渇望の宝玉~水が如く~

あらゆる思想が、私のゆく道に風を立て、吹き抜けてゆく。時には流れに身をまかせ、時にはあらがい、柔軟な対応を心がけているつもりではあるが、結果がともなうかどうかは、また別問題だ。

ある日の出来事、個室の扉に『フタを閉めてから流してください』と書かれた紙が貼ってあった。この理念に触れる度に、私の中に超絶な違和感が込み上げてくるのだが、具体的な説明はここでは割愛する。

そして同日、別の個室では『つまりやすいのでこまめに流しながら使用してください』との貼り紙が、そして、その便器には、そもそもフタが存在しないのだ。

便器すら真逆の主張を投じる不条なる浮き世にて、不浄なる体内の浄化をその器に頼らざるをえない状況の中で、私は込み上げてくるものの存在を確かに感じたのだ。さらなる便意である。

また同日、冷や汗をかきながら駆け込む私を追い越す一つの影がそこにはあった。目の前の個室は二つ。なぜか和式と洋式が一つずつ。その者は、ためらうことなく和式のほうを選んだため、私は便座に腰かけることに成功したのだった。夢が叶ったのだ。

同じ目的を果たすべく、それぞれが望む未来を見据え、進んだ先で選んだ過程が、その思想により違っていたおかげで、私は望み通りの結果を手にすることが出来た稀有な例である。

込み上げてくるソウルフルなパッションに身を任せ、ハードバップにモダンなセッションでも決め込みたい気分ではあったが、自分でも、かなり何言ってるか分からない。


牡蠣食えば 腹が鳴るなり 超急に


そんな状況の中、薬局に辿り着くまでに、何度、寄り道をしたのかなんて無論、覚えてはいない。長い旅路の途中で、私はこのままミイラになるんじゃないか?と思ったことだけは鮮明に覚えている。

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