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年間ベストを決めるにはまだ早い

12月。音楽好きのSNSでの話題は、だいたい年間ベストに終始する。

自分のTLを見ていると、やはりTHE NOVRMBERSの『ANGEL』や長谷川白紙の『エアにに』が強い。海外のアルバムに関しては良作揃いで、やれタイラーだ、ソランジュだ、JPEGMAFIAだの、かなり意見が割れているように思える。

ちょうどApple MusicもSpotifyも年間チャートを昨日発表したばかりだ。

年間ベストの投稿や、こういうチャート記事を見ると、やはり年間ベストを作りたくなるのが音楽好きの思考だが、どうにもまだ考える気にならない。

そんなことを考えながら火曜日の深夜、Spotifyの新譜ページに届いた三浦大知の新曲を聴いて、ひっくり返るほど興奮した。

2018年のアルバム『球体』以降、三浦大知は、欧米のアンビエントR&BのサウンドでJ-POPを志向していた。2019年に発表した「片隅」や「Corner」も、一聴しただけで普通のJ-POPにはないような、拍の取り方や譜割が印象的だった。

そしてこの「COLORLESS」も、抑制の効いたビートと声ネタを駆使したサウンドの中で奇怪な譜割のメロディが響く。しかし、不思議とサビはいたってポップ、なのである。安室奈美恵のヒット曲「NEW LOOK」を思い出すほどに。

この奇怪なサウンドとメロディで、来年三浦大知はヒット曲を生み出してしまうのではないか、そして2020年代のJ-POPを更新してしまうのではないか、と思うとワクワクが止まらない。

エイプリルブルーのファーストアルバムも、メロディはJ-POPの枠組みに法りながら、英米のインディー・ロックやドリーム・ポップの持つ浮遊感をラフなギターサウンドで表現している。

海外のインディー・ロックシーンに目配せしたバンドは数多いても、(Aメロ→Bメロ→サビ)×2→大サビ→サビというJ-POPの構成でインディー・ロックを作り上げたバンドはなかなかいない。ともすれば、凡庸になってしまいがちなメロディ構成で強度のあるポップソングを作ってしまうことに、少し希望を感じた。

Soil& "Pimp" Sessionsの新譜にも驚いた。この作品ではファンクやニューウェーブ、フレンチディスコの意匠をジャズのフォーマットで表現してしまっている。言い過ぎではなく、ダフト・パンクの『Randam Acess Memories』のジャズ版だと思った。

8曲目の「Lyra's Attack」と10曲目「Space Drifter」のシンセサイザーの音に目を回しながら、一人部屋で揺れるのも悪くはない。

この三作品を聴いていると、2019年はまだ終わっていない。ましてや年間ベストなんて決められない、と思い直してしまうのだ。

そう、そういえば2週間前、小袋成彬がこんなことを言っていたっけ。

(ボブ)

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