おかえりなさい

昨年、護国神社から1枚の写真が届いた。
写真は色褪せたセピア色で、軍服を着た青年が写っていた。
この人こそ、夫の実家を建てた大伯父だった。
夫の実家はもうすぐ築100年。
改築は何度もしているけれど、お風呂場の感じといい、客間の感じといい、本当に歴史を感じる建物だ。
実家の近所にある護国神社から写真が届いたのは、昨年の夏。
「これ、ずっと奉納していただいてたんですけど、もしかしたら〇〇さんのお家じゃないですかね」
電話をもらって義母が話を聞くと、写真の裏に鉛筆で名前が書いてあったそうだ。
写真を奉納したのは若い女性だったらしいと先々代から聞いているとのことだった。

大伯父は長男で、自分が住むために今の家を建てた。
2階建てで、部屋がいくつもある、手作りながらもしっかりした家だった。
「結婚して住む予定だった」と義祖母から聞いた。
大伯父は、愛しい人との生活を夢見て家を建てたんだろうか。
今となっては誰もわからない。

ただ、帰ってきたその写真の裏にはこう帰ってあった。
「ご無事に」と。
今まで仏間に掛けられていた大伯父の遺影は絵であった。
そこの仏壇に、今の私よりも若い
はにかんだ青年の写真が飾られた。
遠いサイパンの地で亡くなった大伯父。
小説のような話だ。
けれど、愛しき人と再会できているを心より願っている。
おかえりなさい。

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