使い捨てプラスチックが有料化?プラスチック資源循環促進法の概要
世界的に環境意識が高まる中、2021年6月4日にプラスチックごみの削減とリサイクル促進を目的とする「プラスチックに係る資源環境の促進等に関する法律(通称:プラスチック資源循環促進法)」が参院本会議で成立しました。
本記事ではこのプラスチック資源循環促進法の概要と具体的な法律の中身、および我々の生活にどのような影響があるかをまとめました。
本法の概要
この法律はサーキュラーエコノミーの達成を目指すために、プラスチックの循環利用(リサイクル、リユースなど)を国が主導して推進するために制定されました。法律の中身は、大きく以下の3つの内容に分けられます。
1.製品の環境配慮設計の促進
2.使い捨てプラスチックの利用制限
3.プラスチック回収・リサイクル活動の効率化
ここから、これらの詳細について述べます。
1.製品の環境配慮設計の促進
これはプラスチック製品の製造事業者に対して、環境配慮設計の指針を策定すると言うものです。
現状、製品の環境対応は各企業の自主性に任されている面が強いですが、これを「〇〇の含有量を△△%以上とすることが環境に良いとする」といった形で国内での共通認識・定義を作り出そうと言うことになります。こうすることにより、世界の環境情勢のキャッチアップにリソースを割けない中小企業に対しても具体的な製品設計指針を提示することができ、どの企業も平等に(少なくとも国内の基準に対しては)環境フレンドリーな製品開発を行うことができるようになります。
具体的な設計指針は今後、主務大臣や環境大臣(ちょっと心配…w)を筆頭とするメンバーによって決められます。
また、この環境配慮設計を満たす製品は国から認定を受けることができ、世間に環境フレンドレリーであることをアピールすることができます。また、それだけでなく、エコマークと同様に国や自治体が率先して認定商品を調達する(グリーン調達法が根拠)ことが求められるため、メーカーの大口顧客獲得にもつながり、ビジネス的なメリットももたらされます。
2.使い捨てプラスチックの利用制限
続いてワンウェイプラスチック、いわゆる使い捨てプラスチックに対する内容で、世間で最も話題になっているところです。これは主に小売店やサービス事業者といった、該当プラスチックの提供を行っている事業者が取り組むべき「判断基準」を策定する、というものです。
判断基準と言われるとピンとこないかもしれませんが、「〇〇の使い捨てプラスチックは有料化してください〜」とか「せめてポイント還元して、利用を減らす努力をしてください〜」みたいな感じです。これも各大臣を中心として議論して詳細が決まります。
すでに報道されている通り、具体的内容は概ね決まりました。使い捨てスプーンなどの12品目について有料化が義務付けられる、というかなり厳しい制限となりそうです。(多分、環境大臣の意向だろうなぁ…)
また、ワンウェイプラスチックの利用が余りに酷い事業者に対しては国から指導・助言を行うことができ、改善が見られない場合は勧告・公表・命令といった強い処置を取ることができます。
3.プラスチック回収・リサイクル活動の効率化
最後に再資源化活動に対する内容です。ここでは、回収→分別→再資源化のフローを効率化するために、通常は自治体が行う分別活動を再資源化を担う事業者がまとめて扱いやすくするような規制緩和がなされています。
また、回収に関しても、プラスチック製品の製造・販売業者が回収・再資源化の計画を立てることで法認可が不要になるようにもなります。
通常、自治体が回収するプラスチックは包装材やトレーなどパッケージ関係に限られていましたが、本法によって使い捨ての歯ブラシやハンガーなども同ルートで回収できるようになります。それにより、再資源化可能なプラスチックが増え、リサイクル率向上が見込まれます。
まとめ
以上がプラスチック資源循環促進法の概要です。我々の生活に影響することとしては、
・コンビニ等で使い捨てプラスチック製品を貰いづらくなる
・プラスチックごみとして出せるものが増え、有料のゴミ袋代が節約できる
といったところでしょうか。
本法によって環境問題にどの程度貢献するのか、デメリットに対して十分なメリットは齎されるのか、といった声も聞かれます。しかし、その議論の呼び水としての効果もあり、今後日本が取り組むべきアクションを決める上で大事な一手になったことは間違いないと思っています。
世界的にも感情論が先行している環境分野だからこそ、日本は周りに流されず、合理的かつ是々非々な施策を取っていくことを願っています。
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