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花相の読書紀行No.38『北緯34度のコールドケース』

第67回江戸川乱歩賞受賞作!

【北緯34度のコールドケース】/伏尾美紀
<あらすじ>
「事件が面白い」「登場人物が魅力的」「警察の描写がリアル」と選考委員が称賛!
博士号を持ちながら30歳で北海道警察の警察官となった沢村依理子。
ある日、5年前に未解決となっていた誘拐事件の被害者、島崎陽菜の遺体が発見される。
犯人と思われた男はすでに死亡……まさか共犯者が……? 捜査本部が設置されるも、再び未解決のまま解散。
しばらくのち、5年前の誘拐事件の捜査資料が漏洩する。なんと沢村は漏洩犯としての疑いをかけられることに。
果たして沢村の運命は、そして一連の事件の真相とは。
組織に翻弄されながらも正義を追い求める沢村。
警察官として、ひとりの女性として葛藤し成長していくーー。

★感想
2021年の江戸川乱歩賞の受賞作の小説です。
表題の中の“コールドケース”は、長期間にわたって完全に解決していない事件・迷宮入り事件を示します。この言葉を最初に目にしたのは、海外ドラマでした。ドラマのストーリーも事件関係者の追憶の中から真実を見出し解決へと導く、被害者の救済が静かに流れるラストシーンには、いつも心が切なくなりました。この海外ドラマは、日本でもリメイクされて吉田羊さん主演で放送されています。
伏尾さんの作品は、“コールドケース”と呼ぶよりは、まだ捜査中の事件と言うイメージが強かったです。
作品の前半は多少読みずらい部分もありましたが、これは物語の後半に向けてのアプローチとして、登場人物についての描写と事件の伏線と感じました。
主人公“沢口依理子”が、いまだ男社会の警察組織での自分の立場に苦悶しながらも刑事として成長してく姿は、同じ女性として共感できることも多かったです。
複雑に絡まる事件をほぐしながら進む後半は、読み手に様々な推理を連想させ、一気に読むスピードが上がりました。幼女誘拐、隠蔽、警官の自殺など多くの事件、ともすれば盛り込み過ぎと思われますが、この作品に対する作者の意気込みを感じます。
個人的には、地名などは実在のものを使用しても良かったのではと思いまます。

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