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【補足】「アルフレッド王の生涯」翻訳に関する注釈その他 / Notes on My Japanese Translation of 'Life of King Alfred'

他のページで翻訳している「アルフレッド王の生涯」について、補足説明などをまとめた共通ページです。
随時追加・修正する可能性があります。【微修正 2020/11/10 Rev.1】
追記:底本などの修正・明確化しました。(Cook版、ラテン語テキスト等)【2021/4/4 Rev.2】

<注意>ドラマ、ゲーム、ヴァイキング関連のハッシュタグについて:
このnote記事は、ドラマ「ヴァイキング~海の覇者たち~」、「ラスト・キングダム」や、ゲーム「アサシンクリード:ヴァルハラ」などはメインのテーマではありませんが、アルフレッド王が出てくるので、また、ヴァイキング関連がお好きな方にも多少は参考になるかと思い、関連するハッシュタグを入れました。
これらのドラマ・ゲームと直接関係ない部分もあるかと思いますが、お含みいただければ幸いです。(間違って辿り着いた方はすみません。)

<「アルフレッド王の生涯」とは>

 9世紀後半イングランド南部のウェセックス王国の王、アルフレッド王(「アルフレッド大王」)の伝記。
原文はラテン語
※「アルフレッド王の生涯」というタイトルは、当ページにおける仮称です。一般的なものではありません。(下記「文書の題名」参照)

<文書の題名の例>
ラテン語題(原文):
Vita Ælfredi regis Angul Saxonum (アングロサクソン王アルフレッドの人生)
- De rebus gestis Ælfredi regis (アルフレッド王についてのあれこれ)
など。省略形など、バリエーションあり。
英題(現代英語訳):(Asser's) Life of King Alfred、他
邦題:「アルフレッド大王伝」(小田卓爾 訳本)、他

<著者:アッサー>
ウェールズ出身
の修道士、アッサー(ジョン・アッサー/ Asser/ John Asser/ Asserius) 。
 ウェールズの聖デヴィッド修道院 (St Davids、現・聖デヴィッド大聖堂) にいたが、アルフレッド王に招かれて来ウェセックスする。
 「アルフレッド王の生涯」は、王の在位中893年頃に著した。895年頃には シャーボーン司教となった。
909年没。

<構成>
同時代に書かれた歴史年表「アングロ-サクソン・クロニクル」(Anglo-Saxon Chronicle)他の文献からの抜粋や、アッサーがアルフレッド王や同時代の人々などに「直接聞いて」書いた挿話、アッサーの所感などを交えつつ、おおむね編年体で構成されている。

<主題:アルフレッド王>
(Alfred/Ælfred /Aelfred, Ælfred of Wessex, Aelfred Rex Saxonum, "Alfred the Great" etc. ) 
 848~850年頃生まれ、899年10月26日没。享年50歳前後。
在位 871~899年頃。
 ブリテン島のアングロサクソン民がマジョリティなイングランド南部の王国、ウェセックス (Wessex、西サクソン) 王家に生まれる。
5男坊 (4男坊説もあり) だったが、兄達がどんどん死んでいき、「気が進まなかったが」 (本人談、意訳) 王位に就く。(※姉も一人いるが、隣国マーシアに嫁いでそのまま。)
 当時のブリテン島の諸王国が ヴァイキング("デイン")の大連合軍に次々と陥落する中で、地道に戦い&和平 (領土分割条約) を結び、ある程度の平和を確保
アングロサクソン・イングランド (デイン居住/支配エリア除く) を統一して、存命中はまぁまぁキープ。戦乱で後退した教育や文芸の復興にいそしむ。

<参考:アルフレッド王のイメージ>
勉強好き。若い頃に読み書きの勉強ができなかったのを根に持っている。自分が周囲より賢いと思っているフシがあり、やや自他に厳しい部分も。学級委員長タイプ。(訳者の個人的雑感です)
慢性の消化器系の炎症疾患あり。「フィクス (ficus)」と書かれ、正確な(現代における) 病名は不明だがい、痔か腸炎などと推察されている。
20歳頃に発症 (※) し、恐らく死ぬまで悩まされ、色々な薬を取り寄せたりしている 。
(※それ以前にも消化器系?か何かの疾病があったっぽいが、このへんのアッサーの書き方がイマイチよくわからない)
デイン勢 (ここでは北欧「ヴァイキング」勢の、アングロサクソン側からの総称) のグスルムがライバルとして描かれがち。デイン勢に勝利した際には、グスルムに洗礼を受けさせ (=クリスチャンに転向させ)、彼のゴッド・ファーザー (代父) になった。戦いで舐めた辛酸の恨みは忘れないアルフレッド。(他にも何人かデイン人を洗礼させている。和議の証。)
沼地でゲリラ生活をしていた。クリスマス期間のエピファニー (1月5~6日) 頃にグスルムが率いるデイン勢に奇襲を受けて遁走。アセルニー (Athelney) の沼地に身を隠しつつ、時々デイン人を襲ったりした。
若い頃は肉欲に勝てず、そのせいで神の罰を受けるのではと恐れ、お参りに行ったりした。
・偉大な王 ("the great") として、後付けで色々な逸話(真偽不明あれこれ)が残る。
⇒例:農家でパン(ケイク/cake)を焦がして怒られた話、吟遊詩人に化けてヴァイキング陣地に偵察に行った話、オックスフォードのユニヴァーシティ・カレッジを創立した話など。(この辺は「偽」です)

<「アルフレッド王の生涯(伝記)」のターゲット読者(当時)>
 地名に「~という、ウェールズ語では~と呼ばれる場所」などの補足や、「XXについては知らない者が多いだろうから、補足すると~」などの記述が見られることから、ウェセックスやイングランド国内向けではなく、ウェールズ出身であるアッサーが「ウェールズ(または国外)の読み手に向けて書いたもの」という見方があるようです。
 言語も、アングロサクソン人(ウェセックスを含めた当時の「イングランド」のマジョリティ)の日常語である「古英語」ではなく、ヨーロッパ標準語であるラテン語で書かれているので、国外向け(=論文を英語で書くような)っぽい感じです。単にラテン語を勉強中のアルフレッド向けにラテン語で書いただけかも知れませんが。(アッサーはアルフレッド王のラテン語の先生のひとり)

<雑感>
アルフレッド王の許で書かれたので、当然ながら王やウェセックス王家に都合の悪いことはあまり書かれておらず、アルフレッド王を美化している部分も多々ありますが、当時の情勢(デイン/ヴァイキングとの戦いあれこれ)や「アルフレッド大王」の人となりがそれなりに判り、面白い資料です。アルフレッド王信者の聖典。

<日本語翻訳に関するお断り / Note on this Japanese Translation >

 このページに言及されている日本語訳は、主に英語版の 「Asser's Life of King Alfred」を元にして、自分用に翻訳した、仮訳です
 ラテン語原文 (Vita Ælfredi regis Angul Saxonum/ De rebus gestis Ælfredi regis) も可能な範囲で当たりつつ、どちらかというと原文が想像できるような直訳寄り(日本語の自然さを優先せず)に訳していますが、面倒になったら雑になります。(※ラテン語は理解力 0.001%程度です)
 同様に、翻訳および訳語等についての正確性、完全性、整合性等は保証しかねます。(片手間にやっていますので、気分などで色々変わります)
また、随時修正・訂正・削除など行います。
 つきましては、もし誤訳、間違い、ご指摘、ご質問等ありましたら、遠慮なくご教唆頂ければ幸いです。
This project is a private and incomplete Japanese translation of Asser's Life of King Alfred, made by me, just for myself, and I do not guarantee or assure any correctness, completeness, or other aspects regarding this Japanese translation.
Please feel free to enlighten me if you find any mistakes, problems, technical errors etc., or have any questions or comments. 
>> alfredscribe[at]gmail.com

<固有名詞の訳語について / About proper nouns >

この翻訳の固有名詞(人名、地名等)の訳語にはかなり揺れがありますのでご注意ください。
有名なもの(例:アルフレッド王、カンタベリー等)は現在の日本において一般的な表記を心がけますが、それ以外については、訳者の気分で現代英語寄りになったり、古英語読み (?) を混ぜたり、既出の日本語文献に合わせたり、完全に個人の好みだったりする場合があります。
(例:Dane/ダネ/デイン、Cerdic/サーディック/チェルディッチ) 。

また、なるべく固有名詞の近傍に現代英語でのスペルを書き添えておきますが、この英語表記も文献によって異なります。(=多くの古文書同様、大元の古英語の表記もバリエーションが多いため。)
あくまで、門外漢の個人的な覚書き程度の翻訳ですので、専門の方々には恐縮ですが、寛大な目で脳内変換などして頂ければ幸甚です。

参考メモ: 古英語読みの発音は、(誉められた資料ではありませんが) Wikipedia 上のIPAなどを参考に確認しつつ、反映させたりさせなかったりです:
https://itinerarium.github.io/phoneme-synthesis/

Please note that the Japanese translations for proper nouns in this translation project may vary depending on my preference or mood (I know, sorry), and might not be consistent with the past and/or common translations found in properly published/ academic papers. I therefore recommend you not to use my glossary for any reference. 

< ”~生涯" および "大王" 表記について、メモ>
アルフレッド王は後年、その業績から「Alfred the Great」(アルフレッド大王)と呼ばれるようになり、既出の出版物なども「大王」が多いですが、ここでは、アッサーの原文に「大 (the great) 」がついていないこと、および既存の翻訳出版物の題名(「アルフレッド大王伝」 小田卓爾・訳、下記リンクあり)との混同を避けるため、直訳的に「アルフレッド "王" の "生涯" 」とさせていただきました。
決して「大王」表記が気恥ずかしい訳ではありません。決して。

なお原題の意味は、「アングロサクソン王アルフレッドの生涯 (Vita Ælfredi regis Angul Saxonum)」または「アルフレッド王についての事柄/業績 (De rebus gestis Ælfredi regis)??」あたり?(ラテン語わかりません)

< 文献 / References > 

◆基本の文書 / Main source
この「Life of King Alfred」の日本語訳は、基本的に下記の英語文献を元にしたものです。
This Japanese translation of "Life of King Alfred" by Asser is based on the modern English translation by;

英訳テキスト、Cook版 (1906) (Project Gutenberg)
100年前の近代英訳版ですが、LoKAの近代英訳の先駆けで、とりあえず英語で今すぐ読める。Stevenson版のラテン語をベースにしたらしいです。

ASSER’S LIFE OF KING ALFRED
ALBERT S. COOK (Translated from the text of Stevenson's edition)
1906

英訳テキスト、Keynes & Lapidge版 (1983)

Alfred the Great, Asser's Life of King Alfred and Other Contemporary Source
by Simon Keynes and Michael Lapidge
(Penguin Books, 1983/2004, ISBN 1-140-44409-2)

比較的新しいフル英訳。こちらも Cook版と合わせてかなり参考にしています。
「Life」以外にもアルフレッド関連の諸文献 (アングロサクソン・クロニクルからの抜粋、法典、和平条項、王が翻訳した文書、手紙など) を網羅しており、アルフレッド王が持ち歩いていたハンドブックのような、大変便利な1冊です。価格もお手頃で、アルフレッド王信者必携の書。

e-hon 洋書にあります。

Amazon JPの方が安くて電子書籍もありますので、ご参考。 (自分のアフィは入ってません。)

◆ 関連文献 / Additional References (Japanese, English, etc)

▼「アルフレッド大王伝」 アッサー: 著、小田卓爾: 訳
(中公文庫、ISBN: 4122024129)
日本語で詳細に注釈・固有名詞索引が入っていますので、入手可能でしたらこちらを読まれる事をお勧めします。
(「日本の古本屋」「スーパー源氏」などの古書検索サイトや、Amazonで見つかると思います)

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▼各地の図書館の蔵書状況

<訳語について>
当ページの和訳の名詞や語彙の表記は、上記の訳書 (小田版「大王伝」) とかなり異なるものが多々あります。
上記の訳書は、実際にオクスフォードに留学され、アルフレッド関連の著作や論文の多い小田先生による著作であり、固有名詞などもこの訳本の表記に倣った方がよいのかも知れませんが、自分を含め現在の読者は海外ドラマ(「ラスト・キングダム」や「ヴァイキング」など)を字幕で観るなどして、現代英語発音(&「ラス・キン」の場合は古英語風の発音)に慣れている人も多いと思いますので、自分はやや現代英語寄り、気が向いたら古英語発音を補足、にしています。
が、一貫性が無く、かなり雑です。すみません。


▼ ラテン語テキストと解説、Stevenson版, 1904 (Archive.org)
アングロサクソン研究の大家、スティーヴンスン先生 (W.H. Stevenson) が 1904年に発表したラテン語原文のテキスト (Rebus Gestis Ælfredi)と、ゴリゴリの解説。研究者必読の書っぽい (未読)。スキャン画像ですがOCR済みで文字検索可能。

▼(参考)大英図書館に現存するマニュスクリプト(写本)
16世紀後半のもの。
※ もっと古いコットン・ライブラリ (Cotton Library) 版は18世紀の火災で焼失し、一部のファクシミリ(複写)が残っているっぽい。
https://www.bl.uk/collection-items/assers-life-of-king-alfred


ラテン語のテキストデータ (The Latin Library.com)
和訳文に併記引用してあるラテン語原文はこちらを参考にさせて頂いています。
基本的にラテン語は全く解りませんので、各ウェブ翻訳の上澄みを拾って多少はチェックしてますが、やっぱり解りません。
(作成者さん、有難うございます)
https://www.thelatinlibrary.com/asserius.html
Thank you, the creator of The Latin Library, for the hard work!

◆その他、参考メモ

「アングロサクソン・クロニクル」テキストの例
英語版 (Giles) Wikisource
https://en.wikisource.org/wiki/The_Anglo-Saxon_Chronicle_(Giles)
古英語版 (各種写本バージョン) Wikisource
https://en.wikisource.org/wiki/Anglo-Saxon_Chronicle

▶拙文 「アングロサクソン年代記 (クロニクル)」抜粋抄訳
雑でテキトーな和訳を掲載しております。

◆「聖ニオット伝」Life of St Neot / Vita Prima Sancti Neoti
コーンウォールの僧侶ニオット (Neot/ ニーオット、 870年頃没) の伝記。没後約100年経った 10世紀後半に書かれた。アルフレッド王の「パンを焦がした王様」の逸話の出所は、このあたり。
入手しやすい書籍・データが見つからないので、とりあえず名前だけ挙げておきます。(「Life of King Alfred」のLapidge先生が下記の「年代記」とまとめた本を出してますが、内容未確認です)
<参考>「聖ニーオッツ年代記」 Annals of St Neots
こちらはケンブリッジの西の街、St Neots (セント・ニーオッツ) の修道院 (St Neots Priory) で見つかった、12世紀に書かれた歴史書。実際に執筆されたのは、バリー・セントエドマンズの修道院で、オリジナルは失われたものの、写本がセント・ニーオッツ (街) でゲットできた。 内容はどちらかというと「アングロ-サクソン・クロニクル」に近いらしい。

< Disclaimers et al/ 翻訳権・出版権の非所有宣言>

・筆者は、上記の Life of King Alfred の正式な翻訳権(もしあれば)、および参考にした各種文献に付随する著作権等の権利は、一切有していません。
・写真および一部画像は、別途記載がない限り、筆者によるものです。
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