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飲食店におけるテーブル状況のリアルタイム監視:IoTカメラと生成AIの融合


はじめに

飲食店の運営において、テーブルの着席状況をリアルタイムで監視することは、効率的なサービス提供や集客に直結する重要な要素です。

本記事では、飲食店と生成AIの融合例として、弊社が開発した飲食店のテーブルリアルタイム状況監視ソリューションを紹介します。
このソリューションは、IoTカメラと生成AIによる人物検出・状態推定技術を用いて、これまで困難だった自動的なテーブル状況の監視を実現します。

リアルタイム監視:イメージ画像

飲食店におけるテーブル状況監視の現状と課題

多くの飲食店では、従業員が目視でテーブル状況を監視しており、リアルタイムかつ一元的な対応が困難です。一部の店舗ではAIカメラを導入して混雑状況を把握していますが、詳細な人数や人物の特徴までは把握できていません。

適切な監視ができないため、特に混雑時のオペレーション効率低下や余分な人件費の発生が課題となります。また、空き時間を活用したクーポン発行などの新たな集客施策の実施も難しくなっています。これらの課題を詳しく見ていきましょう。

店舗運営の効率低下

  • 従業員による監視には限界があり、リアルタイムでのテーブル状況把握ができず、新規客の案内遅延や案内ミスが発生します。

  • 既存の混雑状況把握システムでも、人物の動きや重なりにより、正確な人数やテーブル状況の認識が困難です。これが現場の混乱を招く恐れがあります。

余分な人件費の発生

ビュッフェやサラダバー形式の店舗では、順番待ち列の監視や着席案内に多くの人手を割く必要があります。

(データを基にした)新たな施策を打てない

テーブル状況の適切な監視ができないため、空き時間を活用した即時の値下げやクーポン発行など、リアルタイムの集客施策が実施困難な状況が見受けられます。

IoTカメラと生成AIを活用したソリューション

これらの課題を解決するため、弊社はIoTカメラと生成AIを用いたリアルタイムのテーブル状況監視ソリューションを開発しました。

使用した技術と生成AI

・ATOM Cam 2
ATOM Cam 2は、暗闇での撮影を可能とするカラーナイトビジョンや防塵・防水対策が施されているIoTカメラです。さらに動体検知やマイクによる音声会話にも対応しており、設置も簡単なため様々な場所で使用できるツールとなっています。

・ソラカメ
ソラカメは、Wi-Fi 経由でカメラの映像をクラウドに常時録画できるカメラサービスで、店舗状況の把握や倉庫の防犯対策がユースケースの例としてあります。

・Gemini 1.5 pro
マルチモーダルAIモデルで、映像から人物検出や状態推定を高精度で行うことが可能です。

ソリューションの仕組み

弊社のソリューションの概要は以下の通りです。

  1. 撮影:
    店内に設置されたATOM Cam 2がテーブルの状況、お客様や従業員の動き、テーブルの状況をリアルタイムで記録します。

  2. クラウドサービスへのデータアップロード:
    撮影データは、ソラコムのクラウドサービスにアップロードされ、効率的に管理されます。

  3. Gemini 1.5 proによる人物検知・状態推定:
    クラウドに送信されたデータを解析して、Gemini 1.5 proがテーブル周りの状況(空席・満席、人数、物の有無、従業員の動きなど)をリアルタイムで判断します。

  4. 結果の出力:
    Gemini 1.5 proが判断したテーブル状況はリアルタイムで反映され、従業員が即座に状況を確認し対応できます。


導入するメリット

テーブル状況のリアルタイム把握

テーブルの人数、空席状況、物の有無を正確に把握し、店内全体の稼働状況をリアルタイムで把握できます。

効率的な顧客対応と人件費削減

空席状況に基づき、迅速に次の顧客を案内できます。また、スタッフの適切な配置により、人件費の削減が期待できます。

空き時間を活用した施策の実施

空き時間に合わせた値下げやクーポン発行など、これまで難しかったリアルタイムでの集客施策が可能になります。

テーブル状況のリアルタイム監視のデモ

今回のデモでは、実際の飲食店でよく見られる着席、注文、料理の配膳、退店からの下膳という4つのシーンを用意しました。

  • 着席(0:00〜0:12頃)

    • お客様がテーブル2に着席すると、モデルは即座に空席情報、人数、状況説明のステータスを更新します。満席、1人、黒いTシャツを着た男性がスマホを操作しているなど、正確に状況を把握しています。

  • 注文(0:14〜0:30)

    • 従業員がお客様から注文を取るシーンです。テーブルに座っているお客様が従業員と重なって見えなくなっても、空席情報は満席のままです。人物の重なりがあっても正確にテーブル状況を監視できています。

  • 配膳(1:34〜2:07)

    • 従業員がテーブル2に配膳すると、モデルはテーブルに物が置かれたと判断します。注文時と同様に人物の重なりが発生しても、配膳時も正確にテーブル状況を把握できています。

  • 退店・下膳(2:18〜3:18)

    • お客様が退店した後も、テーブルが片付くまでは満席として扱い、新規客の案内ミスを防ぎます。また、どのテーブルの片付けが必要かすぐに判断できます。

    • 従業員が下膳すると、空席情報が更新され、新規客をすぐに案内できる状態になります。

このデモ動画から、人数、人物の状態、テーブル周りの状況を正確に確認できるだけでなく、人物の重なりやお客様の離席など、飲食店でよく見られるシーンにも対応できていることがお分かりいただけたと思います。

おわりに

本記事では、弊社が開発したリアルタイムの飲食店テーブル状況監視ソリューションを紹介しました。IoTカメラと生成AIの活用により、これまで困難だったテーブル周りの詳細な状況把握や飲食店特有のシーンへの対応が可能となり、店舗運営の効率化を実現できます。

弊社のAI Transformation(AX)事業部では、今回紹介した飲食店のテーブルリアルタイム状況監視の事例以外にも、生成AIを活用した業務効率化支援を行っています。お客様のニーズに合わせた最適なソリューションを提供し、AI活用による業務変革(AX)をサポートします。お気軽にお問い合わせください。