見出し画像

花相の読書紀行No.27『雪沼とその周辺』

静かな冬の夜長にオススメの一冊

【雪沼とその周辺】/堀江敏幸
<あらすじ>
小さなレコード店や製函工場で、時代の波に取り残されてなお、使い慣れた旧式の道具たちと血を通わすようにして生きる雪沼の人々。廃業の日、無人のボウリング場にひょっこり現れたカップルに、最後のゲームをプレゼントしようと思い立つ店主を描く佳品「スタンス・ドット」をはじめ、山あいの寂びた町の日々の移ろいのなかに、それぞれの人生の甘苦を映しだす川端賞・谷崎賞受賞の傑作連作小説。

★感想
主題の“雪沼”ってどこだろうと検索掛けてみたけど、引っかからなくて、色々調べてみたら架空の場所だったようです。私と同じように”雪沼”に魅かれて探した方がいらっしゃいました。
山間部の小さな町を実在すると思わせるほどに、筆者の堀江さんという方の情景描写が凄いと思いました。

連作的な短編小説には、そこに暮らす人々の何気ない生活が、まるでファンタジーのように描かれています。
特に昔ながらのボウリング場の最終日を描いた「スタンス・ドット」では、レーンを転がるボールの音やピンの倒れる音が、頭に木霊する不思議な感覚を味わいました。

寂れゆく街に住み、淡々と過ごす生活の中に、それぞれに拘りを持ちながら生きている。その姿は、実際に私が住む場所や人々と同じなのです。愛おしくて、ちょっと切なくて、何処か親近感が沸いて、とても良い本に出合えました。

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?