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忘れっぽい天使


年が明けた、あまりに呆気なく淡々と日々が過ぎていく相変わらずアルコールと密接な関係を築く毎日ではあるけれど緩やかに穏やかに自分をすり減らしながらもなんとか生きてはいて。

今年も大晦日から元日をまたいで酒を飲んで働き、当たり前の様に酩酊した状態でふらふらと眠りについた朝9時の空気は冷たいのになんとなく陽の光は暖かかったので毛布を被ればとろとろ脳が溶けていく様な感覚で意識を手放せた。
しかしアルコール由来の睡眠は継続性がなくてぴったり12時ごろに目を覚ますと唯一、人生の中で本当に唯一と呼べる親友から『あけましておめでとう』と一言LINEが入っていた、彼女らしい絵文字も何も無いシンプルな言葉に私は嬉しくなり返信を打つより先に受話器のマークを押す、電話にでた彼女は『声、ガラガラじゃん』とヘラっと笑って『二日酔いなんだ』と私も笑って返す。
おめでとう、と新年の挨拶をしてからはたわいないでもなんだか安心できる思い出話やお互いの話ををだらだらと話しながら時間を過ごしたりした。

昔から私はどちらかと言うと不安定で泣き虫で寂しがりの癖に表面上は自分はなんとかなる、平気だ、構わないでくれ等と曰う非常に面倒くさくてどうしようもない人間だったのだが親友はそんな私の事を見捨てず、でもべったりとくっついて甘やかす訳でもなく、いつだってずっとずっと気にかけていてくれる。
親とうまくいかなかった時、恋愛で傷ついた時、生き方がわからなくなった時、いつもなんとなく寄り添ってくれたのが彼女だった。

本人からしたら別にそんな大した事している訳じゃないなんて言うがその時その時の自分を救ってくれたのは間違いなく電話忘越しの彼女であって、でも本人はそんな事をすっかり忘れている、一々覚えていないくて押し付けたりもしない。
彼女は忘れっぽい天使なのだ当たり前の様に人を救ってそれが当たり前だからすぐに忘れてしまうし、その忘れっぽさに私はまた救われてしまっているんだろうなと思った。





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