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花相の読書紀行No.21『【八月十五日の夜会】

貴方は人生を楽しんでいますか?


【八月十五日の夜会】/蓮見圭一
<あらすじ>
祖父が死んだ。あの戦争を「生き延びたせいで見なくていいものをたくさん見た」と語っていた元二等兵の遺灰を故郷の海へ還すため、孫の秀二は沖縄を訪れる。そこで手にしたのは、古びた四本のカセットテープ。長い時を超え、その声は語り始める。かつて南の島に葬られた、壮絶な個人的体験を―。敗残兵の影、島民のスパイ疑惑、無惨な死。生への渇望と戦争の暗部を描く、力作長編。

★感想
この小説の中に出てくる“さとうきび畑”は、私の好きな曲です。
初めて聴いた時、そのゆったりとした旋律に”ざわわ ざわわ”の歌詞が、そっと寄り添うように流れてくる唄に、心動かされたことを今も覚えています。
これが沖縄戦を唄った反戦歌と知るのは、それからずっと後のことでした。

このお話は、沖縄本島から数キロ離れた、直径約4キロの小さな離島で起きた悲惨な出来事を、著者は元軍人の語りとして淡々と描いています。
これまで戦争の映像や写真を見る機会の多かった私は、そこに書かれた文字が数段恐ろしく悲しいものに感じました。
安穏と人生を過ごしてきた孫の秀二は、戦争を体験したことの無い全ての人々であり、この物語を読んだ後に、それぞれに感じたものが大切なのではないでしょうか?
人の死は、人の命は、生きていく事の意味は…何かしら感じ取れたら良いと思います。

現代の日本に、戦争や反乱というものは無く、世界でも有数の安全な国として位置づけられています。そんな安全な日本なのに国内の”自殺”という死に至る人は、令和2年で2万人超え、特に20代や10代の自殺者が増えています。
今の日本人は、何か大切なものを無くして生まれてきているような気さえします。
どうか、“ゴキブリ”のように生き延びて、人生を楽しんで欲しいと切に願います。

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