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人生で1回しかできない体験

ノースバンクーバーから市内に向かうバスに乗った。周りからはペルシャ語らしい言葉が聞こえた。この地域はパーレビ王朝崩壊した時の移民が多い地域である。

バスは混んでいた。運転手が私を見てバックパックは前に抱いてくださいと言った。しかしこのバスはいつもと違った。みんな笑顔なのだ。
しかしバスは混んでいた。そして暑かった。
ライオンズゲートブリッジを渡る直前の停車の直前に運転手は次の駅の名前を大声で歌い始めた。笑顔の原因はこれだ。

ライオンズゲートブリッジに向かってスピードをあげヘアピンカーブにかかる重力で私はよろめきそうになった。すると私の前に座っていた私よりも若い笑顔の一人の女性がニコニコして、私に、Please have a seatといい、彼女が体を捻るように立ち上がったから、まるでダンスのように私は断る隙もなく場所が入れ替わりそこに座らされることになった。
椅子を譲られたのは初めての体験だった。昨日10キロを走って元気なはずの私が疲れて見えたのだろうか。

スタンリーパークを超えてバスは市内の最初の停留所に差し掛かった。運転手はまたバス停の名前を歌い始めた。みんなが楽しんで、運転手にサンキューといって降りて言った。中には、レビューを書くから教えてと運転手に名前を聞く人もいた。運転手はデニス、あるいは運転手番号5824だよ。いい事書いてね。と楽しそうに返事をしていた。

皆が降りるシティーセンターでは、「こんなHot Bath(バスではなくてお風呂)乗ってくれてありがとう。良い1日を」と言っていた。私もそこで降りた。
席を譲られるということは人生初めてで、なんだか高齢者の仲間入りをしたのかもしれないけど、その歌うバスの運転手のおかげで、高齢化を素直に受け入れることができそうな気分だ。

この日はバスを乗り換えてブリティッシュコロンビア大学まで行った。暑かったけれどいい1日になった。

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