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花相の読書紀行№49『かわうその祭り』

幻の映画フィルムに隠された謎は?

【かわうその祭り】/出久根達郎
<あらすじ>
バブルの波が押し寄せる昭和。世の中の価値観に逆らうように古紙に魅入られた収集家たちは、幻の映画フィルムを手に入れた!旧満洲帝国映画のフィルムに導かれ、彼らは旧日本軍の機密情報と資金源の謎へと踏み込んでゆく―。貴重文化紙くず商の綿貫、脱サラ切手商の小柳、映画の東京を記録する会の五郎など、個性豊かな面々の推理が昭和史の闇を照らしだす!歴史に翻弄された人々の悲喜が織りなす、長編娯楽小説の傑作。あるコレクターが残した「幻の映画フィルム」の謎を追いかけていくと、旧満州から日露関係を揺るがした大津事件へと繋がった! 歴史のうねりに翻弄される人々の悲喜劇を描いた、うんちく満載の痛快娯楽長編小説。朝日新聞好評連載の単行本化。

★感想
初めての作家さんの本でした。
表題の“かわうその祭り”になかなか興味が向かず、最初の1/5ぐらいで一度休止、初めて読むのを中断した作品でした。冒頭の数ページから先の展開がなかなかつかめず躊躇したのが原因と思います。
その後2冊ほど読んだ後、いよいよ完読しようと心に決め、再読スタート。
“あれ?これってなかなかも…”っと思ったら読むペースが一気に上がりました。

小説の中身が、大戦前の旧満州の様相、日本の映画史、満州国における軍事機密など、知らなかった歴史的事実“湖南事件(大津事件)”なども発見できた作品です。
様々な登場人物が出くる中で主人公は誰かと考えて、きっと主人公は“過去に埋もれた古き資料”なんだと個人的に得心しました。
幻の映画フイルムから端を発した謎の解明が淡々と語られながらも、二転三転していく展開は、推理する読み手を飽きさせないです。
読んだ方の中には、未消化で落ち着かないととらえる方もいらっしゃるかも知れませんが、最終的に残された謎は謎のままと言うのが作者の意図としたら、読み手の想像力は果てしなく広がりますね。
“いったい彼らはどこに行ったのか?”、“彼女の相手は誰で、その後どうなったのか?”…想像するのはなかなか楽しい!。

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