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【連載小説】ファンタジー恋愛小説:緑の魔法と恋の奇跡 第十二話 氷の街と片恋

前話

 街から街へと移動してきた。フォージロックの手前で、氷の街とも呼ばれる「ヘイルストーン」に立ち寄る。フォージロックの手前の街あっって氷と雪に囲まれた街だった。馬を宿屋の馬屋にとめて宿屋の手続きをする。それからエレナ・シルヴィアを連れ出す。
「この「ヘイルストーンには『氷の女王の伝説』が、残っている。女王の心は凍ってこの辺りを厳しい統治をしていた。何人もの冒険者が女王を倒そうとしたが、なかなか倒れない。だが、ある一人の勇者が女王の心の氷を溶かした。それ以来、女王は厳しい統治を止め、この地の人々は平和に暮らせるようになった。今でも氷の女王の洞があるんだ。見に行ってみないかい?」
「そうね。見てみたいわ」
 二人は自然と手を結んでいた。この長い旅の間に一緒に歩くときは手を握るという周りから見ればほら、恋人同士じゃないかと突っ込まれるほど、仲睦まじくなっていた。ただ、二人とも気持ちは言っていない。やはり妖精と人間の間に流れている大きな河は消えることはなかった。
「ここだ」
「まぁ。遺跡なのね」
「そうだね。当時の建物が残っている。女王の統治を物語る遺跡だ。女王は冷たい統治をしたけれど、適切な統治もしていた。その威厳をこめたのがこの洞と聞いている」
「流石に氷の部分は触れられないのね」
 観光客と建物を遮る手すりがあった。これ以上熱を加えると人の手であっても崩れるのだろう。
 そんな二人の前にティアが顔を出した。ティアはライヴァンの懐に隠れて温まっていた。
 尻尾でアミュレットのルビーに触れるとチチッと鳴く。
「ああ。このアミュレットの効果を調べるには絶好の街ね。何をすればいいかしら」
 エレナ・シルヴィアはしばしば考える。
「そうね。あれがいいかもしれないわね。ライヴァンちょっとこっちに」
「って。何を」
 街の外れにまで来て、誰もいないことをエレナ・シルヴィアは確認すると、アミュレットを使って魔法をライヴァンにかける。かけられたライヴァンは、おや、とでもいう表情をする。
「なんだか暖かい。君の魔法か」
 自分の体をライヴァンは目で追う。
「ヒートブレイズ、よ。何か言って掛けた方が心つもりはいいかしら? 私は自然と魔法が使えるから何かを言って掛けたことは滅多にないの。この魔法は掛けられた人に体温を上げさせて熱で寒さを防御するの。一石二鳥だわ」
 なるほど、とライヴァンは言う。
「この魔法があれば厳寒にも耐えうるかもしれないな。ありがとう。シルヴィ。君はすばらしい……妖精だよ」
 思わず人間とライヴァンは言いかけて止まった。彼女は妖精の姫。今回の事が無ければ会わなかった姫。湧き上がった、気持ちをなだめる。浮き立つような感情が沈んでいく。
「妖精よ。産まれたときから。そうね。あなたよりも長生きしているかもしれないからおばあさんかもね」
 少し寂しげに答えるエレナ・シルヴィアの手をギュッと握る。
「おばあさんでも何でも、今、君は美しい姫だ。それを大事にしよう」
「ライ……」
 切なげな瞳でエレナ・シルヴィアがライヴァンを見上げる。よくある小説ならここで愛の告白なんぞしている所だ。
 
 愛の告白?!
 
 ライヴァンはその自分の思考に驚いた。自分はいずれ父の勧める家柄の良い姫を妻にし、王国を継承すると考えていた。だが、気づいてしまった気持ちをライヴァンは持て余した。
「とにかく。宿屋でお腹を満たして計画を立てよう。必要な装備もあるから」
「そうね」
 あの切なげな瞳はもうエレナ・シルヴィアには無かった。だが、ライヴァンの鼓動は早鐘を打っている。気づいた気持ちに行き場が無い。
 
 人間と妖精だ。無理に決まっている。
 
 王国を捨てればいい。
 
 そんな事をするために私は旅に出たのではない。
 
 天使と悪魔の囁きが交互に出てくる。
「ライヴァン?」
 不思議そうに見上げるエレナ・シルヴィアの頭に空いた手乗せて、また言う。
「今度の宿も最高級の料理を出すはずだ、噂が飛んでいた」
「あなたはいつも食事のことばかりね。ティア。こっちにいらっしゃい。こっちが暖かいはずよ」
 そう言って元、森の守護者に手招きする。
 ティアはすぐに出てくるとエレナ・シルヴィアの懐に隠れた。それから顔を少し出す。そのティアがまるでぬいぐるみそっくりでライヴァンとエレナ・シルヴィアは笑う。自分の事で笑われたと知ったティアはエレナ・シルヴィアの懐に全身を隠してしまう。
「ティア。ごめんなさい。可愛かったのよ。あなたがあまりににも」
 エレナ・シルヴィアが言うとたっと出てきてクルミを要求する。人目に付かないようにしてエレナ・シルヴィアはクルミを一個出す。速攻で持ったティアはエレナ・シルヴィアの懐でぼりぼりとクルミを食べている。いや、ほおばっている。
「食いしん坊ね。どこかの誰かさんみたい」
 エレナ・シルヴィアの晴れやかな笑顔を見ているだけで十分だ、と思うライヴァンがいた。
 
この河は何も出来ないが、エレナ・シルヴィアを笑顔にはできる。これからの試練で涙を落とすかもしれないエレナ・シルヴィアを護っていこう。そう思ったライヴァンだった。

 秘めたる片恋、が始まった時だった。 


あとがき
現在二十話目で区切りをつけるところですので、こんなに間が開いているとは思いもしませんでした。もともと恋愛色の強い話ですので、これからがややこしい。想い想われ叶わぬというところで。行き違いが多いこと。ライヴァン君の苦労が目に見えます。エレナ・シルヴィアは自覚したとて告白する事のできない身。なので、ふいに出る行動がライヴァンをうろうろさせルですな。流れる河は深し。まだ、この頃はふわふわもんで良かったのですが。
二十話書いたら星彩に行きたいー。あと一話書けたら次の所なのにー。自室へ帰ってくると風邪が悪化する。部屋の空気入れ替えかな?
 台所では通常でしたから。鼻水もでないし、喉も潤っていた。のどぬ~るマスクが欲しい。タクシーで病院行こうかなー。呼べたら。アプリだから大丈夫だろう。

さて、配車と。

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