めの電車で最寄りの駅で更新。訳ありが話は思いつくのに書けない。会話が飛び交うのに形にならない。一度離れないと行けないかもしれません。そろそろ漢検もマジで勉強始めないと。かと言って毎日更新途切れるのも嫌だし。挟まれてます。それではそろそろ行ってきまーす。

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