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【広島商人】知られざる戦後復興の立役者(23:最終話)十年は尾をひいて

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23 十年は尾をひいて

  私は昭和二十年はじめ頃より軽度の代機障害性弁膜症と、喘息に罹っていた。
私が診察をうけていた某博士は、広島におけるその道の専門大家なのであるが、せっかく先生から薬を調合していただくにもかかわらず、病気は一進一退の状態で、健康そうな見かけにかかわらず、階段を上るのにも呼吸が苦しい。二十九年冬頃から闘病生活に入っていた。
三十年の桜の花が咲く頃になると、おのれの病状にもだえが起こりはじめ、そして「私の命数は……」とひそかに考えると、深淵に沈みゆく思いで、私は博士に相談のうえ、博士を通じてABCC(米国原爆障害調査員会)に診察の申込みをした。
ABCCからはさっそく以下のの書状が届いた。

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3,318字
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この文章は昭和31年11月に発行された「広島商人」(久保辰雄著)の冒頭です。(原文のまま、改行を適宜挿入) 広島は原爆が投下された約一か…

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