見出し画像

狭間の時間

チェックアウトとチェックインの狭間の時間、ホテルは奇妙な忙しさと静謐さが同居している。
部屋の清掃を待つ間ラウンジで過ごす、このエアポケットのような数時間を噛み締める。連泊している者の特権だ。

ちびちびと酒を煽り、もう何回も読み返しているお気に入りの小説をまた手に取る。同じ作品でも、読む度に味わいが違う。感じ方の違いを通して、自らの変化に想いを馳せる。新しい作品に触れて刺激を得ることも好きだが、深掘りする愉しみも大事にしていきたい。

非日常を求める一方で、その実日常から逸脱するための労力を厭いがちだという自分の性格は、30余年連れ添ってきた自分自身が1番よく分かっている。
「環境が人を作る」のなら、その環境を自分でセッティングしていこうじゃないか。自分を幸せにしてくれる誰かを探すより、自分で自分を幸せにしていく術を身に付けていこうじゃないか。駆け出しの社会人だった頃より少し余裕が出てきた生活の中で、体力とのバランスを探りながら日々成長への糧を模索している。

20代後半は中途半端な年代だと思って生きてきたが、30代前半というのもなかなか考えさせられる。
自らのスキルアップに尽力しつつ、後進の指導にも目を向ける。いつまでも若手気分ではいられないが、講釈を垂れる程の立場でも無い。どう捉えるかはその人次第だが、言い換えればこの先のルートが自ずと分岐していくような面白い年代でもあると言えよう。他力本願にせず、能動的に選び取った道を進んで行きたいと思った。

リフレッシュに来たはずの旅行で、存外真面目なことを考えてしまうのだなぁと思いつつ、ゆったりとこの束の間の休暇を楽しむつもりだ。地元で飲む酒も旨いが、旅先の酒もまた格別。あぁ、ほろ酔いでずっと生きているくらいがちょうど良いよなぁ〜。笑

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?