【広島商人】知られざる戦後復興の立役者（１６）男と男

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１６　男と男

　広島県下の応急復旧事業に使用される物件の取扱いのうち、
私が引受けている叺の調達に関する指示は、農政課長が行うことに
なっていたが、もちろんその責任の分量には限りがある。
こんどの叺かます運搬の際、費した運賃と油の問題は、前述のとおり、私と船長との約束であり、その責任は私が負うのが当然である。
　ある日、次のような依頼状が私に届いた。

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　　　昭和二十年十月三日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　広島県土木部
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　佐　々　木　属　㊞
 
広島県藁工業工品統制組合
　　　久　保　辰　雄　殿
　今次災害ニ当リテハ物資輸送ニ格別ノ御配慮ニ預リ奉深謝候。陳者運賃支払ハ前約ノ通リ貴殿ニ於テ立替払被下度、宜敷御取計相成度御依頼申上候。
 
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　二、三日後、私は軽油の配給のことから、金銭の受渡しのことなどに
関して、佐々木属との打合せのために仮庁舎にやってきた。
部屋にはいってみると、佐々木属の近くが、
何かざわめき立っているではないか。
近づいてみると、軽油の現物を即時に配給してくれと、
船長たち四、五人がやってきて、ものすごい権幕で要求している。