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カスタマーセールスのススメ

最近、『カスタマーセールス』についての話題や記事などが多く見受けられます。実際にラウンドB以降のカスタマーサクセス(以下サクセス)の方々とお話しした際も、
「今期からカスタマーセールスを創る」というお話を聞かせていただきました。

これは日本のSaaS市場の特徴も関係してきていると私は思っています。
なぜならば、PLGでのスケールが難しいからです。
アメリカの有名なSaaSの多くは、PLGを採用しています。
そのためサクセスのユースケースや仕組みなどもPLG向けのモノが多いです。
※テックタッチやロータッチ施策が良い例

ただ日本の場合、直販中心であったり、ITツールの普及率の低さなども含めて現段階ではSLG要素を強くしていかなければスケールも生き残りもできないというのが現実です。

そこでクローズアップされてきたのが『カスタマセールス』というわけです。
今回の記事は、下記のような方たちに見ていただきたい記事となっています。
・実際にカスタマーセールスを創りたい方
・すでに検討している方
・一旦、創った方


ここからはものすごくシンプルな話をします。
当たり前だからこそ、今一度確認しましょう。

1. MRRとの関係性


『カスタマーセールス』は、Expansionに特化した組織のことです。
Expansionが達成されることで得られる成果は、
Expansion MRR(拡張月間経常利益)です。

つまり、"売上"です。
既存顧客が元々払っていた金額に上乗せされた分が『カスタマーセールス』が責任を持つべき"売上"です。
・New MRRを積み上げるのが、『フィールドセールス』
・Expansion MRRを積み上げるのが、『カスタマーセールス』

同じMRRに責任を持つ役割であるならば、お互いに『セールス』という言葉が入っているのはしっくりくるかと思います。
また、それぞれのMRRは発生するタイミングが違うだけで、シンプルに考えると

顧客が支払っている金額

です。
ただ現在では、フィールドセールスとカスタマーサクセスの概念や役割、責任をハッキリ分けていることが多いためなぜかMRRを分けて考えることが多いです。
THE MODELのデメリットがもろに出ているところです。

シンプルに考えて、MRRはどんなMRRでも結局、MRRです。


2. NRRとの関係性


成約後に追うべき指標に、『NRR』があります。
主にサクセス領域でKGI化されることが多いです。
そもそもSaaSなどのサブスクリプション型サービスにおいては、

・顧客の売上は維持されているか
・顧客の売上は増加しているか

を追っていかなければ、スケールはしません。
これは永遠のテーマです。

また新規顧客の獲得は、既存顧客の5倍のコストがかかると言われています。
つまり、いかに既存顧客に対して売上を維持・向上させていけるかがSaaSビジネス全体におけるキーポイントになるということです。

NRRを構成するのは、大きく分けて2つです。

・Retention
・Expansion

NRRがサクセス領域でKGI化されたということは、

ただ、チャーン(解約)を防止すればいい訳ではない

という意味が隠されています。
どれだけチャーンを防止しても、NRRは100%を超えません。
また、チャーンは必ず起きます。
逆説的に考えると、チャーンが起こらないということはそもそもビジネスとしてスケールする可能性が低い状態にあるということです。
なぜならば、自らTAMを狭めて絞った顧客の導入しか行われていないからです。
※ここについては後日、note出します。

NRRを101%以上にするには、Expansionは必須です。


3. オンボーディングとの関係性


サクセス領域で初めにイメージされるのが、『オンボーディング』です。
成約後の最初のプロセスであって、どのような商材やビジネスモデルでも発生します。

オンボーディングが達成しないことには、その後のプロセスへは移行できないのが基本です。
つまり、

オンボーディングの失敗 = チャーンの可能性大

という方程式となります。
そのため、"オンボーディングの構築"はカスタマーセールスの立ち上げ前に必ずやっておかなければなりません。
Retentionが前提にあり、Expansionが加わることでNRRが101%以上になるためです。

もし、"オンボーディングの構築"ができているのであれば、次にExpansionへ舵を取りカスタマーセールスの立ち上げを考えるべきです。
シンプルに考えて、オンボーディング後にExpansionの提案フェーズに移るのがベストです。

サクセス領域のテンプレで「アドプション・リテンション」などのプロセスを敷いて、最終的にExpansion提案や再オンボーディングの実施などを設けるようなら事例が多いですが、最初はあくまでMVP的に始める方が断然良いです。
増やすことは簡単ですが、減らすことは難しいので要注意です。

※もちろん、サービスやビジネスモデルによってアドプションなどが必要になることは十分にあります。

弊社ではRetentionを2つのフィットで表現しています。


4. 弊社の事例


『受発注バスターズ』は、AI-OCRの設定・保守を弊社のカスタマーサポートチームが行います。
そのため、ユーザーは事前設定や細かい修正などをする必要がなく、操作方法のみを覚えることができれば利用開始ができるというプロダクトとなっています。

リリース当初は、各顧客に2名(サクセス1名 + 1名)でオンボーディング支援をしていました。
設定・保守の代行をすることもあり、超ハイタッチです。
1年間である程度、成約〜オンボーディングまでのプロセスを構築し、結果的にはサポートチームのみでもオンボーディング活動が可能ということがわかってきました。

NRRとMRRの関係性も各役割に落とし込みました。

他社でも、「オンボーディング担当」というような役割で責任を持つポジションがよく見受けられます。
名前が違うだけで、弊社のサポートチームもオンボーディングに責任を持つ役割へと進化させていくような方向に変えて行きました。
※これはあらゆるタッチ内容のPDCAを回したり、プロダクト開発も含めた結果です。

そして、元々カスタマーサクセスをしていたメンバーをExpansionに責任を持つ「カスタマーセールス」という役割に進化させました。

「サクセスは人に付随するのではなく、組織や文化に付随する概念ではないのか?」

という考えに至り、チャレンジしてみることにしました。
※正直なところ、「カスタマーサクセス」という人間が何をやるのかがわからなくなってしまった(なくなった)というのもあります。
※今後の動向も、またnoteを書きます。

まずは、NRRの最大化ということを考えた時にシンプルにRetentionとExpansionに責任を持つ役割を据えようと考えた結果、下記のようになりました。

あくまでサクセスの役割をなくしただけであり、概念としては残しています。

カスタマーサクセスと呼ばれる人間はいませんが、組織(部署)として、カスタマーサクセスを再立ち上げしました。

カスタマーサクセスと呼ばれる人間はいなくなりました。概念になりました。


『カスタマーサクセスは概念』を学びたい方は下記のnoteは必読です!


5. カスタマーセールスの創り方


最後に各フェーズでのカスタマーセールスの創り方のススメをお伝えします。

■ カスタマーサクセスだけ存在している

まずはオンボーディングプロセスの構築と組織の中でもオンボーディングに責任を持つ役割を創るところからです。
Retentionの部分を安定させることが必要です。
オンボーディングを担当する役割・チームが出来た後にカスタマーセールスを立ち上げるべきです。

■ カスタマー(テクニカル)サポートも存在する

サービスやビジネスモデルによりますが、ほとんどの場合に下記の2つを行うことでRetentionへの対策は一時的に完了します。
・サポートチーム→オンボーディングチーム
・サポートチーム + オンボーディング担当
その後、カスタマーセールスを立ち上げるべきです。
ちなみにこのパターンは弊社と同じであるため、カスタマーサクセスと呼ばれる人間が「何をするのか?」という問いを立てるのもよいかと思います。

■ オンボーディング担当とサクセス担当で分かれて存在している

この場合はすぐにでもカスタマーセールスを立ち上げ可能です。
もしかすると、すでにExpansionに対して責任を持つ役割が存在している可能性も高いです。
ただ、あえて組織として立ち上げることに意味があります。
細かいKPIや一定周期でのPDCAなどを実行するには片手間ではなく、「あえて組織にする」ことが大事です。
もちろん、リソースは限られているのでここはマネージャーの定性的判断で調整するべきです。

■ 今からカスタマーサクセスを立ち上げる

ここについては、やはりオンボーディングの構築が最優先です。
私たちも半年〜1年間でオンボーディングプロセスの構築を行いました。
Retentionへの投資を先に行い、並行的にメンバーが増えていく中でExpansionに責任を持つカスタマーセールスを立ち上げるべきです。


最近、カスタマーセールス組織を立ち上げる企業がかなり多くなってきました。
私も1年前からこのテーマに対してチャレンジしています。
日本のSaaSの特徴としてSLG戦略に傾かなければならないということに大きく影響していることもあり、今後さらに増加していくのではないかと予測しています。
そんなときに「流行っているから立ち上げた方がいいよね〜」ではなく、なぜ自社で必要となるのかを改めてNRRやMRRの関係性を踏まえて考えていただければと思い、今回の記事を書きました。

ぜひ、オフラインでもナレッジ共有や新しい発見などについてお話ししましょう!
それでは、また!


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