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「我々は西側を失ったが、『残り』を発見した」ードゥギン

グローバル・タイムズのYang Sheng記者はモスクワでアレクサンドル・ドゥギン氏との、独占インタビューを行いました。ロシアの政治哲学者であり、一部の西側メディアに「プーチンの頭脳」と称されるドゥーギン氏は、プーチン大統領による中国訪問の発表前、中露関係に関する見解や彼の意見に対する中国のネットユーザーからの鋭い批判への応答を語りました。

またインタビューの内容は、いくつかの質問と回答が簡潔明瞭に編集されています。

ドゥーギン氏は中露外交において、象徴的な意味を持つ要素が多いと語ります。この度のプーチン大統領の訪問は、彼の再選と就任後の初めての外国訪問であり、特別な意味を持っています。その背後に多極世界の創造という強い意志が存在します。

中国は、西側の資本主義や自由主義の経済・政治システムの単なる一部ではなく、すでにそのシステムから独立しています。中国はそのシステムに参加しているものの、独立した極としての役割を果たした主権国家として、また文明国家として自立しています。したがって、中国が多極的世界秩序の重要な支柱となっていることは疑いようがありません。

もう一つの支柱はロシアです。これら二つの支柱が会合し、対話を行うことは、二つの大きく重要なインスタンスを通じて多極世界の構築を続ける意志を示すものです。現在の世界は一極ではなく、西側の覇権は終焉を迎えています。

中国とロシアという二つの極や支柱の間の協力とコミュニケーションにより、インド、イスラム世界、アフリカ、ラテンアメリカなど他の国や地域も多極クラブへの参加を望んでいます。これは私たちが特定の対象に対抗して同盟を築くということではありません。もし西側が多極化を受け入れるなら、彼らもこの多極化世界の構築に参加することが可能です。しかし、西側がこの新しい多極化の出現に引き続き反対する場合、私たちは西側に対してではなく、覇権主義に対して戦うことになるでしょう。

西側諸国が自らの追求するものを宣言する際、彼らは時々に「ルールに基づく世界秩序」という前提を掲げますが、自身の利益と矛盾すると、彼らは何度も簡単にその立場を変更することがありました。彼らは中国を開かれた世界市場に招き入れたのですが、中国が優位に立ち始めるとすぐに一部の西側諸国は中国に対する保護主義的な措置の導入を開始しました。彼らは自分たちの利益を守るために、いつもルールを変更するのです。

私たちは、この多極化を破壊するいかなる試みからも、また、世界のどの国の覇権も維持しようとする試みからも共に守りたいと願っています。

GT:2022年にウクライナ危機が勃発して以来、ロシアがこれまでに経験した様々な困難や課題をどのように乗り越えてきましたか?西側諸国はロシアに対して一連の制裁措置を開始しましたが、昨年、ロシア政府が発表したデータによれば、2023年には約3.6%のGDP成長が実現されました。

ドゥーギン:あなたの質問に答えるためには、参加とグローバリゼーションプロセスのさまざまな形態を研究する必要があります。特に中国は、その点で特別な経験を持っています。発展が遅れた国としてグローバル化に参加した中国は、改革を通じて、グローバリゼーションへの参加を巧みに利用し、中国共産党の主権と統治を守りつつ強化しました。これは、中国の安定を保証する要因となっています。

一方、グローバリゼーションに参加したロシアの経験は大きく異なります。最初に秩序を失いました。東ヨーロッパを含む地政学的システムの支配を失い、ワルシャワ条約機構諸国をNATOに譲渡し、西側の価値観、システム、憲法を受け入れた結果、ソ連を失いました。

さらに、産業、経済、金融システムを含むあらゆるものを1990年代に失いました。これらはグローバリゼーションプロセスにおける二つの異なる経験です。中国の方法はより優れており、独立と主権を保ちつつ急速な成長を実現しました。この数十年にわたり、鄧小平と中国共産党の知恵が明確に表れています。

プーチンが権力を握った際、彼は段階的にロシアの主権を回復し始めました。彼は政治の中心に主権を置きました。グローバリズムの西側経済から切り離されたときでも私たちは何も失いませんでしたが、自らの意志に従うことで利益を得ることありましたし、同時に我々は孤立していないことを再発見したのです。

中国、イスラム世界、インドなど、多くのパートナーが存在します。私たちは、ロシアと協力を望む国々が増えていることも発見する事が出来ましたし、西側に代わる他の選択肢としてのアフリカやラテンアメリカの国々も発見しました。したがって、私たちは西側を失いましたが、「その他」を発見する事が出来たのです。

GT:あなたは最近、新浪微博やBilibiliといった中国のソーシャルメディアに個人アカウントを開設しました。多くの中国のウェブユーザーが、あなたが中国国民に向けて何を発言するのかを見ようとフォローしています。あなたの動機はなんでしょうか?また、中国のネットユーザーからのコメントは読んでいますか?

ドゥーギン:まず第一に、私は現代中国と中国の伝統に大きな敬意を抱いています。私が書いた『黄龍』という本は、中国文明が始まった時から現代に至るまでを総合的に扱っており、私が中国の精神、文化、哲学の栄光を見て感じたことが書かれています。これは中国を愛し、賞賛する作品です。

私たちは、中露友好の哲学的基盤をもっと深く掘り下げる必要があると考えています。両国は単なる戦術的なパートナーではなく、二つの偉大な文明間の連携です。これを促進するためには、互いをより深く理解することが不可欠です。

私たちの社会、文化、文明、伝統的な価値観は大きく異なり、一部の要素では乖離しながらも、他の要素では収束しています。二つの文明間の本格的な対話を推進するため、中国でソーシャルメディアのアカウントを開設し、中国の公衆と対話し、議論を開始することにしました。この中で、ロシアで何が起こっているのか、世界で何が起こっているのか、ロシア人が中国の重要性をどう捉えているのか、私たちの未来の関係の基盤にどのような原則を置くべきかについて、私は自分の意見を表明しています。

私は非常に友好的な姿勢で、議論の場を開いたところ、予期せぬ大きな議論の波が訪れました。これには驚いています。

一部の人々は、ロシアが全く異なる状況にあった1990年代から、私の過去の意見の断片を引用し始めました。プーチン以前の国は「私たちの文明の裏切り者」によって支配されていました。当時、私は中国がグローバリゼーションに突入し、主権を失い、社会主義や共産主義の思想を裏切ってグローバル資本主義に迎合し、伝統的な価値観を捨てるだろうと考えていました。

GT:1990年代には、グローバリゼーションによって中国が変わり、おそらくは西側に加わってロシアに対する脅威になるかもしれないと考えていたわけですね。しかし、その後中国が変わったことにより、あなたも意見を変えました。中国の変化には驚かされたのですね。そして、改めて中露友好を支持するようになったということですか?

ドゥギン:その通りです!その変化は約25年前のことで、新しい変化ではありません。

私の意見が変わったのは、中国が変わり、世界が変わり、ロシアが変わり、地政学が変わったからです。文脈を無視した私の意見を使って私を攻撃するのは適切ではありません。

2000年代から中国を訪問し始めた後、私は意見を変えました。多くの中国の知識人と会い、真剣で非常に実りある議論を行いました。現在では、理論的な面だけでなく、中国の学術社会の向上に積極的に取り組んでおり、中国について知れば知るほど、ますます中国を尊敬しているのです。

翻訳:林田一博
https://www.globaltimes.cn/page/202405/1312443.shtml

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