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写真集 地球空洞説 撮影 横木安良夫

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2016年の秋、初めて劇団A・P・B-Tokyoの写真を撮った。
主催、演出、女優をしている高野美由紀から連絡あり、アーティスト写真を撮ってほしいとのことだった。
僕は、アーティスト写真だけではなく、劇団のすべてを撮ってもよいならと条件をつけて参加することになった。
一回目は、寺山修司の作品ではなく、この劇団オリジナルの「双眼鏡の女」だった。
↓ 双眼鏡の女

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病院が舞台の、それでいてサーカス的な出し物だ。僕は、舞台で演じられている状態を撮ることはあまり興味がなかった。舞台というフィクションを撮る意味を見出せなかったからだ。それより役者たちを、太陽がさんさんと照りつける屋外にひっぱりだしたらどうなるだろうかとの興味があった。台本は無視して、僕がいつも屋外スタジオとして使っている千葉の九十九里浜に彼らを連れ出した。
写真で集団を撮ることはとても難しい。なぜならモデルひとりひとり指示をしなければないからだ。ところが役者違う。しかも衣装から小道具、そのまま芝居からの引用だから当然だ。役者たちは歩く時も、座るときも、行進するときも、自分が何をするべきかを知っている。
ほんのちょっと場所を指定すると、ネジを巻いたおもちゃのように、それぞれが勝手に動き出す。僕は言葉を一言二言浴びせるだけだ。
楽しく、悲しく、茫然と!あげくには何もしないで、何も考えないで、など意のままに動く。そして静止する。
僕は、役者たちを屋外で撮ることの楽しさをその時知った。

↓ 書を捨てて、町へでよう

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2000年に劇団A・P・B-Tokyoは発足した。昨年2020年は20周年として、多くの芝居を発表する予定だった。それがC-19によってすべて中止になった。
やや落ち着いた2021年末、寺山修司の「地球空洞説」を12月に上演できることになった。9月に写真を撮ってほしいと連絡がきた。10月に、芝居の劇場がある、光が丘、IMAホール、そして、舞台になる光が丘公園のオープン撮影を予定していたが、C-19の規制で、劇団を主宰している浅野伸幸は撮影許可が下りなかったという。なので、合成でできないか?打診してきた。
合成か?基本、僕は、ストレートフォトグラファーなので合成することは、めったにない。仕事上することは、あっても、このような自分の作品とするべく写真の合成はめったにない。写真の部分的なことは、わからないようにやることはある。
しかし全編を合成、英語ではSynthesizePhotoという。デジタル時代になってあたりまえの写真表現だ。いやいや、写真を合成するのは、写真黎明期から普通に存在する。写真をアートととらえるなら、合成することなんて、初歩の、初歩だ。当然のことだ。かつてはグラフジーナリズムや新聞なども合成はごく普通になされていた。
いや、グラフジャーナリズム、フォトストーリー、だって、言葉と写真のモンタージュといえる。イメージの合成だ。

今回の写真は、すべて劇団の稽古場のある鷺宮で撮っている。天井高めのごく普通の広い会議室だ。そこにダブルベッドサイズの白布の壁いっぱいに張り合わせ、完全にスタジオ化した。
そこで芝居のシチュエーションに沿って、一人とかグループで撮った。
基本今回の芝居の、舞台背景は劇場のある光が丘公園だ。
かつて寺山修司作「青髭公の城」の公演でこの広々とした公園をロケ地としている。

1920あおひげ


そしてキーワードとして、公園のトイレに意味があるらしい。そこで実際に光が丘公園のトイレを撮影した。そのほか、背景になりそうな風景を撮影する。
写真のテクニックとしては、ストロボの日中シンクロ写真のようにすると、合成写真だとしても、写真的リアリティがでるのではと考えた。
日中シンクロは、屋外のファッション写真で多用される。それは人物だけではなく、服の質感しっかりと描写されるからだ。
結局は、実写するときの背景になる場所となじところをさがした。
一番の問題は、全員の集合写真とそのバリエーションの場所だ。広いところで撮る必要があるけれど、平板になってしまう。そこで公園正面の階段に決めた。この階段を利用する人はほとんどいない。少しアンダー気味に撮った。きっと実写してもこの場所を選んでいただろう。若干サイドから1灯でほとんど同じような写真が撮れる。

さて、合成のテクニックは、これまでのレタッチの延長にある。時間はかかるが、絵をかいたりすることと似て、単純作業で楽しい。こまったことは、集中しすぎて、腰がいたくなることだ。目は、パソコンをあまり凝視しないようにしているので、さほど疲れない。運転している時の凝視に似ている。レタッチを始める数日前に、伊豆の倉庫でコードを足にひっかけ膝から落ちてまともにあるけなくなっていた。翌日検査をして骨折も、ひびもはいっていなかったが、動かすと激痛が走る。運よくおとなしくしている週でもあった。
膝をかばったせいと、レタッチの集中で腰がいたくなった。その分、レタッチで集中したので20点以上制作できた。
レタッチは、背景と主題とをかさねるのだが、どちらも自分で撮ったものだ。グラフィックな構造は、写真的に配置にすることにしていた。すると実写とほとんど同じような気分になり、まるでその場所で自分が撮ったような気になっていた。変な気分だ。

これまで芝居というフィクションを現実にほうりこんでいたが、芝居というフィクションを写真というフィクションに投げ込んだほうが、自然に感じられた。なぜだろう。
特に、劇団A・P・B-Tokyoのような、リアルより、イマジネーションをテーマにした劇団は、ストレートフォトより、このSynthesizePhotoのほうがピッタリなことに気が付いた。

現代写真はリアリズムにこだわってきた。これからの写真はもっともっとイマジネーションにこだわったほうが、それは1960年70年代のファッション写真でずいぶん実験されていた。
今僕が、はまっている韓流ドラマ、映画も、日本の映画はリアリズム志向だけれど、韓流は、イマジネーションへのこだわりが強い。

写真集は、12月1日から発売します。会場か、メールにての申し込みになります。決まり次第お知らせします。

写真集「地球空洞説」 A5横位置 50ページ ¥2000(税込み、送料込み)
IMAホール会場 ¥1500

キャプチャ地球空洞説2048



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