見出し画像

【新連載・ロマンス・和風ファンタジー小説(オマージュ)】あなただけを見つめている……。 第一部 クロスロード 第十七話 確変前夜

前話

「姉様……」
「あれ? むーは?」
「ししょーとクッキー焼いてる。クッキー落としただろう。むーが察知してししょーと日史と台所だ」
 憮然として当騎が答える。お茶会は中断のようだ。
「あ。姉様!」
 ししょーと山のような優衣の好物のクッキーをやいて持ってきた步夢が躓いた。
「むー!」
「ぴぎ!」
 当騎と千輝が支える。
「もうちーちゃんは姉様の子ですわね」
「優衣!」
 クッキーの皿を当騎に押しつけ優衣を抱きしめる。
「話はすんだの?」
「ええ。姉様こそまぶたが……」
「台所でクッキーが焼き上がる時間までししょーに泣かせてもらっていたの。つらくて……」
「大丈夫。姉様には皆が付いていますわ。さぁ、明日の打ち合わせしましょう」
「うち……」
「あわせ?」
 暖と征一は不思議そうだ。途中で征一がうなずく。
「正式な当主様の問題か……」
「ええ。さっき作った朝日の滴を持って行くの。多分、顔パスで入れるのは私と優衣、当騎ぐらいね。お見舞いに行ってるから」
「我々はここで待機だな」
「ええ。悪いけれど」
「ちーちゃんと遊んでるよ」
 暖がいうとぴぎぴぎと不服そうに千輝が言う。
「なに、千輝も行きたいのかい?」
 暖が優しく聞くと大きくあん! と吠える。
「だったら、そのぴぎぴぎを小さくしろ。毎回ぴぎぴぎ言っているぞ。いわんのは飯か寝てる時じゃないか」
「ちょっと。ちーちゃんいじめないで。ちーちゃん。ママのママのところで助けてくれるのね? 一緒に行きましょう」
「おい。何知ってるんだ」
「さぁ。感」
「感って。もしかして、俺が来るまではほぼ能力なかったのか?」
 不思議そうに当騎が步夢に聞く。
「当主の力なんてないぐらいにね。優衣が高い方だったわ。ちきちゃんとあって力が上がったのよ。ちきちゃんには何かあるわ」
「そうか」
 当騎が考え込む。
「当騎?」
「それは、邪魔したんだな。俺が。普通に生活したかったろう?」
 苦しそうな当騎の声に步夢が飛びつく。
「いなくならないで。私だけ見てて。私はあなただけ見つめてるの……。いつだって」
「むー」
「当騎……」
 何かを感じ取っているのか步夢は半泣きだ。
「わかった。最後まで俺から目が離せないようにこうしててやる」
 そう言ってぎゅっと抱きしめる。
「相変わらずだねぇ。この二人は。ほら。お茶会再開するよ」
 日史の焼き餅で抱擁を中断させられる二人だが、その顔には笑みが浮かんでいた。さすがは相思相愛。
「姉様が笑った」
 優衣が飛び跳ねるように喜ぶ。
「え? こいつ、笑わなかったか?」
「わたくしたちの間ではあまり……」
「そっか。むー。俺がいつでも助けてやるからずっと笑ってろ。泣きたくなったらいつでも来い」
「夜中の逢瀬は禁止だよ。それから、ごろにゃんもね」
「日史ー!!」
 二人そろって抗議が飛ぶ。
「地獄耳!」
「なんとでも……。不純異性交遊は禁止。会っていいのは夜八時まで」
 八時。子供の寝る時間ではないか。步夢はぽかーんと口を開ける。智也が居たときはそんな決まりなかったのに。
「リビングでしかダメだよ」
 母さん役の日史の登場だ。
「もう。いちゃいちゃできないじゃないの」
「いちゃいちゃ禁止令発令ー」
「日史の意地悪!」
 つん、と步夢はそっぽを向いてしまった。これには優衣も当騎も文句がでる。
「姉様の笑みを返してくださいまし!」
「日史、ちづちゃんがいないからって焼き餅焼くな!」
「まぁまぁ。お茶会で仲良く致しましょう。ほら。陛下も機嫌を直してそういえば、女王の樹がまた花をつけたのです。やっと陛下も心が穏やかになったのですね」
「そこの意地悪小姑のせいで青春が飛んだけどね」
「ただの専属医者だよ」
「小姑よ。日史も仲間なんだから」
 強い口調で步夢が言う。それに、一瞬気が抜けた顔をする日史である。
「なに? それでほんとに水の戦士?」
「いや。宝珠はあるけれど……。そんな風に步夢が大事に思ってくれてるなんて思わなかったから」
「ツンデレと勝ち気の合体だ。察することができなくて当たり前だ」
「当騎!」
「あー。ごろにゃん、消えた」
 暖の指摘にしまったという顔をする当騎である。
「むー」
「知らない! ちきちゃん。散歩に行きましょ」
「あん!」
 とうとうお茶会を放り出して外へ行く步夢である。
「むー!」 
 その後ろを当騎が追っていく。日史は放っている。
「よいのか? ごろんにゃんするぞ」
「大丈夫だよ。あの二人は。いつも立場を踏まえているから」
 だからこの悲しみを乗り越えてほしい。步夢はまだ心の中に智也を持っている。それを当騎も知っている。悲しみに明け暮れる二人であってほしくない。いつも笑って皆を率いてほしい。日史に見送られて、二人は千輝とともに屋敷裏の泉へと向かったのだった。


あとがき
寝過ぎでついに眠れなくなったので、スタバ音楽駆けながらのnoteです。暑い。暑すぎる。暖なんてもんじゃない。正真正銘のあっちの方だわ。原作の。マグマの中にいる暖さんとかです。お茶の飲み過ぎで気分が悪いのか、出たり入ったりで体温がおかしいのか。胃がおかしい。冷たいものの飲み過ぎ? 煎茶でものみましょかね。高いかりがねちゃん。スーパーの中で買えばいいのに外のお茶屋で買ったから高い。それ飲んでまた、エッセイの勉強の方へ行きますねー。内容同じかもしれませんが。今回はしっかり步夢ちゃんの出番です。これから当分優衣の出番はほぼないかと。あーそっちの執筆もあったか。急がしいです。寝ていたいのにー。いや、まずはお茶だ。
いってきまーす。台所。ここまで読んでくださってありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?