見出し画像

花相の読書紀行№.131『シンメトリー』

刑事・姫川玲子の日常とそれぞれの事件。

【シンメトリー】/誉田 哲也
<あらすじ>
百人を超える死者を出した列車事故。原因は、踏切内に進入した飲酒運転の車だった。危険運転致死傷罪はまだなく、運転していた男の刑期はたったの五年。目の前で死んでいった顔見知りの女子高生、失った自分の右腕。元駅員は復讐を心に誓うが…(表題作)。
ほか、警視庁捜査一課刑事・姫川玲子の魅力が横溢する七編を収録。警察小説No.1ヒットシリーズ第三弾。(「BOOK」データベースより)
◆目次
 ・東京
 ・過ぎた正義
 ・右では殴らない
 ・シンメトリー
 ・左だけ見た場合
 ・悪しき実
 ・手紙

★感想
今回は、姫川玲子シリーズの短編集。
それぞれのストーリーに玲子の玲子たる資質が描かれ、とても面白く読めました。
全般を通して誉田さん自身が姫川を愛してやまないのだ感じた作品たちです。
 
特に気になった作品を紹介。
『右では殴らない』は、連続変死事件を誘発した女子高生に対し、怒りと共に拳を壁にぶつけるのですが、その後、自分の軽率さに反省を見せる姿が何とも可愛い。
代表作『シンメトリー』では、壮絶な殺し方をした犯人に対し、自白をグイグイ迫り落としますが、最後にお茶目な仕草で終えているところに、心が救われます。
 
事件の捜査に対しする玲子の勘は、野獣の臭覚そのものと言う気がします。
誰もが素通りするような事柄も、玲子の心や脳に何かが走るとき、姿なき犯人も日の当たる場所に炙り出されます。これが正義感からくる刑事としての勘なのか、玲子の特殊能力的な要素なのかは、今後の作品を読みながら楽しみたいを思います。
 
この姫川玲子氏リースの初短編集『シンメトリー』は、それぞれの作品だけではなく、作品全体までもがシンメトリーとしての要素を含んだ組み方も見事でした。


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?