「Let It Be... Naked」 by The Beatles
・「Let It Be... Naked」知る人ぞ知るアルバム
「Let It Be...Naked」と聞いてピンと来る人はおそらく少数であろう。
そもそも「Let It Be」はThe Beatlesがツアーの度重なるスケジュールからトラブルに見舞われ、コンサート活動の終了を考え始めた時期にグループの「原点に返る=Get Back」をコンセプトに制作された最終アルバムである。
女優殺害容疑で服役していたが2021年に獄中で亡くなった Phil Spectorが編曲し、全世界で1000万枚を売り上げる大セールスを記録した歴史的なアルバムだ。(1970年リリース)
しかしこのアルバムにPaul McCartneyは満足しなかった。Paulが思い描いたコンセプトとは異なったのだ。
そこで「Let It Be」を再編曲し、Paulの掲げたコンセプトにより近いアルバムとして生まれたのが「Let It Be...Naked」だ。 *Naked=裸の
・Get Back Sectionとメンバーの対立
Paulは「Get back」原点回帰をかかげ、観客を前にしたコンサートを行いたかったが、ここでもメンバーとの食い違いが生じてしまう。
結果的にオーバーダビングを行わないThe Beatlesのデビュー当時のようなサウンドでアルバムを作るということで合意した。(Get back section)
しかしこの頃になるとバンド内の対立は過激化していた。特にGeorge HarrisonとPaul MacCartney,John Lennonの対立が目立つものとなり、最終的にGeorgeがセクションを一時放棄するという自体にまで陥った。
Gerogeの才能はJohnやPaulの影に隠れがちであり、彼の目指すサウンドが楽曲に取り入れられることは少なかった。そのためフラストレーションなども相当溜めていたと言われている。またメンバー間の対立はドキュメンタリー映画のLet it beにおいても映像として残っている。
最終的にはGeorgeの提案によりバンドメンバー共通の旧友であり、共に演奏経験のあるBilly Prestonというキーボーディストを迎える。そしてThe Beatlesが経営するApple Corps社の屋上でセッションを行う。これは実質的な最後のコンサートとなった。かの有名なThe Beatles' Rooftop concertである。
事前告知のないゲリラ的なライブであったため、警察の出動などもあったもののライブを最後まで完遂させた。
・Get back sectionから「Let It Be」へ
Get back sectionで録られた楽曲は後にPhil Spectorによってアルバム「Let It Be」へと体をなす。当初ミキシングは別人によって行われていたものの紆余曲折を経てPhil Spectorが担当することとなった。
Philはオーバーダビングを行うなどをして音源を編集しアルバムを作り上げた。メンバーはPhilの短期間でアルバムを仕上げた部分を評価し、Paul以外の各々のソロ作品でプロデューサーとして起用している。
ここで問題となるのが「原点回帰を無視した過剰なオーバーダビングによるプロデュース」だ。 Paulは当初掲げていた「原点回帰」のコンセプトからは大きく外れたミキシングが成され、強い不満を持った。
・「Let It Be」から「Let It Be...Naked」へ
「Let It be...Naked」は「Let it be」をミキシングしなおしPaulのコンセプトに近づけたものだ。実際にミキシング作業についてはメンバーは関与せず、エンジニア達が当時の最先端技術を駆使してオリジナルの音源に近しいように作り上げた。
特徴として、Rooftop concertの音源がそのままセリフを含めて使用されていたり、逆に削除されているものもある。また曲のアレンジが異なっていたりや「Let It Be」とは曲順や収録曲が異なる点などがある。
Get Backで始まる点や「Don't let me down」が収録されている部分は個人的にかなり好きな部分である。
またPaulが特にミキシングに対して不満を抱いた曲、「The Long And Winding Road」はオーケストラアレンジが消され、ピアノ主体の哀愁漂う雰囲気の曲となっている。評価は賛否両論であるが、私としてはNaked verの雰囲気を主としつつ多少のピアノのサウンドの修正とベースの修正を行うべきだと思う。
・「Let It Be...Naked」に対する私的意見まとめ
私はどちらかというとNakedのほうがアルバムとしては好きである。
・「Get Back」で始まり「Let it be」で終わるというアルバムの流れが個人的
に納得しており、かつその間の曲順も違和感があまりない風に感じる。
・「Don't let me down」が収録されていることも高評価である。
・「The Long And Winding Road」についてはNaked verの雰囲気を主としつつ多少のピアノのサウンドの修正とベースの修正を行うべきだと思う。
あまり知られていないであろう「Let It Be...Naked」をぜひ様々な方に聞いてほしい。「Let It Be」と聴き比べてみる楽しみなどもできるだろう。
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